心変わりの早いマスメディアに頼ることなく、オリンピックレガシーとして地域とゆかりのアスリートが触れあう機会、その競技を体験したり観戦できる機会をいかに創出できるか。課題が見えた前回大会の知見を活かし、オリンピックパリ大会で盛り上がった炎に薪を焼べ続けて欲しいと改めて感じた。
主役の登場に鳴り止まぬ温かい拍手
いよいよ須崎 優衣選手が登場すると、会場からは大きな歓声と鳴り止まぬ温かい拍手が須﨑選手をいつまでも包み込む。満面の笑みで本郷谷市長から花束を受け取った須﨑選手は、四方を取り巻く多くの来場者に向けて何度も手を振り頭を下げる。
収まることのない拍手のシャワーを司会が一旦収めると、松戸市消防音楽隊から「栄光の架け橋〜ゆず」の生歌と生演奏をプレゼント。オリンピック東京大会、パリ大会と2大会連続でメダルを獲得したその功績を称えると、椅子に座った須﨑選手は歌詞に何度も頷いては360度見渡す限りの来場者で埋まった会場をゆっくりと見渡していた。
須﨑選手は、「こんなにたくさんの方々が、地元の松戸市で応援してくれていたんだなぁと改めて感謝をしながら皆さんのお顔を見ていました。楽曲は、私のこれまでの競技人生と重なる部分も多かったので、これまでを振り返りながら聴かせていただきました。とても素晴らしい演奏で心が震えました」と、温もりある地元からのプレゼントを喜んでいた。
主役が会場を盛り上げるトークショー
続いてのメニューは、須﨑選手のトークショーだ。トークショーの盛り上がりは、MCの振りや用意されたシナリオにも左右されるが、一番大事なのは主役のトーク力。しかし、須﨑選手のトークショーに限ってはその心配は一切不要で、主役自らが盛り上げてしまう驚きのトーク力に会場の皆さんはどんどん引きこまれていった。
冒頭、「ただいま〜」と笑顔いっぱいに手を振って登場してきた須﨑選手の、声優かと思うほどの爽やかで透き通った声と、アナウンサーのような滑舌の良い発音に、会場からは大きな拍手が鳴り響く。手を振ったり、用意した応援うちわや、須﨑選手のタオルを振り返して「おかえり~」と返す声も四方から沸き起こった。
須﨑選手の試合を生観戦するため、実家のある六実地区で深夜に行われたパブリックビューイングの様子が映し出されると、「(パブリックビューイングで)応援して頂いていたことは知っていました。幼なじみの顔も見えて、本当に地元って良いなぁと改めて感じました」と、笑顔で振り返りつつ、スライドの中に見付けた幼なじみを紹介して笑いを誘う須﨑選手。
須﨑選手と同じ松戸市出身のオリンピック出場アスリート、村竹ラシッド選手、平尾 知佳選手(女子サッカー)のビデオレターが紹介されると、「松戸からはたくさんの選手がパリ五輪に出場していたのですね」と、須﨑選手も感心しながら市民の皆さんと一緒にメッセージを聞いていた。
苦しいながらも収穫のあった五輪
「目標の金メダルは取れませんでしたが、皆さんから寄せられたたくさんの応援メッセージを読ませていただき、もう一度気持ちを切り替えることができました。銅メダルを取れたのは皆さんのおかげです」と、パリでの戦いを振り返る須﨑選手。
「パリに居るときは、銅メダルに終わった自分を認めてあげることができなかった。その後、SNSなどで皆さんから『銅メダルおめでとう』『良く頑張った』などとたくさんのメッセージを投稿してくれたものを読んで、やっと自分を認めてあげることができました」と、苦しかった胸を内を救ってくれたのは応援の力だったと明かすと、会場からは再び大きな拍手が送られた。
オリンピックパリ大会の雰囲気については、「パンデミックの東京大会と違い、パリ大会はたくさんの観客で溢れていました。これが本当のオリンピックなんだなぁと。これからの競技人生にとって良い経験のできた大会でした」と話す須﨑選手。
「初戦は『何としても連覇』と自分でプレッシャーを掛けすぎて、いつものレスリングが出来なかった…でも、気持ちを切り替えて銅メダルマッチは自分の気持ちを開放して戦えました」と、トップアスリートならではのメンタルを切り替えについても触れていた。
滅多に聞けない自分ネタも披露
パーソナルを深掘りするトークではレスリング好きと言われているエピソードを披露。「食事中もリラックスタイムも、レスリングの試合動画を観ていますね。友だちとじゃれ合う時に、軽くレスリングの技を掛けてしまうこともあります(笑)。好きというか日常に溶け込んでいるといった感じですかね」と日常生活の一幕を須﨑選手が紹介すると、会場からは驚きと感心が入り交じったどよめきも起こる。