ラグビーリーグワン RWC2023日本代表候補のファウルア・マキシ選手(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)-Journal-ONE撮影
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取材・文:
Journal ONE(編集部)
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運命のいたずら

ワールドカップ・イヤーで盛り上がるラグビー!2019年に開催された日本大会では、観戦で来日した海外のファンたちと共に、日本でも多くの人たちがラグビーに熱狂しました。
日本で湧き上がったラグビー熱をそのままに、NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 ディビジョン1はついにリーグ戦最終節を迎えました。

5月13日(土)、14日(日)に秩父宮ラグビー場で準決勝、5月20日(土)に国立競技場で決勝が開催される “プレーオフトーナメント”への出場をかけた負けられない戦い。
逆転でプレーオフ進出へ望みを繋ぐ東芝ブレイブルーパス東京と、2年連続の優勝を狙う埼玉パナソニックワイルナイツのリーグ最終戦は、見応え十分の筋書きのないドラマが展開されましたが、プレーオフでの対戦が決まったチーム同士が、リーグ戦最終戦で激突する運命のいたずらとも言えるマッチアップも、両チームが持ち味を存分に発揮した素晴らしいゲームとなりました。

東京 江戸川区のスピアーズえどりくフィールドで行われたこの試合。リーグ戦2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイと3位の東京サンゴリアスが対戦。人気と実力を兼ね備えた両チームの対戦は昨年の開幕戦以来。加えて、5月14日のプレーオフでの直接対決が決まっていることもあり、その前哨戦を見届けようと詰めかけたファンは当会場過去最多の5,651人。サンゴリアスの田中澄憲監督が「多くの観客を目にしてテンションが上がった。」と話し、スピアーズの立川 理道キャプテンも「チケットが売れている情報は知っていた。良い雰囲気で試合をすることが出来た。」と言ったとおり、試合前から選手たちの高揚感もMAXとなりました。

“えどりくの女神” はオレンジがお好き?

東京都の最南東にある江戸川区陸上競技場は、2023年4月から “スピアーズえどりくフィールド”と呼ばれるスピアーズの本拠地。ここの女神はオレンジがお好きなのか、スピアーズは2019年から通算17連勝中なんです!

今シーズンの最後もスピアーズの勝利をその目で見ようと、試合前からスタジアム周辺のブースは大賑わいです。スピアーズを応援する地元商店街や、知的・精神・身体他すべての障がい当事者や家族、支援者、事業者が障がいを持つ人を地域で支え研究・実践をする組織・江戸川さんしょうがいフォーラムなどが出店を出し、ファンを迎え入れています。

また、ラグビー日本代表の元キャプテンで現在は、日本テレビ系のニュース番組 “news zero“ でもお馴染みの廣瀬俊朗さんが手掛ける神奈川県鎌倉市のカフェ ”CAFE STAND BLOSSOM ~KAMAKURA~” の出張ワゴンも多くのファンで賑わっていますね。
「世界で戦ってきたアスリートとしての経験から、食べることの大切さや、食べ物の素晴らしさを分かち合いたいという思いから開業しました。特に発酵食品である甘酒にこだわった商品がオススメです。朝早くからまごころ込めて準備してきた商品がお客様に好評で嬉しい限りです。」と店員さんもたくさんのファンを前に笑顔で話してくれました。

試合前から皆さんの溢れる笑顔と美味しそうな食べ物や飲み物。こんな雰囲気作りに “えどりくの女神” もついスピアーズに微笑んでしまうのかもしれません。

ロースコアで拮抗する前半戦

試合前のブレイクタイムが終わり、いよいよ大歓声に包まれて試合が始まりました。
前半から両チームの持ち味が炸裂!重量級の選手を揃えるスピアーズが立て続けにサントリーに突っ込めば、サントリーも素早い集散でスピアーズの攻撃を止めて直ぐに反撃。フィールド中央あたりを戦場に激しく攻守が入れ替わる展開に、オレンジ一色のスピアーズファン、黒地に黄色の差し色が鮮やかなサントリーファンに分かれたスタンドのファンから代わる代わる歓声があがり、一気にボルテージが上がります。

すると後半14分、ついにスピアーズがスクラムからペナルティを奪い、SOのバーナード・フォーリ選手がペナルティゴールを成功させて3点を先制します。
更に20分すぎ、均衡を打破しようとスピアーズがキックで敵陣へ切り込むと、ボールの激しい奪い合いでスピアーズのWTB根塚 洸雅選手が脳しんとうで一時退場。中断直後の隙を突いてスピアーズがモールで10m以上を押し込んでトライ!と思われましたが、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)でトライが認められず・・・ 度重なる試合中断に、膠着した試合に集中したスタンドも固唾を飲んで再開を待ちます。

均衡が破れぬ展開が続く中、重量級の選手たち激しく当たり続けたスピアーズが更に出ます。必至に集散するサンゴリアスに当たり続けること10フェーズ。堪らず空いた出来フェンスの隙を突いてLOのヘルウヴェ選手がトライ!
フォーリー選手がゴールを成功させ、で27分10-0と一気にスピアーズに流れが傾くかと思われました。

しかし、サンゴリアスも負けてはいません。35分にスピアーズの攻撃からボールを奪うと、一気果敢に攻め込み、WTBの尾崎 泰雅選手がトライして10-5と追いすがります。

この後は、スピアーズのモール攻撃に怯むこと無くディフェンスを崩さないサンゴリアス。一進一退の攻防が最後まで続き、勝負の行方は全く予想できないまま前半を終了しました。

激しい試合展開に沸く後半戦

膠着した試合展開が続くのか? その予想を覆すビッグプレーが早速飛び出します。後半開始早々、中央付近のスクラムから抜け出したのはスピアーズ! ボールを受けたフォーリー選手が一気に抜け出します。パスを受けたWTB木田 晴斗選手がライン際を一気に駆け抜けてトライ。15-5と早々に突き放します。

しかし、サンゴリアスも16分に一度奪われたボールを再度奪い返すと、SH齋藤 直人選手がトライを決めて、キック成功と合わせて15-12と試合の流れを引き寄せ返します。
直後の18分には、ハイパントキャッチからボールを受けた木田選手が、ライン際でキックするとボールは一気にゴール前へ! このボールを追う尾崎選手とスピアーズ#21 谷口 和洋選手がゴールライン寸前で交錯しトライはなりませんでしたが、ノーボールタックルと判定されてペナルティトライ。サンゴリアスがこの試合、ついに15-19と逆転に成功します。

この時点、前のプレーで “シンビン”(ペナルティによる10分間の一時退場)で2人の選手を欠くスピアーズに数的有利なサンゴリアスが襲いかかります!
21分、トラライン目前でスクラムを組んだサンゴリアスは、ボールを持った#16中村 駿太選手がスクラムの脇を駆け抜けてトライ。15-24と試合の流れを引き寄せることに成功します。

13人という状況の中、サンゴリアスの優勢が続くかと思われた25分。数的不利を重量フォワードのラックでボールをキープしてアタックし続けるハードワークで陣地を挽回する粘り強い攻撃を見せ、会場から大きな歓声が上がります。バックス展開で相手を振ってサンゴリアスのディフェンスの隙を作ると、#22テアウパシオネ選手がディフェンスを引きずりながら意地のトライ!フォーリー選手のキックも決まって、22-24と追いすがります。

そして、後半34分にここまでプレッシャーを掛け続けたスピアースに、”えどりくの女神” が微笑みました。立て続けに当たりに来るスピアーズ攻撃陣にサンゴリアスディフェンスが徐々に下がっていきます。モールのまま一気に#19ルアン・ポタ選手が押し込んで27-24と再逆転に成功すると、#15ゲラード・ファンデンヒーファー選手が38分に自陣ゴール前でパスカットをしたまま独走のトライ!更に40分には、華麗なパス攻撃から抜け出したボールを受けた#7末永 健雄選手がダメ押しのトライ!

後半の爆発的な攻撃力を見せたスピアーズが、39-24でプレーオフ前哨戦をホーム18連勝で制しました。

プレーオフへの収穫と課題

両チームの持ち味が発揮され、プレーオフの再戦が待ち遠しくなったこの試合。試合後の会見ではそれそれが、プレーオフに向けた収穫と課題を口にしました。

「13任の局面で落ち着いてプレーし、トライを取れたことは大きい。先々を考えず一戦一戦やってきたが、良い形でリーグ戦を終えて良かった。」と話したのは、スピアーズのフラン・ルディケヘッドコーチ。
立川 理道キャプテンも、「前半から相手陣内でプレーができ、風も上手く使って戦えた。13人でもしっかり戦えたことは良かった。」と数的不利な状況でもトライを取った展開に開幕からの成長を実感します。

一方のサンゴリアスの田中監督も、「(後半38分の場面を省みて)逆転勝利を狙うなかでアドバンテージを獲得していた。それが継続されていると見て長いパスを放ったところ、インターセプトされてしまった。選手はフラストレーションがたまっていたのではないですかね…。試合を決定づけるプレーになったので、非常に悔しい。」と、チーム意思疎通が不十分であった点を反省します。「クイックにボールを動かしていくのは十分に通用した。ダイナミックなアタックができた。」と、サントリーらしさの出た試合展開には満足しているとのこと。
堀越 康介共同主将も、「全体的には良いディフェンスが出来ていたが、勝負ところの特に前半でプレッシャーを掛け続けられた場面で踏ん張れなかった。」と、ディフェンス面での成果と課題を話していました。

試合後、今季最終戦となるえどりくでは、SH井上 大介選手、CTBライアン・クロッティ選手らスピアーズを退団する選手たちのセレモニーやファンへのご挨拶など盛りだくさんの内容にファンは最後まで熱い声援を送っていました。

ゴールデンウィークを挟んだ5月14日、両チームが再び激突するプレーオフ準決勝が行われます。前哨戦で見せてくれた選手たちの素晴らしいプレーはもちろん、なお一層の熱い声援を送るファンの皆さんの応援を見ることも楽しみですね。

アクセス
スピアーズえどりくフィールド
  • 東京メトロ東西線 西葛西駅-徒歩約15分
  • JR武蔵野線/京葉線 葛西臨海公園駅-徒歩約23分

 

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