オリンピックの雰囲気を日本で!
“ソフトボール五輪復活” という明るいニュースが飛び込んできました! 10月16日に行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2028年オリンピック・ロサンゼルス大会(以下、ロス五輪)での実施競技として、野球・ソフトボール競技が正式に採用されました。2021年、コロナ禍で沈む私たちが歓喜したオリンピック・東京大会(以下、東京2020)で2大会連続金メダルに輝いた、ソフトボール日本代表の勇姿を再びオリンピックで観ることができるのです。
その日本代表選手はもちろん、アメリカ、メキシコ、オーストラリア、イタリアなどの代表選手たちが集まる世界トップクラスのソフトボールリーグ(以下、JDリーグ)もいよいよ終盤戦に突入しました。16チームが東西地区に分かれて週末ごとに14節で29試合を戦い、日本一を目指すノックアウトラウンド(11月に行われるプレーオフ、ダイヤモンドシリーズ)に進出できる上位7チームを目指すリーグ戦ですが、その戦いも残すところあと僅かとなりました。
今シーズンのJDリーグは、東地区の “ビックカメラ高崎ビークイーン”、西地区の “トヨタ レッドテリアーズ” がリーグ戦優勝を飾ったものの、2位以下のプレーオフ進出をかけた争いはゲーム差1で大混戦。このレポートでは、2シーズン連続のプレーオフ進出を目指す京都府京都市を本拠地とする “SGホールディングス ギャラクシースターズ” のラストスパートをレポートします。
“野球発祥の地” に世界の代表選手が降臨
この日のゲーム会場は、愛知県松山市の坊ちゃんスタジアム。プロ野球・東京ヤクルトスワローズの秋季キャンプ地であり、オールスターゲームも開催される立派なスタジアムです。
実はここ松山は、“野球発祥の地” なんです! 松山が生んだ明治の歌人・正岡 子規は、アメリカ発祥のベースボールをプレーし、広め、野球を題材とした俳句を数多く詠み残して野球殿堂入りも果たしています。
野球に熱中した正岡 子規は、自分の雅号を “野球” として多くの作品を世に出しました。球をボールと読ませて「ノボール」「の・ぼーる」と幼名の升(のぼる)と掛けたことにあるようですが、正岡 子規が訳した野球用語 “打者” “走者” “四球” “直球”などもあるため。日本における “野球の祖” といえる人物なのですね。
日本のダイヤモンドスポーツ・野球の地ともいえる松山に降り立ったのは、世界トップクラスの選手たちが集まる “銀河系スター軍団(ギャラクシースターズ)”! 昨年はプレーオフ初戦で涙を呑んだ雪辱を果たすべく、現在西地区3位と射程圏にあるプレーオフ進出権を確実なものにすべく連勝を狙います。
今シーズンもギャラクシースターズには、世界中から東京2020代表選手があつまるMLB(アメリカ大リーグ、メジャーリーグベースボール)顔負けの国際派チーム。オーストラリア代表の主砲 Stacey PORTER(ステーシー・ポーター)選手、今夏のソフトボールW杯予選ラウンドでも好投したKaia PARNABY(カーヤ・パーナビー)投手、イタリア代表の主砲で、MLB Home Run Derby Xにも呼ばれるほどの人気を誇るErika PIANCASTELL(エリカ・ピアンカステリ)選手と、3人のオリンピアンが在籍しています。
「昨年のプレーオフの敗戦を受け、チームでは ”何かが足りない” と選手たちが色々と課題に向き合ってくれました。出した結果は “打力の向上”。ポーター選手、エリカ選手以外の選手たちでどうやってチャンスを作るかにチャレンジしてくれています。」と、チームの成長に目を細めるのは加藤 愛監督です。
更に後半戦からは、全米大学チームトップ3に君臨するFlorida State(フォロリダ州立大)のエースとして日米対抗ソフトボール2022で来日した、Kathryn Sandercock(キャスリン・サンダーコック)投手も加わりました。日本代表の核弾頭・中川 彩音選手も合わせ破壊力満点の打線と、強力投手陣がここまで2戦2勝と相性の良い地元・愛媛の “伊予銀行ヴェールズ” と対戦しました。
ここ一番でパワーが炸裂!
初回の中川 彩音選手、2回のエリカ選手と各国を代表するスラッガーが目の覚めるような打球でヒットを放ち、序盤からヴェールズ先発の黒木 美紀投手を攻め立てますが、ここ一本が出ないギャラクシースターズは3回まで無得点と自慢の打線が封じられます。
両チーム無得点で迎えた4回、“ヒットで得点できないならば” と打席には4番のポーター選手が入ります。前の打席、ヴェールズバッテリーの緩急と内外角をいっぱいに使った攻めにチャンスで三振を喫したポーター選手。「前の打席で攻めた配球から狙い撃ちされた。」と黒木投手が試合後に話したとおり、迷いなく豪快に振り抜いた打球は打った瞬間にレフトフェンスを越える特大のソロホームラン! 攻めあぐねていた嫌な流れを、自慢のパワーで一気に引き戻します。
「第1打席でも良い感触でボールを捉えていました。少しスイングのタイミングが早かったので、そこを修正することを心がけて打席に入りました。」と話したエリカ選手。修正して振り抜いたバットからボールをクラッシュする大きな音が響くと、打球はあっという間にセンターの頭上を飛び越えるツーランホームラン! 2死ランナー無しという苦しい場面から2点を奪い勝ち越せるリーグ屈指の攻撃力に、ここまで力投を見せてきた黒木投手もマウンド上で苦笑いするしかありませんでした。
試合後、「打ったのはスロードロップでした。チームに勢いを付ける良い場面でホームランを打てて良かったです。」と話してくれたエリカ選手。「黒木投手とは対戦することが多く、とても良い投手である彼女との対戦を毎回楽しみにしているんです。」と、ライバルとの緊張感ある対決を心から楽しんでいることを教えてくれます。
前の試合でもホームランを放つなど夏場以降の打撃は絶好調! その理由を聞くと、今夏に欧州(イタリア、スペイン、アイルランド)で開催された “第17回ワールドカップ(以下、ソフトW杯)グループステージC” での経験が活きているとのこと。
「イタリア代表の一員として、世界中のハイレベルのチームと母国・イタリアで戦えたことがとても良い経験になりました。家族や友だちからの応援を受けプレーできたことも、とてもエキサイティングでテンションがあがりました。戦う姿を観てもらえて本当に嬉しかったです。」と、母国で得た貴重な経験を話してくれました。
また、このソフトW杯グループステージで打率.500、4盗塁と大活躍し、日本代表のグループステージ1位通過に貢献した中川選手も、その経験を活かした俊足好打を披露。7回にこの日2本目のヒットで出塁すると、二盗、三盗と立て続けに盗塁を決めてダメ押しとなる4得点目のホームを踏む活躍を見せました。
プレーオフ進出に向けては、「多くのみなさんに試合を観に来て欲しいですね。皆さんの声援が力になるんです。」と話すエリカ選手。これから益々熱くなるギャラクシースターズとエリカ選手の打撃は是非とも生で観戦して欲しいところです。
銀河系投手陣にも注目!
強力な打撃陣に目が向きがちなギャラクシースターズですが、投手陣も負けてはいません。
後半戦からチームに合流した、キャスリン選手は昨年の8月に日米対抗ソフトボール2022で初来日を果たし、ギャラクシースターズの選手として2度目の来日。9月が新年度スタートとなるアメリカから見れば “2シーズンぶり” の来日になります。
「3日前に来日し、チームのバスと一緒に松山に来ました。」と、スタンドでギャラクシースターズのユニフォームを着て応援していたColin Sandercock(コリン・サンダーコック)さん。キャスリン選手のお父さんです! がんに対する免疫療法に関する会社の上席副社長を務めているコリンさんは、大阪や東京などへの来日経験は豊富ですが、松山は初めてとのこと。「京都からの道中、大きな橋(瀬戸大橋)を渡ったり、綺麗な山々を眺めたりと日本の車窓を楽しみました。」と話します。
キャスリン投手が日本でプレーをすることについては、「アメリカのプロリーグとは違ったソフトボールを体験することはとても良いことです。アメリカで一緒にプレーしたこともあるエリカ選手が同じチームに所属していることも心強いですね。」と、キャスリン選手の選んだ道が良い選択であるとコリンさん。「来シーズンの開幕に合わせて、妻を連れてまた来日しようと思います。京都という素晴らしいホームタウンで活動するギャラクシースターズですので、家族で京都の美しい桜を楽しみたいですね。」とニッコリ。試合後には親子で、球場前に並んだキッチンカーで松山のご当地グルメを楽しんでいました。
ヴェールズ戦に先発したキャスリン投手は、得意のドロップが冴え渡り3回1死まで走者を1人も出さないパーフェクトピンチングを披露。4回には味方の送球ミスで1点を献上しましたが、被安打2、奪三振6の完投勝利! 「今日は得意のドロップボールを使って良いピッチングができました。」と嬉しそうに好投を振り返ります。
「日本でのプレーをとても楽しんでいます。日常の練習や生活はもちろんですが、遠征の途中で観る景色など素晴らしい体験ばかり。JDリーグで、今までと違ったタイプの選手たちとの対戦するのも楽しみです。」と、日本のソフトボールと生活の感想を教えてくれました。日本食も美味しいと話すキャスリン投手のお気に入りは “おにぎり”。一緒にインタビューしたエリカ選手が、「ラーメンも美味しくて好き!」と聞くと笑顔で頷いていました。
ギャラクシースターズのエースとして、ここまでチーム最多の8勝を挙げているカーヤ投手も、松山ラウンドでの “シオノギ レインボーストークス” 戦に先発して好投を見せてくれました。
1回に四球で2死満塁とチャンスを作ったギャラクシースターズでしたが、レインボーストークスのエース・吉井 朝香投手の粘りの投球に無得点となり、その後は投手戦に。
5回まで0-0と緊迫した展開となる中、6回に突如制球を乱して四球を与えたカーヤ投手は、粘るレインボーストークスの横野 聖奈選手、小澤 彩稀選手に連打を浴びて2失点。強力打線の援護なく悔しい敗戦となってしまいました。
「今日の調子は良かったです。しかし、シオノギさんはとても強いチームなので、簡単には抑えられません。今日は相手にやられてしまいました。」と、試合後にレインボーストークスの粘る打線を称えたカーヤ投手。「疲れは全くなかったのですが、途中の4回辺りから外側にボールを集めすぎていました。もう少し内外角を投げ分けて攻めれば良かったかもしれません。シオノギ打線はそれを見逃しませんでした。」と、今後の修正点を教えてくれました。
エリカ選手と同様、今夏の“第17回ワールドカップ(以下、ソフトW杯)グループステージA” でオーストラリア代表のエースとして、来年夏に開催される本戦への出場権獲得に貢献したカーヤ投手は、「アイルランドという新しい国で、W杯予選を戦えたことは本当に良い経験になりました。」と話します。
「全面芝のグラウンドでプレーするのは本当に気持ちが良かったし、オーストラリアを代表して世界の強豪と戦うに本当に素晴らしい場所でした。グラウンドの背後にある中世のお城(Bremore Castle)がある景色や、アイルランドの皆さんのおもてなしも素晴らしかった。本当に良いグループ(A)に入ったと思いましたね。悪天候に悩まされましたけどね(笑)。」と、この大会で得た素晴らしい経験を教えてくれました。
「先ずは残り試合をしっかり勝って、プレーオフでも良い結果を残して。良い気分で日本、アメリカ、イタリアの代表選手が集うJDリーグで一緒にW杯に向けて準備をしたいですね。」と、世界に繋がるJDリーグで勝つことが大事と話すカーヤ投手。
「私たちのホームタウンである京都はとても良いところばかりです。また、幸運にも遠征試合で日本中の多くの場所を訪れる機会がありましたし、それらは全て私のお気に入りの場所になっています。やはり京都に住んで京都でソフトボールが出来るほど贅沢なことはありませんよね。本当にラッキーです!」と、好きな地元・京都のファンたちのために活躍を誓ってくれました。
プレーオフへ視界良好
「サンダーコック投手は入団してまだ日が浅いので、これから日本の生活やゲームに慣れてくればもっと状態が上がってくるでしょう。今日ぐらいの投球を見せてくれれば、これから厳しい戦いが続く中でも勝ち星を積み重ねていけるのではと思います。」と、ヴェールズ戦を振り返る加藤監督。
「欲を言えば、もう少し早い回から得点を挙げて欲しかったですね(笑)。どの選手もバット自体は振れているので、個々の状態は良いです。海外遠征が多く体調面を心配していた中川選手も好調を維持してくれていますしね。」と、攻守共にプレーオフへの準備も万全というところです。
「日本人選手も。大國 結華選手や山本 星選手などの期待している選手の力が付いてきました。先ずはリーグ戦で残っている上位チーム “豊田自動織機シャイニングベガ” さんとの2戦を良い形で戦って。」と、プレーオフでの対決が濃厚なライバルチームへの闘争心を燃やす加藤監督。
「来年はW杯も控えているで、世界から集まる私たちのチームはコミュニケーションをいかに取れるかがカギになるのです。日本人選手たちもそれを分かっていて対応してくれています。チーム一丸でひとつひとつ勝ちを積み重ねていきたいです。」と、ギャラクシースターズならではのチーム運営の苦労も話してくれました。
混戦必至の2023シーズン
東地区のビックカメラ高崎 ビークイーンと西地区のトヨタ レッドテリアーズの優勝が決定しましたが。2位以下が昨シーズン以上に混戦となっている2023シーズン。プレーオフ進出となる両地区2位と3位、ワイルドカードとなる勝率の高い4位のチームになれる権利を有するチームは昨年よりも多く残っています。
最終節の第14節(10月28日、29日)で結着する混戦のプレーオフの椅子をかけた戦いは、群馬県高崎市、埼玉県本庄市、愛知県名古屋市、京都府京都市で開催されます。
ロス五輪に向けて益々熱くなる女子ソフトボール。お近くの町で開催されるJDリーグを観戦して、ハイレベルな戦いを演じる選手たちの笑顔を間近に観てみませんか?きっと皆さんも、ソフトボール観戦の面白さに気付いてもらえると思います。
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