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「こんなに押せると逆に不気味だな。」「これだけ攻めて1点止まりは嫌だな。」というのが、前半45分の感想――。果たしてその予感は的中する。G大阪は後半10分、宇佐美 貴史、ネタ・ラヴィ、松田 陸と一気に「3枚替え」を敢行する。そして15分、町田は仙頭 啓矢が2枚目のイエローカードで退場処分となった。

“近い間合いでタックルに行き、足を抑えられずに上げてしまった” 形で、アクシデント性の高いイエローではあった。とはいえ、1枚目を既に受けていたことを考えると、代償は大きかった。その後は流れが完全に逆転をする。

相馬 直樹監督が指揮を執っていた時代の町田は、数的不利の展開をむしろ強みにしていた。数的不利から中島 裕希が後半42分、45分、50分とハットトリックを決めて逆転した、2017年4月8日のアビスパ福岡戦のような展開も見せている。だが、黒田 剛監督のゼルビアは素晴らしいチームだが、10人で戦うと強くなる属性は残念ながらない。

今の町田は良くも悪くも “しっかり組織を作る” “相手ボールを奪いに行く” スタイルで、”後ろに引き込む守備” “最終ラインで弾き返す守備” になると強みが出ない。ましてG大阪はオンザボールで生きる選手が多く、町田の規制が弱くなるとその強みが出る。

G大阪が相手陣に押し込み、町田は前半のように “一発でひっくり返す” だけの圧をかけられなくなっていた。39分には宇佐美 貴史の直接FKが決まり、試合は1-1と振り出しに戻った。

どんな失点に対しても「あれは防げた。」という強気なコメントが多い黒田 剛監督も、この一撃には「1本中の1本で精度の高いFKを決めてくる宇佐美貴史選手はさすが。壁がどうこうではなく、その上を行くキックは相手に賞賛を送るべき。」とコメントしていた。

その後はなかなか “しんどい” 時間だった。GKの谷 晃生は再三のビッグセーブで町田を救ったのだが、「いかにも時間を稼いでいます。」という雰囲気を醸し出してしまい、遅延行為で警告も受けた。町田はよく狡猾、老獪なチームと評価をされるが、”本物” はもっと上手に時間を使うものである。

シャトルバスは帰路に課題

試合は1-1でタイムアップ。気持ち晴れ晴れというわけにはいかない、2024年の “お正月” だった。

「前半は良かったけれど、後半は厳しかった。」という展開は、シャトルバスの運行も同様だった。私が取材を終え、18時40分すぎ(つまり試合終了から1時間50分後)に記者室を出ると、まだ町田行きや淵野辺行きの行列が残っていた。

特に “町田駅発着” のシャトルバスは無料のお得さもあって乗客が集中し、極めて長い待機時間が発生していた。今まで経験したことのない事態で、一取材者の私もいささか焦った。

どうやら昨季から大幅に増えた駐車場から合流する車両が渋滞を引き起こし、シャトルバスの “往復時間” が伸びてしまったことも影響していた。また、通常なら最も人の集中する鶴川行きはそこまで混まなかったようで、想定以上に町田行きが人気を集めていたのだろう。

シャトルバスは行政とクラブがかなりのリソースを投入して、J1昇格に向けて増強していたもの。しかし、帰路の運行については、計算違いも含めて課題を露呈していた。

プロは “結果” で評価をされる。失った勝ち点2も、失ったアクセスへの評価も、簡単に取り戻せるものでない。とはいえ、まだ “1試合目” だ。シャトルバスを1.5倍に増やした実績も含めて、クラブは努力をしている。

大切なのはシーズン中の成長だ。戦う選手たちも、クラブスタッフも、開幕前の準備と同じ勢いで、開幕後の取り組みを続けるしかない。

■記者プロフィール
大島 和人
1976年に神奈川で出生し、育ちは埼玉。本籍地は和歌山で、現在は東京都北区に在住する。2010年からライター活動を開始し、全国津々浦々に足を運んでいる。
主な取材対象はバスケットボール、サッカーだが、野球やラグビーも守備範囲。取材の疲れをスポーツ観戦でいやす重度の観戦中毒でもある。
軽度の「乗り物好き」でもあり、お気に入りの路線バスは奈良交通「八木新宮線」、沖縄バス「名護東線」と今はなき宗谷バス「天北宗谷岬線」など。
アクセス
町田GIONスタジアム
  • 小田急小田原線鶴川駅-神奈中バス-ノ津田車庫停留所-徒歩15分
  • JR横浜線・小田急小田原線町田駅-神奈中バス-野津田車庫停留所-徒歩15分
  • 京王電鉄・小田急電鉄・多摩都市モノレール多摩センター駅-神奈中バス-サンシティ町田停留所-徒歩5分
  • 詳しくは記事を参照
取材・文:
大島 和人( 日本 )
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