車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 優勝でパリパラリンピック出場権を獲得した日本代表の選手たち-Journal-ONE撮影
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昨日の試合後、「出だしは気負ってしまった。」と話していた橋本選手の落ち着いたプレーが光ります。忍者のように神出鬼没なポジションチェンジが自慢の小川選手が、しっかりとフォローに来るタイミングを待ってから攻撃に移ったり、島川選手と息を合わせてボンド選手からボールを奪ったりと、オーストラリアに付け入る隙を全く与えません。

オーストラリアも何とかモメンタム奪い返そうと、ボールを持った島川選手に襲いかかりますが、じっくりとディフェンスを引きつけた島川選手が遠くのスペースに入り込む橋本選手に超ロングパス!豊富な攻撃のバリエーションに、会場のボルテージは一気に上がっていきました。車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 日本vsオーストラリア戦 日本代表の急成長ライン 小川仁士選手の鋭いポジショニング-Journal-ONE撮影

【3・3・1.5・0.5ライン】#21池選手(3.0)、#13島川選手(3.0)、#22乗松 聖矢選手(1.5)、#2 長谷川選手(0.5)

昨日の試合で最も激しい点の取り合いとなったこの時間帯に登場したのは、やはりこのラインでした。まだ体力が十分にある両チームの選手たちが、コート中央付近で見せてくれた激しい攻防を制して、モメンタムをしっかりと保つことを期待されたラインです。ところが!流石のオーストラリアもこの時間帯の対策をしっかりと立ててきたようです。車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 日本vsオーストラリア戦 日本代表が誇る池池コンビこと、池透暢選手-Journal-ONE撮影

パス供給をするローポインターの選手を早めにフォローし、「日本代表の思惑には乗らないぞ!」と言わんばかりのバット選手が獅子奮迅の働きを見せます。

池選手、島川選手の動きも決して悪くはありませんが、バット選手の動きに焦ってターンオーバーを許し、15-15のイーブンに戻されて前半戦終了となりました。

Game5(韓国戦)のミドルポインターの活躍が活きる

ここで、日本代表の本日の1試合目を振り返ってみましょう。この試合展開がこの後のオーストラリア戦後半に繋がってくるキーにもなるため、時間を巻き戻して振り返りたいと思います。今日の日本代表のゲームスケジュールは、10時30分から韓国戦、19時からオーストラリア戦と試合間隔が非常に長く、コンディションの調整が懸念されていました。こういったスケジュールでは、先の韓国戦でどれだけ消耗を抑えられるかが重要になります。

オーストラリア戦でハイポインターが序盤から良い動きを見せられた要因として、韓国戦で活躍したミドルポインターについて解説しておきたいと思います。#4羽賀 理之選手(2.0)と#14中町 俊耶選手(2.0)です。車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 日本vs韓国戦 日本代表の羽賀理之選手と若山英史選手のオフェンス-Journal-ONE撮影

今大会の韓国代表メンバーについては、最初のレポートで紹介したとおり2つの懸念点がありました。“いつも代表で出てくる主力選手がいないためハイレベルな試合に対応できるのか” “招集選手が7人しかいないため、長丁場の4日間を戦え抜けるのか” というポイントです。それが早くも2日目で現実のものとなってしまったのです。

ニュージーランド、オーストラリアの屈強なハイポインターの選手たちを抑え込めるハイポインターの駒が少なく、1日目で相当疲弊していた韓国代表。この日本戦では既に対抗する余力は残っておらず、第1ピリオドから20-2と日本代表が大きく差を付ける展開となります。車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 日本vs韓国戦 日本代表の池透暢選手のボール支配-Journal-ONE撮影

そこで日本代表は第1ピリオド後半からClassの合計が8点に満たないラインを編成し、ハイポインターを休ませる作戦に出たのです。この試合で好守のキーとなったのが、ミドルポインターの羽賀選手と中町選手。ハイポインターのコンビと比べると、2.0~2.5も少ないラインでも質を落とさないゲーム展開を見せてくれました。

第2ピリオド以降、殆どのラインに参加した羽賀選手は世界屈指のリーチを活かしたキャッチングと、高校時代に野球部で培ったスローイング力を活かし、中町選手にロングパスを通して楽に得点を重ねていきます。両選手ともボールのハンドリングがとても上手いため、ハイポインターほどのスピード感が無くても着実にボールを運んでいきます。車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 日本vs韓国戦 日本代表の中町俊耶選手のボール支配-Journal-ONE撮影

「ボールを持っている選手に対しハードにプレッシャーを掛ける。自分たちがやるべきことをやり続けるのはどのラインでも変わりません。」と試合後に話してくれた中町選手ですが、橋本選手とのコンビネーションは最高!お互いに何も確認すること無く、協調して得点を重ねていきます。それもその筈、中町選手と橋本選手は同じ “TOHOKU STORMERS” というクラブチームで活動しているからなんです。「これだけ大きな声援を背に受けてプレーできたのは本当に力になりました。」と話す中町選手。車いすラグビー アジアオセアニアカップ2023 日本vs韓国戦 試合後に観客の歓声に感謝する日本代表の中町俊耶選手-Journal-ONE撮影

AOC終了後もクラブチームでの活動が続きますので、このコンビネーションが見られるクラブチームの試合も観戦していただいて、大きな声援を中町選手に送って欲しいですね。

Game5(韓国戦)では緊急事態への対応も

それともう一つ。この日、クラブチーム “AXE(アックス)” でチームメイトである#3 倉橋 香衣選手(0.5F)が欠場となりました。昨日のオーストラリア戦で、バット選手と激しいコンタクトをした際に、軽い鞭打ちのような症状になったとのこと。こうなると、他のローポインターがフォローする機会が増えますし、ラインも一部組み直す必要が出てくる緊急事態です。そのため、この日は#1 若山選手、#9 今井選手、#23 小川選手の活躍が期待されるところです。

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