大学野球選手権で躍動する野球部!
日本アマチュアスポーツ最大の祭典といえば、高校野球の “春のセンバツ” “夏の甲子園”。MLB(アメリカ・大リーグ)で活躍する、大谷 翔平選手ら日本人メジャーリーガーをはじめ、NPB(プロ野球)で活躍する選手たちもその舞台で活躍すること、あるいはその舞台へ出場することを目標に、青春時代を過ごしてきた。
そして高校野球を終えてもさらに高みを目指し、全国26の大学野球連盟に属する大学硬式野球部の門を叩いて野球を続けていく選手も多く存在する。大学4年間で心技体全てにおいて大きく成長した選手の中には、見事にNPB入りを果たし、期待どおりの “即戦力” としてチームの中枢を担っていくのだ。
このハイレベルな大学野球では、春と秋に日本一を決める大きな大会が開催される。中でも全国26の大学野球連盟で行われる春のリーグ戦を制した大学が一同に集まる “全日本大学野球選手権大会” は、将来のNPB、MLB選手たちが一堂に会する大会としてスカウトやファンに注目をされている。
高校野球で甲子園を沸かせたスター選手、プロ注目のエースやスラッガーが目白押しの “全日本大学野球選手権大会” で、異色の大学が出場して話題になっていた。
唯一の国公立大学が持つ独特の野球観
2024年春、第73回全日本大学野球選手権大会に出場した国立大学法人和歌山大学。出場校で唯一の国公立大学である和歌山大は、近畿学生野球連盟 春のリーグ戦を制し、2年ぶり4回目の選手権出場を果たした。
1回戦、柳田 悠岐(福岡ソフトバンクホークス)を輩出した、広島経済大(広島六大学野球連盟)を相手に終盤、鮮やかな逆転勝ちを見せた和歌山大。続く2回戦では、今大会ベスト4に進出した東日本国際大(南東北大学野球連盟)に0 – 1と惜敗したものの、強豪私大相手に素晴らしい野球を見せてくれた。
受験という壁をクリアしなければ入学できない国公立大学が、どうしてNPBを目指す選手たちが集う強豪私大と互角の野球ができるのか?どうして強豪私大を選ばすに、国公立大学でアマチュア野球最高峰の舞台を目指すのか?
疑問が尽きないまま、試合の取材をする中でさらに驚いたのは、攻撃時に監督が一切サインを出さない “ノーサイン野球”。選手間でのブロックサインやフラッシュサインも一切なし。それでも盗塁を決め、エンドランを試みるなど、「意思の疎通に念力でも使っているのか?」と思うほど試合の流れを巧みに操る独特の野球観に魅せられ、南海電鉄の和歌山大学前駅に降り立つことにした。
創部100年だが浅い歴史の“朝練”
「遠くから、朝早くに本当にお疲れ様です!」と、笑顔で出迎えてくれたのは、硬式野球部の大原 弘監督だ。
今年創部100年という記念すべき節目を迎えた和歌山大硬式野球部だが、大原監督が就任したのは2008年のこと。その後、2017年に第66回全日本大学野球選手権大会に初出場すると、今年で同大会の出場は4回を数える全国屈指の強豪野球部に成長した。
「こんな地方にある大学に興味を持っていただき、ありがとうございます。気になることがあれば何でも聞いてくださいね」と、“門外不出”であってもおかしくない独特のメソッドを惜しむことなく教えていただけると聞き、始発電車でやってきた眠気も吹き飛ぶ。