たしかに、単なる力比べとなると比較的小柄な日本人は不利なことが多いと思います。だからこそ、「体格差を乗り越える為の工夫をする」という意図があって柔道衣が作られたのでした。何気なく着て稽古をしていましたが、服も使い方によって戦いの幅が広がると知り、嘉納師範はそこまで深く考えられて柔道を作られたのだと感心しました。
他にも向井先生から、嘉納師範の教えをまとめた心得のパンフレットや、固め技のやり方や指導法が記載されたパンフレット、嘉納師範の言葉が書かれた冊子をいただきました。読んでみると、講道館柔道の遺訓や根本義、心得など初心者にもとても分かりやすく書かれています。柔道が勝ち負けだけの競技ではなく礼儀などの人間力を高めることができる奥が深いスポーツだということをとても実感できる、濃い内容になっていました。
初心者でも簡単に出来る技を習得
2日目以降は毎日、前日の復習を一通りした後に新しい技を習得していきます。
「講道館柔道で最も得意としているのは足技です。そのうちの基本の足技の一つ、”足払い”は小指でゴミを払うイメージで重心の移動を上手く使い、逆足方向へ足を横に払います。」と向井先生が言い、足の小指が畳をシュッと勢いよく、かすめる音をさせて足を払う見本を見せてくれました
足を後ろに少し上げて準備をしてから同じように払うと”燕返し”という技。この足払いの動きは短時間で習得できて、全く難しいものではありません。
毎日復習を続けていき、5日目にはついにレベルアップ。より実践に近い状態にするため、向かい合う相手の肩を持ち、前後に歩きながら足を掛け合います。最初はタイミングが合わず足が空振りになったりとなかなか難しいです。
「単純に動作を繰り返してもなかなか身につきません。それぞれの動作が技にどう繋がるかをイメージして行うことで習得時間が格段に早くなります。」と向井先生。動きとイメージを別物として考えてはいけないということは今までに何度も耳にしましたが、いざ相手を前にイメージをしてやってみると難しいものです。何回かテンポをずらして相手を崩すことができましたが続かず…まだまだ稽古が足りませんね。
実は無意識に出来ている!?・体さばき
次に教わったのは”体さばき”です。技のような名前で言われると何それ?と考え込んでしまいますが、日常の無意識の中でも私たちは”体さばき”ができていると言います。何かを避けるときなど、スッと無意識に自分の体の位置や向きを変える動作。これが柔道でいう”体さばき”なんだそうです。
基本となるのは「前さばき」「後ろさばき」「前回りさばき」「後ろ回りさばき」の4つです。左右の足でやることで8種類の動きになります。この動きを子供でも習得できるように考案したのが歌に合わせて体さばきをする方法。 ♪Foorinの「パプリカ」や♪フランスで人気の「オー・シャンゼリゼ」を向井先生が素敵な声で歌いながらそのリズムに合わせて体を動かします。歌と同時に8つの体さばきを終えた向井先生に思わず拍手を送り、初心者コースは笑顔に包まれました。
「スピードを上げてできるようになると、普段の試合でも動けますよ。」と教えてもらい、最初はリズムに乗れず苦戦ばかり…しかし、慣れてくると参加者全員がスムーズにできるようになりました。”体さばき”は柔道の中の技だけではなく日常に活かすことが出来る動きなので別物として捉えないことが大切だと向井先生から教えていただきました。
柔道で大事な技の一つ・受け身
「”受け身”にはにはどんなイメージがありますか?」と最初に向井先生から質問され、やり方も分からない私達から見たイメージは大きな音で畳に落ち、痛い、転がる、倒れるといった曖昧なものです。
「”受け身”で大切なのは頭(後頭部)を守ることです。」と教えてもらった後に始まったのは背中でコロコロと揺り籠のように転がる動きで後頭部を守る練習。そして、蹲踞(そんきょ)の姿勢から背中側に転がり帯がついたタイミングで両手で畳を叩き衝撃を抑える”後ろ受け身”の練習。