しかし、これはある意味、応援しがいがあるとも言える。強者に声援を送ったってつまらないじゃないか。判官贔屓こそ、日本人の美徳である。よし、ここは神奈川県民のよしみで、どちらかというとベイスターズ目線で試合を観ようじゃないかと、電車が藤沢に差し掛かった辺りで緩めの観戦のスタンスを決める。
ちなみにこの日の対戦相手、”北海道日本ハムファイターズ”の2軍は、この時点でリーグ3位。得点はリーグ最少タイの31ながら、失点もリーグ最少の27。チーム打率はリーグワーストの.201ながら、チーム防御率はリーグダントツ1位の1.70。
打てないけど守り勝つという、要はベイスターズ2軍と真逆のチームのようである。ありふれた表現ではあるが、矛と盾の戦いということで、試合そのものにも俄然興味が湧いてきた。
参考までに、今季ベイスターズ2軍はここまで日ハム2軍に0勝2敗と勝てていない。
追浜駅がらノスタルジーを感じる商店街を行く
最寄り駅を出て、1時間20分ほどで追浜駅に到着。「追浜」と書いて、「おいはま」ではなく「おっぱま」と読む。良いですねえ、おっぱま。なんとも風情のある響きである。駅構内や街中にはベイスターズの大きなポスターが掲示されており、そこには”DOC of Baystars”の文字が踊っている。

町中にあるDoc of Baystarsの巨大看板∸平床大輔撮影
勝手な解釈だが、若手の育成や負傷から復帰した選手の再調整の場としてのファームと、横須賀港にある船舶用ドックには、確かに相通ずるものがあると思う。なんにせよ、野球の息づいた港町という雰囲気は、遠出してきたスポーツ好きの心をくすぐる。
駅を降りると、正面にスタジアム方面へ”夏島貝塚通り”のアーケード商店街が伸びており、昭和の生き残りといった、ノスタルジアのみが取り柄ですという感じの建物が点在している。

ノスタルジックな夏島貝塚通りの商店街-平床大輔撮影
見たところ、商店街のシャッターの半分ほどは閉まっていたが、明らかに飲み屋といった風情の店舗もあったので、夕方に来ると、またこの景色も変わるのかもしれない。スタジアムまで1キロほどの道中にコンビニも3軒ほどあったので、手ぶらで来ても不自由はないだろう。

電柱にもDOCと街全体が盛り上げている‐平床大輔撮影
平日の昼間、野球ファンの猛者に混じる
前述の通り、この日は13時プレイボールで、スタジアの開門は11時半。ふらっと遠出をしたはずの私も、しっかり開門時間の数分前に到着。実は私、せっかちであり、待ち合わせ時間や何らかの開始時間には遅れられない性分なのです。風来坊という言葉には憧れるけれど、多分、一生風来坊にはなれないと思う。
チケット売り場にはパッと見て、60人くらいが既に列を作っている。言ってみれば野球ファンでも猛者の部類に入る人々である。君たち、平日の昼間から何をやっているのだ、と言いたくなるが、こちらとて人のことは言えない身なので、もちろん言わない。中には、確実に高校生以下と思われる男子がいて、しかも日ハムのユニフォームを着ていた。学校、行かなくて大丈夫なのか。

横須賀スタジアム外観∸平床大輔撮影
とりあえず、やるべきこともないので列に並ぶ。この日は半袖での野球観戦を見込んでいたものの、昼前の追浜はまだ少し肌寒く、出掛けに何の気なしに羽織った青い薄手のウインドブレーカーを着ていたので、はたから見れば私とて、立派なベイスターズファンの猛者である。
チケットは全自由席で大人1,200円也。バイトと思しき係員の女の子が、窓口の前で繰り返し「支払いは現金のみです」と念を押している。どこへ行ってもキャッシュレスのご時世にいい度胸である。
ただ、昭和生まれとしては、こういうオールドスクールなやり方は嫌いではない。世の中、便利さだけを追求し、何から何まで最新バージョンにアップデートしてしまっては味気ないじゃないか、と思いたい。
1軍の試合では買えないネット裏で見る
そんなことを考えていると、チケット売り場のすぐ隣にある出入り口から、ユニフォーム姿のベイスターズの選手何人かがスタジアムへ入っていく。その距離、数メートル。
