スポーツタウン川崎はサッカーもソフトも熱い‼
Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)は、優勝争いや昇格、残留争いも熾烈となっていますが、女子ソフトボールもこれからが熱くなるんです‼
世界最高峰の国内トップリーグ “JD”リーグ” は、負けたら終わりのノックアウトラウンドが開幕。2日目となった11月12日(日)の神奈川県川崎市の等々力野球場は朝から小雨の降り続き、試合開始前の気温は9℃! 秋を通り越して初冬の寒さが身に凍みます。
西地区3位の “SGホールディングス ギャラクシースターズ” と、東地区4位・ワイルドカードでの進出となった “デンソー ブライトペガサス” のプレーオフ1stラウンドに続いては、地元・神奈川県を本拠地とする東地区2位の “日立サンディーバ” が栃木県を本拠地とする “ホンダリベルタ” を迎え撃つ一戦。
地元開催に駆け付けたサンディーバ応援団は、試合開始前から入場口で長蛇の列を作り、2階席までギッシリ! 対するリベルタ応援団も、負けじと球場を埋め尽くして熱戦の開始を待ちわびています。
泰然自若で地元での必勝を期す
「今日は本当に寒いですね‼」とグランドに入るや否や、Journal-ONE編集部に話しかけてくれたのは、サンディーバの村山 修次監督です。
「リーグ戦が終わって2週間、技術、戦術といった面については、特別何かに注力しませんでした。とにかくコンディションをこの日に合わせることだけにフォーカスし、いつも通りで試合に臨もうと。」と、いつも通りの穏やかな表情で話してくれます。
後半、最後までもつれた東地区の順位争いでは、最後に怒涛の7連勝! 混戦を早々に抜け出しプレーオフへの進出を決めたチーム状態の良さが自信に表れているのかと聞くと、「負けられない戦いが続く中でも選手たちは落ち着いてプレーしていました。本当に凄かったですよね! 見ている私はハラハラしていましたけど(笑)。」と、選手たちの成長に目を細める村山監督。
試合開始前から2階席まで続々と詰めかける地元の大応援団を見ながら、「地元開催では本当にたくさんの方が応援に駆けつけてくれます。そのお陰もあって、地元開催では今年負けていないので、いつも通りのプレーで臨みます。」と、試合への意気込みを話してくれました。
両エース好投にベンチワークで挑む! –序盤
サンディーバの先発は、長谷川 鈴夏投手です。坂本 実桜投手、東京2020のメキシコ代表・テイラー・マクイリン(Taylor MCQUILLIN)投手、田内 愛絵里投手、佐藤 真咲投手と強力な投手陣の中、今シーズンのチーム最多投球回数でプレーオフ進出に貢献した左腕に大事な一戦が託されました。
一方のリベルタ先発は、東京2020の銀メダリスト! 現在もアメリカ代表のエースとして活躍するアリー・カーダ(Ally・CARDA)投手が順当にマウンドに上がります。実は、カーダ投手はチリのサンチアゴで開催された、“2023 Pan American Games(2023年パンアメリカン競技大会)” にアメリカ代表として出場。11月4日(現地)の決勝戦で1安打完封勝利を挙げて金メダルを獲得したばかりなのです! 地球の裏側から戻ってきて間もないカーダ投手の起用に、「映像で投げる姿を見て状態が良いことは確認していました。帰国してから間もないですが、コンディションも問題なかったので。」と、加藤 一秀監督は世界中で年中プレーするカーダ投手の体調管理に絶対的な信頼を寄せています。
初回、監督の期待に応えた両先発投手は、3者凡退で抑える無難な立ち上がりを見せて投手戦の予感を漂わせます。この序盤の試合展開を読み、先に動いたのはサンディーバでした。
2回の先頭・山内 早織選手が、カーダ投手の決め球である低めのドロップを見極めて四球で出塁すると、「大事な試合。絶対に先制点が欲しかったので、とにかく先に仕掛けていこうと思っていました。」と振り返っていた村山監督は、即座に代走・山本選手を送ります。
更に1死1、2塁と、この試合両チーム初めて得点圏に走者を進めたところで今度は女鹿田 千紘選手に代えて “サンディーバの二刀流” 田内選手を打席に送ります!
2階席まで膨れあがった地元・サンディーバの応援団から大きな声援のプレッシャーを受ける中、リベルタのエース・カーダ投手がチェンジアップで田内選手を三振に切って取ると、続く日米対抗2023で活躍を見せた唐牛 彩名選手もサードゴロに打ち取りピンチを脱します。
激しく動く試合展開に熱狂! -中盤
静かな投手戦から試合が動き出した3回、ピンチを脱したリベルタが電光石火の攻撃を見せてくれました。
「先頭打者として、塁に出ることだけに集中して打席に入りました。」と振り返った渡邉 瑞貴選手が、インサイドの速球を思い切り振り抜くと、打球はライトスタンドに弾丸ライナーで飛び込みました! 「チームのみんなの思いがボールをスタンドまで運んでくれました!」と、後半5連勝でプレーオフ進出を勝ち取ったチームの雰囲気を象徴させる一発に、今度はリベルタ応援席からも大きな歓声が巻き起こります。
更に、内野安打の下村 歩実選手を塁に置き、打席に入るはチームの精神的支柱・大工谷 真波選手です。「普段はあまり動かさないのですが、後半戦を勝ち抜くために思い切って替えました。経験ある大工谷選手の試合を読む力が結果に活きていますね。」と話す加藤監督の打順変更により、5番から1番に上がった大工谷選手は、「私はどの打順でも気にならないタイプなんです。自分が打っているからチームが勝っている訳ではないですよ(笑)。」と言いながらも、この打順変更以降にチームは5連勝中! 渡邉選手の先制アーチで勢い付いた場面で巡ってきた打席に、何かリベルタの運を感じます。
「送りバントを失敗した後なので、ここで自分が何とかしないと流れが行ってしまうと思い、打席に集中しました。」と話す大工谷選手が豪快に振り抜いた打球は、まさに打った瞬間それと分かるツーランホームラン! 電光石火の攻撃で、好投手・長谷川投手から3点を奪いました。
あっという間に3点ビハインドとなった3回裏、サンディーバも負けていません。
打順良く1番の杉本 梨緒選手から始まる場面ですが。「ランナーを貯めたい、点差は離れている、ここはじっくりボールを見極めて。」と後手に回りそうな展開・・・ しかし、泰然自若のサンディーバの選手たちはいつもの自分たちらしいバッティングを貫きます。
杉本選手、2番の山口 みどり選手がファーストストライクをセンター前に弾き返し、無死1、2塁と反撃の狼煙を上げると、続く日本代表の常連・坂本 結愛選手もファーストストライクをしっかり捉えた痛烈な打球もセンターを襲います。これはライナーアウトとなりますが、4番・森山 遥菜選手もセンター前に弾き返して1死満塁のチャンスを作ります。
この同点のチャンスに打席に入るのは、リーグ戦ホームラン6本と一発のある山内 早織選手です。3点という点差を考えると、定位置でアウトを確実に取りたいところですが、リベルタ内野陣は前に詰める攻めのディフェンス。このプレッシャーに山内選手は強い打球で1、2塁間を抜けるタイムリーヒットを放ち1点を返します!
しかし、ここでサンディーバに痛恨の走塁ミス。1点でも早く返したいと進塁を焦った森山選手が二塁オーバーランで挟殺となり、2死2、3塁とアウトをひとつ与えてしまいます。結局、続くハンナ選手が死球で歩いて満塁となりましたが、カーダ投手が渾身のチェンジアップで藤森 捺未選手を三振に切って取り、ピンチを脱しました。
目まぐるしい主導権争い -終盤
2回途中から長谷川投手を引き継いだ、キャプテン・坂本 実桜投手は4回以降リベルタ打線に的を絞らせず、低めを中心に打たせて取る投球で一人のランナーも許しません。
すると5回、何としても先頭を出したいサンディーバの坂本 結愛選手にアクシデントが発生します。4月のリーグ戦で右手を死球で骨折… 前半戦の殆どを棒に振った坂本選手にカーダ投手渾身のインハイ速球が襲いかかり、再びその右手を直撃。ノーアウトで走者を出したものの、ベンチに下がった坂本選手の状況が心配されます。
代走の杉浦 穂華選手が盗塁を決め、ハンナ選手が四球で歩いたもののアウトカウントは既にふたつ。3回の2死満塁のチャンスではチェンジアップで三振に倒れていた藤森選手は、「今シーズンは良い場面で回ってくる場面が多く、狙い球をしっかり定めて打席に入るのですが、あの球(チェンジアップ)は予想外でした。次は何とかしたいと、同じ左打者の山口選手から配球の情報を貰って打席に入りました。」とリベンジを誓い打席に入ります。
狙いのアウトコースを思い切り踏み込んでレフトへ放った大きな飛球は、前進していたレフトの頭を超える同点の2点タイムリーツーベース! 塁上で大きくガッツポーズする藤森選手に、サンディーバの応援団も総立ちで自然と沸き起こる “藤森コール”。試合の流れは一気にサンディーバに傾きました。
両者譲らず意地の攻防 –延長タイブレーク
両チーム、多くの選手が試合の流れを左右するビッグプレーを連発する中、ついに決着は延長タイブレークへと突入しました。打者は前の回からの続きですが、走者を2塁に置いての攻撃開始となるため、得点が入りやすくなるタイブレーク。先ずはリベルタの攻撃陣が魅せました。
先頭の9番・安山 涼香選手がバントで三塁に送る作戦で確実に1点を取りに行く加藤監督は、続く新打線の核・大工谷選手に託します。4回以降パーフェクトピッチングと好投する坂本 実桜投手の投球術に阻まれた大工谷選手の打球はサードの名手・坂本 結愛選手の前へ。しかし、軽快に捌いた坂本選手がファーストに投じた送球が何と悪送球! 2塁から下村選手が生還し、思わぬ勝ち越し点を挙げました。
「5回の右手死球の影響があったかも知れません。本人は大丈夫と言っていましたが、骨折した場所だっただけに、ベンチがもう少しケアすれば良かったかも知れません。」と、今シーズン僅かに失策1の名手に身体を気遣う村山監督。
何とか最少失点で切り抜けたい坂本 実桜投手は、2死三塁までこぎ着けたものの、寒さの中で細心の注意を払って投げ続けた体力は限界に近づいていました。3番・木村 愛選手に上手くレフトに運ばれて更に得点を与えると、4番・塚本 蛍選手を歩かせピンチは続きます。
ここで打席に入るのは、「追加点が欲しい場面でしたが、前の打席の反省を活かして狙い球を絞って臨みました。」と話してくれた長谷川 優理選手です。2-2からの勝負球、インサイドに食い込む速球を上手くバットに乗せた打球は高々と舞い上がりレフトスタンドへ飛び込むスリーランホームラン! 一気呵成の攻撃で何と5点を奪いました。
「大量失点で追い込まれていましたが、誰ひとりとして諦めている選手はいませんでした。円陣でも6点取り返して逆転しようと。どこまで選手がやってくれるのか楽しみに最後の攻撃に臨みました。」と、村山監督が期待したサンディーバの選手たちが今度は怒濤の反撃を見せます。
先頭の唐牛選手が三振に倒れたものの、今シーズン怪我に悩まされた1番の杉本 梨緒選手が左中間に豪快な一発! この試合、リードオフマンとして全打席出塁を果たした杉本選手が、“プレーオフの起爆剤” として打線に火を付けました。続く山口選手がこの試合2本目のヒットで出塁すると、リベルタの加藤監督はリーグ戦で “ノーヒット・ノーラン” を達成したジェイリン・フォード(Jailyn FORD)投手をマウンドに送り込みます。
点差は3点あるものの緊迫した場面での緊急登板にジェイリン投手の制球が乱れ、坂本選手、森山選手が四球を選んで1死満塁とチャンスを広げます。点差3点、一発出れば逆転サヨナラの展開にサンディーバの大応援団も総立ち! 打席に立つ長距離砲の山内選手に声援を送ります。
1-2と追い込まれた山内選手でしたが、決して無理せず外角高めをレフト前へ弾き返して2点差。更に打席には、アメリカ代表の強打者・ハンナ・フリッペン(Hannah FLIPPEN)選手が入ります。ここでようやくスイッチの入ってきたジェイリン投手は、沈む球でパワーあるハンナ選手をセンターフライに切って取りツーアウトとしますが、坂本 結愛選手が生還する犠牲フライとなり、ついに1点差までサンディーバが詰め寄りました!
2死一、二塁と長打が出ればサヨナラのチャンスは続き、打席には藤森選手に代わり守備固めに入っていた高瀬 沙羅選手が向かいます。同点か?逆転サヨナラでサンディーバか?はたまた抑えきってリベルタか?
2時間半にわたる熱闘の結末を左右する “グランドフィナーレ” となったジェイリン投手と高瀬選手の対決に、両軍のベンチはもちろん、両チームの応援団、観客も大きな拍手と歓声を挙げてスタジアムが一体となって盛り上がります!
一球一球にスタジアムが沸いたカウントは2-2。ジェイリン投手が投げ込んだ渾身のアウトコース速球に高瀬選手のバットが空を切って試合終了! ジェイリン投手と抱き合うカーダ投手、ふぅ~っと大きく息を吐いた加藤監督、やり切った表情の両軍選手たちにスタンドからは惜しみない拍手が送られました。
死力を尽くして –日立サンディーバ
試合後、村山監督は「1点差ゲームになると予想していましたが、こんなに打ち合いになるとは思ってもみませんでした。」と、2時間半を超える激闘を振り返ります。「長谷川投手も調子が良く、打線も常にチャンスは作れていました。1点差か2点差で継投するとも伝えていたので、坂本投手もしっかりと準備をしてくれました。選手たちは本当に良く戦ってくれました。」と労を労います。
5回に同点に追いついた場面を振り返ると、「試合の流れを振り返ると、あそこで逆転しておかなければならない展開でしたね。」と残念そうに振り返りつつ、「前半戦は怪我人が出て、万全な状態で戦えることがほとんど無かった中、キャプテンの坂本選手を中心に良く頑張ってくれました。あと1試合、2試合やらせてあげられたら・・・もっと良い試合をお見せできたかなと。1点差ゲームを落としたのは監督の力量です。」と、今シーズンを総括してくれました。
「終わった瞬間は、やり切ったと。終わっちゃったなぁと。」と、ロングリリーフで好投した坂本 実桜キャプテンが笑顔を見せつつ複雑な心境を教えてくれます。投手という立場のため、選手たちを試合中に鼓舞することができない坂本キャプテンですが、「点を取っても取られても淡々と投げ続けようと振る舞っていましたが、円陣を組む選手たちの気合いを見て頼もしく感じていました。」と、猛烈な追い上げを見せたサンディーバ打撃陣に賛辞を送ります。
「強い日立をお見せすることはできたと思います。キャッチャーの女鹿田選手が本当に投手陣を引っ張ってくれて・・・ 自分を成長させてくれました。」と、感極まって言葉を詰まらせる場面もあった坂本キャプテン。「この粘り強さを、日本一を決める戦いでも見せたい。来年は絶対に、絶対に最後まで戦えるよう。オフに課題を整理して取り組んでいきます!」と、笑顔に戻って力強く答えてくれました。
激闘を制した選手に感謝 –ホンダリベルタ
「ホントに・・・(笑) ホッとしているというか、自分の采配で難しい展開にしてしまったのですが、選手たちが本当にカバーしてくれて感謝しています。」と、加藤監督が思わず笑って試合を振り返り始めます。「日立さんがカーダ投手対策をしっかりしてきていて、投手陣も素晴らしので、狙い球を絞り直して行こうと話しました。」と本塁打攻勢で先制したシーンを振り返ります。
「今週は1試合だけなので、カーダ投手からジェイリン投手へのスイッチは考えていましたが、カーダ投手の好投に継投のタイミングが後手に回ってしまいました。」と、チリでの国際大会から戻って直ぐでも好投したカーダ投手、緊急登板で抑えきったジェイリン投手の熱投に感謝の意を伝えます。
「リーグ戦ではビックカメラさんに3戦全勝していますが、リーグ優勝の試合巧者。トーナメントは何が起こるか分かりません。ホンダらしいプレーを見せて挑戦者として泥臭く、今日と同様に応援してくれるたくさんの皆さんと一緒にダイヤモンドシリーズを戦いたいです。皆さん、是非球場で一緒に戦って下さい!」と、ダイヤモンドシリーズへの決意を話してくれました。
どちらが勝ってもおかしくない接戦を制したリベルタは、11月18日(土)の10:30! 埼玉県の朝霞中央公園野球場で行われる “ダイヤモンドシリーズ” に進み、同じ東地区で2年連続優勝の “ビックカメラ高崎ビークイーン” に挑戦します。
スタジアムが一体となって盛り上がる、女子ソフトボール最高峰のリーグチャンピオンを決める戦いは観戦必至! スポーツの秋の締めとして、週末は是非皆さんで朝霞中央公園野球場を訪れてみては如何でしょうか?
プレーオフ1stラウンド SGH vs デンソーのレポートも是非!
プレーオフ2ndラウンド 豊田自動織機 vs デンソーのレポートも是非!!