アスリートが地元掛川を紹介! 「掛川城をバックに戦国武将の気分を味わう」遠州掛川鎧屋

アスリートが地元掛川を紹介!

男子20km競歩で1時間16分10秒の世界新記録を樹立して、東京世界選手権代表に内定した山西-児玉育美撮影
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn

世界選手権日本代表が決まる!

日本陸上競技選手権大会20km競歩が2月16日、今年も兵庫県神戸市の六甲アイランドにおいて開催された。今回は、9月に日本で開催される東京世界選手権の日本代表選考会も兼ねてのレース。

日本はこの種目において、世界トップクラスの実力者を数多く有する強豪国。世界大会の選考会を兼ねることの多いこの大会は、例年「世界一熾烈な頂上決戦」として、各国のトップウォーカーたちも注目するレースになっている。

今年も、34年ぶりの東京開催となる世界選手権の代表入りを狙って、ハイレベルなレースが繰り広げられ、男子では圧巻の世界新記録が。また、女子も世界大会のメダルラインに迫る日本新記録が誕生している。その歴史的なレースを振り返っていこう。

自国開催の東京世界選手権代表入りを目指す戦いは、午前8時50分にスタートした-児玉育美撮影

自国開催の東京世界選手権代表入りを目指す戦いは、午前8時50分にスタートした-児玉育美撮影

高速レースの終盤、さらにギアを上げて世界新

男子20km競歩の世界記録は、鈴木雄介が2015年3月に樹立した1時間16分36秒。これを大きく上回ってのフィニッシュが確実となっていたが、周回コースからフィニッシュラインに向かう山西利和の表情は淡々としていた。

場内アナウンスをはじめ、会場全体が驚愕や興奮で昂ぶる空気に満ちあふれるなか、山西は1時間16分10秒の世界新記録でフィニッシュ。両手を挙げるわけでも、笑顔を見せるわけでもなく、まるで練習でインターバルを終えたかのようだった。

従来の世界記録を大きく上回っているにもかかわらず、淡々とフィニッシュに向かう山西-児玉育美撮影

従来の世界記録を大きく上回っているにもかかわらず、淡々とフィニッシュに向かう山西-児玉育美撮影

2月16日に神戸で開催された、日本選手権20km競歩は、9月に東京で開催される世界選手権の日本代表選考会を兼ねて行われた。一時期は雨の予報が出ていた天候も、降雨の時間帯が早まったことで、夜が明けるころには天気も回復。

寒すぎず、湿度が十分にあり、風はほぼないというロード種目にとっては絶好の条件となったなか、男子20km競歩は、午前8時50分にスタートした。

直線道路を500mで折り返し、1周1kmを20周回するコースで行われたレースは、スタート直後は15名を超える選手が先頭グループを形成。最初の1kmを3分46秒という、この種目としては超ハイペースで入る。

その後も、世界記録を狙えるイーブンペース(3分50秒)を前後するラップを刻み、5kmを世界記録樹立時に並ぶ、19分09秒で通過する速い入りとなった。

山西は、集団をリードしたチームメイトの丸尾知司の横に位置し、レースを進めたが、最初は「集団のリズムと自分のリズムが合わず、ちょっとハマりきらない感じ」を覚えていたと言う。

レースをつくったのは“愛知製鋼コンビ”。丸尾(右)が中盤までリードし、すぐ横に山西が並ぶ。ハイペースのなか山西には笑顔を見せる余裕も-児玉育美撮影

レースをつくったのは“愛知製鋼コンビ”。丸尾(右)が中盤までリードし、すぐ横に山西が並ぶ。ハイペースのなか山西には笑顔を見せる余裕も-児玉育美撮影

しかし、2km以降で集団の人数がどんどん削ぎ落とされていくにつれて、「自分のテンポで歩きやすくなった」(山西)。11kmすぎで丸尾とのマッチレースになったあと、それがパフォーマンスとして現れる。

13周目の終盤で丸尾の前に出て、この周回を3分48秒に引き上げると、次の1kmを3分44秒までペースアップ。まるで加速スイッチが入ったかのようだった。この1.5km弱で丸尾を一気に突き放すと、あとは『独り旅』。

13周目でスイッチが切り替わった山西。13~14kmでは1km3分44秒のハイラップを叩きだした-児玉育美撮影

13周目でスイッチが切り替わった山西。13~14kmでは1km3分44秒のハイラップを叩きだした-児玉育美撮影

15kmを57分49秒で通過した山西は、最後の5kmを、3分45秒、3分45秒、3分49秒、3分44秒、3分43秒という驚くべきラップを刻んで18分46秒で押しきり、4年ぶり3回目の日本選手権タイトルを、世界新記録で手に入れた。

『厚底革命』の不振から立ち直る

1996年生まれの山西は、京都・堀川高校でレースウォーカーとしてのキャリアをスタートさせると、3年時には世界ユース選手権(10000m競歩)を制し、京都大学4年にはユニバーシアード(現ユニバーシティーゲームズ)優勝と、早い段階から世界水準で活躍。

社会人2年目の2019年ドーハ世界選手権で、20km競歩日本人初の金メダルを獲得すると、2021年東京オリンピックで銅メダル、2022年オレゴン世界選手権では連覇を達成と、シニアになってからも世界的ウォーカーとしてトップを歩んできた。

■記者プロフィール
児玉 育美
フリーランスライター、エディター、ときどきフォトグラファー。陸上競技マガジン元編集長。東京女子体育大学卒業後、ベースボール・マガジン社で『陸上競技マガジン』の編集業務に携わったほか、スポーツ書籍の編集、トレーニング専門誌『陸上競技クリニック』の創刊・編集などに従事。フリーランスとなってからは、日本陸連オフィシャルライターをはじめとして、陸上競技の取材・撮影、執筆、編集業務をメインとした活動に取り組んでいる。
≫「X」アカウント https://twitter.com/ikumik6
≫「Instagram」アカウント https://www.instagram.com/exp.kodama/?hl=ja
アクセス
六甲アイランド
  • 東海道新幹線 新大阪駅 - JR神戸線(25分)- 住吉駅 - 六甲ライナー(9分)- アイランドセンター駅
Journal-ONE投稿記者-児玉 育美
取材・文:
児玉 育美( 日本 )
この記事の関連記事
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn