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取材・文:
Journal ONE(編集部)
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国体ってなに?

日本で毎年開催される「国民体育大会」というスポーツの祭典。誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

1946(昭和21)年から毎年、各都道府県持ち回り方式で開催されている歴史ある国民体育大会(以下、国体)は、国のスポーツ基本法に定められている重要行事の一つで、日本スポーツ協会・文部科学省・開催地都道府県の三者共催で行われています。

日本では、ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピックという世界に注目された大会の開催が続き、私たちのスポーツへの関心が高まっています。
その中で、コロナ禍で2020年、2021年の大会は中止となった国体が、3年ぶりに開催されるとあって、多くの方々が注目する大会となりました!

また、国体はスポーツ基本法の一部を改正する法律により、2024年に佐賀県で開催される第78回大会以降、「国民スポーツ大会(以下、国スポ)」へと改称される節目の大会でもあります。

開催県の栃木県はもちろん、各都道府県の競技団体はいつもに増して力の入った「いちご一会とちぎ国体」を、Journal-ONE独自の視点でレポート!
冬季大会、本大会に分かれて行われる競技のうち、本大会の種目のひとつである「ソフトボール」の成年女子の部に焦点を当て、各県選手の皆さんや大会を運営する関係者の方々を通じ、スポーツが紡ぐ人と人との絆を紹介します。

ソフトボール成年女子の部は、東京2020金メダリストを含む日本代表選手が多く出場する注目の競技です!栃木県の北部に位置し、那須高原や塩原温泉に近くにある大田原市で素晴らしい試合が行われました。
加えて、世界最高峰のソフトボールリーグ「JD.LEAGUE」で活躍している選手、平日フルタイムで社業に携わりながら活動を行う社会人リーグの選手、部活動で日々腕を磨く大学生と様々なバックボーンを持った選手が頂点を目指して戦います。
日本を代表するトップアスリートと、一般の社会人や大学生が力を合わせて競技する姿を見ることの出来る貴重な大会なのです。

また、本大会(栃木県大田原市で開催)へ出場するには、北海道、東北など全国9箇所で行われるブロック大会を勝ち進まなければならず、こちらでも素晴らしいプレーを観ることが出来ました。
地域の関係者の皆さんの支えで開催されたブロック大会を紹介した東海地区大会レポートもぜひご覧下さい。

2022年10月8日(土)~10日(月)に行われた本大会。開催県・栃木を始め、岡山県、長崎県、群馬県、北海道、京都府、石川県、宮城県、愛知県、神奈川県、鹿児島県、愛媛県。岩手県の13チームがトーナメント方式で優勝を目指しました。
都道府県の各チームの編成を見比べながら観戦することは、国体の大きな見どころのひとつです。特長ある幾つかのチームを紹介していきます。

-JD.LEAGUEの単独チームで出場-

京都府は、JD.LEAGUEでも優勝を争う強豪「SGホールディングス ギャラクシースターズ」のみで構成されたチームです!
SGホールディングスは、東京2020の豪州代表で活躍したStacey Porter(ステイシー・ポーター)選手、Kaia Parnaby(カーヤ・パーナビー)選手、同じくイタリア代表のErika Piancastelli(エリカ・ピアンカステリ)選手、Greta Cecchetti(グレータ・チェッケッティ)選手といった主力の外国人選手が出場できないため、いつもより違った戦いをしなければなりません。

「(SGホールディングス)単独チームで編成させて頂けたのは、調整面で本当に有り難いです。」と語るのは、JD.LEAGUEで采配を振るう加藤 愛監督。
「私たちのチームは若くて元気な素晴らしい選手が揃っていて、4人の外国人選手も本当に明るく、最高の雰囲気で(JD.LEAGUEでも)良い結果を残せています。本大会は、日本人のみでの戦いとなりますが、チーム一丸となって戦っていきます!」と、素敵な笑顔で話してくれました。
加藤監督、国体では采配を柳瀬 友紀兼任コーチに任せ、スタンドで声援を送りますが・・・ 本大会に出場できない4人の外国人選手も応援に駆けつけていました!
皆さん本当に明るく、出場する選手達と一緒にフェンス越しに試合前の円陣を組んだり、拍手やかけ声で選手達を鼓舞したりと、JD.LEAGUEでは観られないひと味違ったチームワークの良さを披露してくれました。

地元・栃木県も、満員となった地元の声援をアドバンテージにJD.LEAGUE「ホンダ リヴェルタ」の単独チームで優勝を狙います。

こちらも、投手陣の大黒柱である、東京2020米国代表のAlly Carda(アリー・カーダ)選手と、同じ米国出身のJailyn Ford(ジェイリン・フォード)選手が出場できないため、投手陣の踏ん張りが勝敗を左右する展開となります。
栃木県のユニフォームを着て、選手ごとに顔写真を大きくあしらったお手製のコンサートうちわを何本も持っての応援です!
「国体は初めての観戦でとても楽しい。地元・栃木県でチームメイトの活躍を応援しに来ることが出来て良かった。観戦に来たファンは栃木の観光地にもぜひ行って欲しい。」と、普段見られないスタンドからの仲間のプレーに大きな声援を送っていました。

平成に入ってから7回もの単独優勝を誇る神奈川県も、JD.LEAGUE「日立 サンディーバ」の単独チームで挑みます。
神奈川県の日立も、東京2020メキシコ代表のTaylor McQuillin(テイラー・マクイリン)選手が投手陣を、また米国代表のHannah Flippen(ハンナ・フリッペン)選手が打撃陣を牽引していますが、東京2020金メダリストの清原 奈侑選手、日米対抗ソフトボール2022で日本代表として活躍した坂本 結愛(ゆい)選手を始めとする日本人選手とバランス良くリーグを戦っているだけあって、チーム力は最も現状に近い戦いが期待されます。

村山 修次監督は、「JD.LEAGUE初代王者を目指して戦っている好調なチーム状態をそのままに、神奈川県代表として全力でプレーします。リーグ戦の途中で、国体という違う緊張感のある大会で勝ち進むには調整が難しいのですが、選手達は本当に良くやってくれています。」と、穏やかな口調で選手達を見つめながら話してくれました。

-ふるさと選手制度で郷土に貢献-

来年の開催県である鹿児島県は、地元の選手達とふるさと選手制度の選手達が一丸となって戦いに臨みます。
ふるさと選手制度とは、国体独自の参加資格。居住地である現住所や勤務地以外に、ふるさと登録の出来る都道府県から国体に参加できる制度。卒業した小・中・高等学校いずれかの学校が所在する都道府県の代表として、成年種別の選手のみを対象としています。

鹿児島県は「MORI ALL WAVE KANOYA」の選手を中心に、ふるさと選手としてJD.LEAGUEで活躍する金江 爽友(さゆ)選手、川畑 瞳選手、小島 あみ選手が参加して試合に臨みます。

「ふるさと選手制度で鹿児島県に呼んで頂き、地元関係者の皆さまや選手達には本当に感謝しています。」と話すのは、JD.LEAGUEで優勝を狙う強豪「デンソー ブライトペガサス」の扇の要・小島選手。
「リーグとは雰囲気も戦い方も違いますが、この雰囲気を楽しんでプレーできました。」と、充実感あふれる笑顔で国体の魅力を教えてくれました。

競技役員を務める日本ソフトボール協会の瀬戸山 章常務理事は、鹿児島県からの派遣役員。試合後には真っ先に選手のもとに駆けつけ、優しい言葉を掛けられていました。
「ふるさと選手制度で参加してくれた3選手と、MORI ALL WAVE KANOYAの選手達のチームワークは素晴らしく、本当に頑張ってくれました。来年の自県開催でも良い戦いを見せて県民の期待に応えたいです。」と、ホスト県となる来年に向けた更なる飛躍を誓っていました。

-オールスターチームで優勝を狙う-

ファンからの声援がひときわ大きいチーム・群馬県は、JD.LEAGUE東地区優勝を果たした「ビックカメラ高崎 ビークイーン」を中心に、同じ高崎市の強豪「太陽誘電 ソルフィーユ」の選手達で構成されたオールスターチームです。
東京2020で金メダルを獲得した4選手、内藤 実穂選手、原田 のどか選手、市口 侑果選手、我妻 悠香選手を始め、日米対抗ソフトボール2022の日本代表4選手、勝股 美咲選手、工藤 環奈選手、中溝 優生選手、藤本 麗選手と、豪華な選手編成で優勝を目指します。

ビックカメラ高崎の監督でもある群馬県の岩淵 有美監督は、「国体に臨むにあたっては、JD.LEAGUEや全日本総合女子選手権大会と変わらず万全の調整を行っています。ソフトボールの盛んな群馬県の代表として、県民の皆さんの期待に応えたい。」と決意を話してくれました。

同じくビックカメラ高崎、日本代表、そして国体と違ったユニフォームを着る機会の多い藤本選手は、「いつも応援して頂いている群馬県の代表として全力でプレーします。太陽誘電ソルフィーユさんとの合同チームはとても楽しく、群馬県のユニフォームも気に入っています。」と国体ならではの魅力も紹介してくれました。

また、国体では多くの関係者の皆さんが運営を支えています。

決勝戦が行われた10月10日は、早朝まで降った雨の影響でグラウンド・コンディションが心配されました。
9時30分試合開始を控え、真っ赤なジャージにグリーンのベストを着た、高校生の皆さんがグランド整備に汗を流していました。栃木県立大田原女子高等学校のソフトボール部の皆さんです!

「オリンピックで活躍した選手や、JD.LEAGUEでプレーする選手が間近に観られるなんて凄いことです!」「どのチームもレベルが高くて、ノックなんかマジで神です!」「選手が全力でプレーできるようグラウンド整備を一生懸命やりました!」と早朝からの作業の疲れも見せずにこの笑顔です。

赤と緑の出で立ちが栃木県名産のイチゴに見えることから、SNSで「イチゴの妖精」と紹介されていたことを尋ねると・・・
「いえいえ!部活のジャージと国体のベストなので、たまたまなんですよ!」「私たちも着てみて(イチゴみたいで)びっくりしました!」「イチゴというよりも、ちょっと早いクリスマスの装飾みたいで(笑)」と本当に明るい3人でした。

また、会場には栃木県の関係者だけでなく、「SAGA2024」のバッグを持った関係者の方も!
「今回は2年後の佐賀スポ大の運営を勉強するために視察に来ました。」と語るのは、佐賀県小城市で、国民スポーツ大会推進課に勤務する江里口 博さん。
「佐賀では小城市を始め、6つの市と町でソフトボール競技が開催されます。お迎えする行政の責務として滞りなく大会が行われるよう、運営の全ての動きを勉強しています。」と、国民スポーツ大会・元年となる2年後を見据えた準備が始まっていることにも驚きです。
栃木県の特産品を販売しているブースを見ながら、「競技が無事に行われることが一番ですが、小城市の観光スポットやお土産なども楽しんでもらえるよう準備していきたいですね。」と2年後の大会成功を想像して話す江里口さん。
関係者の皆さんのこういった思いが詰まった会場を見て回るのも、国体のひとつの楽しみ方ですね。

本大会の結果は、JD.LEAGUEで防御率0点台(第13節迄終了時)を誇る、ビックカメラ高崎・濱村 ゆかり投手を軸とした万全のディフェンスで試合の流れを作り、準決勝と決勝で3本塁打を放ったビックカメラ高崎・炭谷 遙香選手を始め、計12本塁打の爆発的な打撃を見せた群馬県が、決勝で神奈川県を下し連覇を達成!(2年連続で大会が中止になったため、3年ぶり23回目の優勝)
表彰式では、選手、スタッフ、関係者の皆さんの弾ける笑顔がとても印象に残りました。

来年の鹿児島県、再来年の国民スポーツ大会・元年となる佐賀県でも、多くの方々の思いが紡ぎ出す「する」「みる」「ささえる」という3つのスポーツが重なり合って盛り上がること間違いなしですね。

アクセス
栃木県大田原市
 

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