年末年始の恒例スポーツイベントといえば、駅伝、サッカー、ラグビーなどが思い浮かびますが、アメリカンフットボールの日本一を決定する選手権試合「ライスボウル」も有名ですね。
1月3日、東京ドームで行われた「アメリカンフットボール日本選手権 プルデンシャル生命杯 第76回ライスボウル」。昨年から、日本社会人Xリーグの上位リーグ「X1Super(スーパー)」の優勝決定戦として生まれ変わっているんです!
加えて、今シーズンからはポストシーズンが拡大。「X1Super」のA、B両組の各6チームがリーグ戦を争い、各組4位までに残った8チームが「ライスボウルトーナメント」としてトーナメント方式のプレーオフを戦いました。
この過酷なトーナメントを勝ち上がりライスボウルに駒を進めたのは、共にリーグ戦で全勝を果たした富士通フロンティアーズとパナソニックインパルス。2年連続の対戦カードです。
富士通フロンティアーズの連覇なるか? パナソニックインパルスが雪辱を果たすのか? 大一番を前にしても、両チームの選手たちはとてもリラックスした表情。試合に向けた準備を丁寧にこなしていきます。よく見ると、選手はいくつかのゾーンに分かれて異なるアップをしているようですね。
アメリカンフットボールの競技特長として選手の専門性があげられます、11人で試合をするアメリカンフットボールは、基本的にオフェンスチーム、ディフェンスチーム、キッキングチームに分かれており、それぞれのチームは更に役割の異なるポジションで構成されているんです。
例えばキッキングチームのキッカー(K)は、キックオフやパント、フィールドゴールなどの特別な状況で出場する選手。試合前に丁寧にキックの練習をしていたパナソニックインパルスの佐伯 眞太郎選手!キックを専門とする選手ならではの練習です。
チーム全体でのストレッチでは、ディフェンスの司令塔・ラインバッカー(LB)のジャボリー ウィリアムス選手(Jaboree Williams)も素敵な笑顔を見せながらリラックスした様子でアップしています。
富士通フロンティアーズも、オフェンスチームがパスを受けるために相手のディフェンスをすり抜けるステップワークのアップをしています。こう言った試合前の選手たちの動きを観ることが出来るのも観戦の楽しみのひとつですね。
試合時間が近づくと、選手たちの表情も引き締まってきます。富士通フロンティアーズ・鉄壁ディフェンスチームの要、ディフェンスライン(DL)の宇田 正男選手、ディフェンスバック(DB)の林 奎佑選手は、会場の熱気が高まりを感じながら集中力を高めていきます。
選手たちやスタッフに負けじと準備に余念の無いのは、富士通チアリーダー部フロンティアレッツ(Frontierettes)の皆さんです。チーム公式マスコットのフロンティー(Fronty)に加え、女子バスケットボールWリーグに所属する富士通レッドウェーブのチーム公式マスコット・レッディ(Reddy)も華やかな衣装に身を包んで試合開始に備えています。
試合開始時間が刻々と近づいてきました。試合前のセレモニーが始まります。華やかな選手紹介を前に、通路で待つ選手たちは気合い十分!アナウンスが選手をひとりずつコールすると、会場からは大きな拍手が巻き起こり、選手が勢いよくフィールドに駆け込んで行きます。
こういった演出も、本場アメリカ・NFLの優勝決定戦「スーパーボウル(Super Bowl)」のようにどんどん進化していくことが期待されます。アメリカンフットボールの最高の大会であり、アメリカ合衆国最大のスポーツイベントであるスーパーボウルの雰囲気を日本でも体感できるイベントとなれば、更に多くの注目を浴びることになりますね。
富士通フロンティアーズ、パナソニックインパルスの両応援席には多くの観客が詰めかけ、ほぼ満員となりました。パナソニックインパルスが支援するタッチフットボールのチーム・ジュニアインパルスの選手たちも憧れの選手たちの勇姿を見守っています。
さぁ、いよいよ試合が始まります!
両軍選手が集まり、雄叫びを上げると会場のボルテージは最高潮に達します。
先ずは1Q、主導権を握ったのは、パナソニックインパルスです。
最初の攻撃(オフェンスシリーズ)からインパルスが着実に敵陣深く入り込み、ランニングバック(RB)ミッチェル・ビクタージャモー選手(Victor Jamal Mitchell)のラン・タッチダウン(TD)で早々に先制します。インパルスの選手たちはもちろん、応援席も一気に勢い付きます!
フロンティアーズがフィールドゴール(FG)を失敗した直後の2Qには、またしてもインパルスのビクタージャモー選手が73ヤードを独走!このTDで14-0と突き放します。
一方のフロンティアーズもここから反撃を開始!
K・納所 幸司選手のFGで3点を返すと、RB・トラショーン・ニクソン選手(Trashaun Nixon)が12ヤードのラン・TDで7点を返し、今度はフロンティアーズ応援席が盛り上がります。
インパルスが14-10とリードして前半が終了。日本一を決めるに相応しい一進一退の攻防に会場からは大きな拍手が沸き起こります。
選手たちが控え室に戻り、アメリカンフットボールの試合に欠かせないハーフタイムショーへと移ります。NFLのスーパーボウルでは、毎年出演するアーティストとそのパフォーマンスが世界中の話題になり、「テレビCMの広告枠が30秒で約7億円」といったニュースが注目されるなど、アメリカンフットボールのハーフタイムショーは日本でも良く知られたスポーツエンターテイメントではないでしょうか。
今年のライスボウルでは、SNSからその人気が高まったアーティストのyamaさんが登場!代表曲「春を告げる」、「麻痺」、人気TVアニメ「SPY×FAMILY」のエンディングテーマ「色彩」を特設ステージで披露しました。
いよいよ後半戦、3Qの開始ドライブからインパルスが躍動します。
クオーターバック(QB)のジェイロン・ヘンダーソン選手(Jaylon Henderson)からTDパスが決まり、一気にリードを11点差に広げて後半戦もインパルス優位で試合が進むのかと思われました。
しかしフロンティアーズは次のドライブでRB・ニクソン選手がディフェンスを引きずりながらのTDを奪って、15-21と反撃!
さらに続くオフェンスシリーズでも、ゴール前からQB・高木 翼選手が、ワイドレシーバー(WR)の小梶 恭平選手にTDパスを決め、ついに逆転に成功します。目まぐるしく状況の変わる試合展開に、観客席の声援もより大きくなり会場全体が異様な熱気に包まれます。
再逆転を狙う4Q、インパルスはビクタージャモー選手のリターンや、ランとパスを駆使し、ゴール手間20ヤードまで果敢に攻め込みます。しかし、ここでビックプレーが見せたのは、フロンティアーズでした。試合後に「ここ(お立ち台)に立つことを何回も妄想していた。」と今日の活躍を確信していた、ディフェンスバック(DB)・高岡 拓稔選手がインパルスのパスをインターセプト!
高岡選手のプレーで流れを一気に引き寄せたフロンティアーズは、この後ニクソン選手がこの試合3本目となるランTDを決め、29-21と8点のリードを奪いました。
それでも勝利への執念を見せるインパルスは、残り3分となったオフェンスでTDを狙いゴール18ヤード手前まで確実にボールを進めます。
しかし、この土壇場でビックプレーが再び飛び出します。QBのヘンダーソン選手がWRのアルフォンゾ・オヌワー選手(Alfonso Onunwor)へ放ったパスを、またもやフロンティアーズのDB・高岡選手がインターセプト! 試合を決定付けるワンプレーとなりました。
フロンティアーズはインパルスに先制され、最大14点のリードを許す厳しい試合展開でしたが、後半に2つのインターセプトなどで流れを引き寄せて29-21の逆転勝利。見事にライスボウル2連覇、7度目の日本一に輝きました。
試合後のインタビューで、フロンティアーズ・山本 洋ヘッドコーチは、「タフなゲームだったが、選手たちが状況に応じてきちっとプレーしてくれ、勝負どころを抑えてくれた。」と選手たちを讃えます。
ラン188ヤード3TDでライスボウルMVPに輝いたトラショーン・ニクソン選手も、「オフェンスラインのみんなが頑張ってくれたおかげで受賞できた。(獲得したシーズンMVPは、仮にチームが勝てなくても受賞することがあるが)ライスボウルMVPは勝たないともらえないもので嬉しさも格別。米国の素晴らしい選手もいた強豪パナソニックに勝ったことも嬉しい。」と、チームメイトへの賛辞を惜しみません。
惜敗したインパルス・荒木 延祥ヘッドコーチは「富士通は強かった。攻撃はもったいないプレーが多く、守備でもこらえ切れずにずるずると点を取られてしまった。どうやったら勝てるのか、よく考えないといけない。」と試合を振り返りながら、来シーズンへの課題を話します。
インパルスの選手たちもファンに向かい、1年間応援してくれたことを感謝すると共に、来シーズンの巻き返しを誓っていました。
富士通フロンティアーズの優勝で幕を閉じた、2022年度の社会人アメリカンフットボール・Xリーグですが、今年のアメリカンフットボールシーズンにはビックイベントが待っているんです!
2023年1月22日に、日本選抜チームが米国の学生選抜チームと対戦する「Japan U.S. DREAM BOWL 2023」(ジャパン US ドリームボウル 2023)が開催されます。提供:日本社会人アメリカンフットボール協会
東京2020で新しくなった東京・代々木の国立競技場を舞台に、日本で9年ぶりとなるアメリカンフットボールの国際試合。
今回の日本選抜は、ラグビー日本代表のように、日本でプレーする外国人選手も招集した最強のJapan All-Star Teamを編成! 対する米大学選抜もアメリカ合衆国北東部にある名門の私立大学8校から選抜されたIvy League All-Star Teamで臨みます。プロリーグNFLと並んで人気の高いカレッジフットボールNCAA Division IのFCS(フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン)に所属するアイビーリーグは、NFLで活躍する選手や歴代大統領などの著名人を多数輩出している超名門校ばかり!
ライスボウルで戦った、フロンティアーズとインパルスからもMVPのニクソン選手を始め、多くの選手が参加して熱い戦いを繰り広げます。
ライスボウルでご紹介した「生で観て感じるアメフトの魅力」を、是非「Japan U.S. DREAM BOWL 2023」で体感してみてはいかがでしょうか?
Journal-ONEでは、Ivy League All-Star Teamの来日に密着。試合を始めさまざまな日本での交流をレポートしていく予定ですのでお楽しみに!