リーグ戦では、中盤に失点して勝ち星が伸びなかった鹿野投手だが、この試合で1イニングを3者凡退に抑える好投。短いイニングで見せた集中力は、後半戦のチーム浮上のカギになると期待させる投球だった。
今シーズンにトヨタから移籍するや否や、大黒柱としてチーム全ての勝ち星12を挙げる獅子奮迅の投球を見せてくれた三輪投手。この日は久しぶりのリリーフで万全の投球とはいかなかったが、東地区の強打者たちとの対峙は、更なる経験としてチーム初のプレーオフ進出の力になるに違いない。
“しぶといソフトボール” で2年連続プレーオフに進出中の豊田自動織機シャイニングベガからは、走攻守三拍子揃った須藤 志歩選手と昨年唯一、大学生からの代表となった山下 千世投手がLA 2028での金メダル獲得を目指す。
精神的支柱となる経験豊富な選手たち
一発勝負の国際大会では、何と言っても経験豊富な精神的支柱の存在が欠かせない。
1996年組の坂本 結愛選手(戸田中央メディックス埼玉)と、川畑 瞳選手(デンソーブライトペガサス)はこの日もスタメンに名を連ね、主将の石川選手と共にチームの精神的支柱を担う。
2022年の初代表から存在感を発揮する坂本選手は、今シーズン移籍した戸田中央でも精神的支柱として扇の要を務める。日立で守った三塁手のポジションから負担の大きな捕手での出場となった前半戦だったが、打率.462(地区2位)、7本塁打(地区1位)、26打点(地区1位)と三冠王に最も近い成績でチームを同率2位の順位に引き上げた。
東京2020金メダリストの川畑選手も、同点適時打を放つなどここ一番での勝負強さは健在。プレーオフ常連のデンソーだが、前半戦から接戦を落す厳しい戦いが続いていたリーグ前半戦。プレーし慣れた日本代表で川畑選手が調子を取り戻すことで、後半戦の更なる混戦は必至。最後まで目の離せない戦いでJDリーグを盛り上げてくれるだろう。
千両役者が試合を締める
7回表2死ランナー無し。この回から登板している地元・ビックカメラ高崎ビークイーンの勝股 美咲投手に宇津木監督が歩み寄ると、日本代表の応援を務めたビックカメラ高崎ビークイーン応援団から大きな拍手が湧き起こった。
チームのブラスバンド “スイングマダム” の生演奏でスターウォーズのテーマ曲が流れると、颯爽とマウンドに向かうは、世界中のソフトボールプレーヤーたちが憧れるレジェンド・上野 由岐子投手だ。
今シーズンからビックカメラ高崎でも抑えを務める上野投手は、この日もクローザーとして日本の勝利を確定すべくマウンドへ。
打者一人との対決ではあったが、スタンドに詰めかけたファンからは「(上野投手が)投げてくれて、来た甲斐があったね」、「やっぱり球の勢いが違うな。流石だ」といった声が聞こえてくる。
「こんなにたくさんのファンの方と、石川・能登の皆さんに思いを伝えられて良かった」と、チャリティーマッチの意義を語る上野投手は、「この場に居る人だけで、今日の出来事を共有していてはいけない。試合を観ていない方たちにも、能登への思いを知って欲しい」と、石川・能登までこのイベントが伝播することを望んでいた。