ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 大垣ミナモ戦を前にリラックスするホンダリベルタの強力打線を担う塚本蛍選手、木村愛選手、菱谷香実選手-Journal-ONE撮影
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世界から日本に舞台は移る

9月2日、女子ソフトボールの国内トップリーグ・JDリーグの後半戦が本格的に始まりました。全16チームが東西地区に分かれてレギュラーシーズン29試合を戦う選手たちは、日本人ばかりではなく国際色豊か。

オリンピック・東京大会(以下、東京2020)で金メダルを獲得した日本代表選手たちはもちろん、銀メダルのアメリカ代表やメキシコ代表、オーストラリア代表、イタリア代表といった各国の一流アスリートが集結する世界屈指のハイレベルを誇るリーグなのです。

2028年のオリンピック・ロサンゼルス大会での競技種目復活を目指すソフトボール(男子は野球)は、来年夏に第17回 ワールドカップを開催し、その魅力を全世界にアピールしていきます。これに先立ち8月には、ワールドカップ本戦の出場権をかけた予選ラウンドがアイルランドとイタリアを舞台に開催され、その舞台に招集された各国出身のJDリーガーたちが、2ヶ月ぶりに日本に戻ってきたのです。日米対抗ソフトボール2023 山口県岩国市の絆スタジアム(愛宕スポーツコンプレックス)で行われた第1戦で反撃のスリーランホームランを放った日本代表・塚本蛍選手(ホンダリベルタ)-Journal-ONE撮影

世界から舞台を日本に移し、10月29日までのレギュラーシーズンで上位に位置したチームだけが戦えるプレーオフ、ダイヤモンドシリーズへの切符をかけて熱い戦いを繰り広げます。

打線の復調に手応え

前半戦19試合を終え、11勝7敗で東地区2位に付けている “ホンダリベルタ” が、同地区8位の “大垣ミナモ” と戦うためミナモの地元である岐阜県大垣市にやってきました。

昨シーズンは、東地区4位からワイルドカードでプレーオフに進んだリベルタ。西地区4位の “SGホールディング スギャラクシースターズ” を下し、ダイヤモンドシリーズまであと一歩に迫りましたが、“豊田自動織機シャイニングベガ” に惜敗してその夢は叶いませんでした。

コーチとしてリベルタベンチで悔しい思いを経験し、今シーズンは新監督としてリベンジに燃える加藤一秀監督。大事な局面に向けたサマーブレイクでのチーム強化に手応えを感じています。女子ソフトボール JDリーグ後半戦開幕| ホンダリベルタを率いる加藤一秀監督-Journal-ONE撮影

「サマーブレイク中は、打撃を中心に強化してきました。」と開口一番、いつもの明るく爽やかなトーンで切り出した加藤監督は、「前半戦は1点差ゲームが多く、守り勝つソフトボールが多かったのですが。後半戦やプレーオフでは得点力が無いと勝ち進めないため、とにかく得点力を高めるための練習を意識してきました。」と、その強化に手応えを感じている様子です。

「前半戦になかなかエンジンの掛らなかった主砲の塚本選手も、ここ大垣での交流戦から尻上がりに調子を上げ、この夏は日本代表として第17回 ワールドカップ予選ラウンドでは打率4割超え、続く日米対抗ソフトボール2023でも本塁打を放つなど。好調を維持してくれています。塚本選手の前に出塁し、出塁した塚本選手を還すといった打線としての繋がりを強化をしてきました。」と、日本代表の塚本 蛍選手を中心とした得点力アップを後半戦のポイントに挙げる加藤監督。女子ソフトボール JDリーグ後半戦開幕| ホンダリベルタの打線を牽引する日本代表の塚本蛍選手-Journal-ONE撮影

盤石の投手陣にも新たな芽が

一方の投手陣の強化にも抜かりはありません。「二枚看板のカーダ投手(Ally CARDA)は 第17回 ワールドカップ予選ラウンドで。フォード(Jailyn FORD)投手は アメリカのプロリーグで、それそれ結果を残して状態が良いです。2人とも1週間前に帰国してくれたので、実際にこの目で両投手の好調さを見ることが出来たのも有り難いですし、連係プレーもしっかりとおさらいできました。」と、日本一奪取に欠かせない両投手の献身的な行動に目を細めます。女子ソフトボール JDリーグ後半戦開幕| ホンダリベルタの投手陣を牽引するアメリカ代表のAlly Cada(アリー・カーダ)投手-Journal-ONE撮影

加えて、この夏一番の成長を遂げた選手として名前を挙げたのは、「秋豆 朱音投手です。この夏、一番伸びた選手じゃないですかね。オープン戦でもきっちり結果を出してくれましたし、カーダ、フォードの二枚看板に次ぐ投手になってくれると期待しています。今日も機会があれば投げさせたいです。」と、秋豆投手に大きな期待を寄せる加藤監督。女子ソフトボール JDリーグ後半戦開幕| ホンダリベルタの投手陣期待の新星・秋豆朱音投手-Journal-ONE撮影

試合後半の粘り強い戦いが特徴のリベルタ。プレーオフに向けては、今話題のスポーツ・バスケットボール日本代表の戦いを例に出し、「東地区は2位以下が団子状態なので、1試合たりとも気が抜けません。ウチは試合後半に粘りを見せるのですが、采配を振るう身からすれば心臓に悪いですよ。(FIBAバスケットボール・ワールドカップを)観ている方からすると本当に面白い試合ばかりでしたが、日本代表のホーバス(Tom Hovasse)ヘッドコーチの心情に自分を重ねてしまいます。出来るならもう少し最初からやってくれれば・・・なんてね(笑)。」と冗談交じりに話していた加藤監督ですが、試合前の円陣で自らが先頭に立って満面の笑みで選手たちを鼓舞する姿は、”監督” と言うよりも “選手たちの優しいお兄さん” といった感じで、とても良い雰囲気です。

大黒柱が試合を作る開幕戦前半

リベルタの先発は、今シーズン好調のフォード投手です。前半戦は防御率1.47で同僚・カーダ投手に次ぐ東地区2位、勝ち星は7勝と同地区トップを走るフォード投手は、負け数が僅か1しかない安定した投球が光ります。ミナモ戦は2戦2勝と相性の良さも買われての開幕投手を務めます。女子ソフトボール JDリーグ後半戦開幕| ホンダリベルタの投手陣を牽引するアメリカ代表のJailyn FORD(ジェイリン・フォード)投手-Journal-ONE撮影

一方のミナモの先発は、左腕の中山 日菜子投手。左打者の多いリベルタ打線がどう対応するかに注目が集まります。

先ずは初回、先頭の左打者・大川 茉由選手がいきなりライト前にヒットを放ちチャンスを作ると、続くキャプテン・下村 歩実選手には送りバントのサイン。「打線としての繋がり」を強化した効果が早速発揮します!下村選手は、ダッシュしてくる中山投手とサードの須藤 麻里子選手の間に絶妙な打球を転がして自らも出塁。ビッグチャンスを作り出しました。ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕戦の大垣ミナモ戦で先頭打者ヒットを放ったホンダリベルタの大川茉由選手-Journal-ONE撮影

続く左打者・吉田 彩夏選手にもバントのサインが出ますが、今度はミナモ内野陣が怒濤のバントシフトです。猛ダッシュしてきたファースト・内田 小百合選手がノーバウンドで打球を捕ると、1塁に矢のような送球!下村選手が直ぐに帰塁を試みましたが、間一髪でアウト!ミナモのビッグプレーで先制点を取ることができませんでした。

するとその裏、先頭を簡単に打ち取ったフォード投手が、2番・近本 和加子選手に1-2と追い込みながらもソロホームランを浴びてしまいます。続く2回にも、連続三振で2死を奪ったものの、長井 美侑選手と山口 涼香選手に連続安打を許して2点目を献上。投球リズムは悪くないものの、流れがミナモに傾いてしまいます。ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕2戦のホンダリベルタ戦で先制本塁打を放つ大垣ミナモの近本和加子二塁手-Journal-ONE撮影

リベルタも。2回には先頭の大工谷 真波選手が、3回には2死から中山投手に強い下村選手が、安打を放って攻め続けます。毎回ヒットで走者を出し続け、中山投手にプレッシャーを与え続けるリベルタ打線ですが、中山投手の力投にあと一本が出ない難しい展開が続きます。

パワーで劣勢を一掃!開幕戦後半

フォード投手が試合を作り、0-2のままで試合は後半に突入しました。ここから、“後半に強いリベルタ打線” がパワーで膠着状態を打破しました!5回の先頭・左打者の木村 愛選手が、これまで打ちあぐねてきた内角厳しいコースに投げ込まれた速球を上手く身体に巻き込んだスイングでライトへの大飛球を放ちます。これがソロホームランとなり1点差に迫ると、続く長谷川 優理はセンター前にコンパクトに弾き返して中山選手をさらに揺さぶります。ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕戦の大垣ミナモ戦で追撃のソロ本塁打を放ったホンダリベルタの木村愛選手-Journal-ONE撮影

ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕戦の大垣ミナモ戦で追撃のソロ本塁打を放ったホンダリベルタの木村愛選手を迎えるナイン-Journal-ONE撮影木村選手の一発で流れを引き寄せたリベルタ。続く6回、先頭の2番・下村選手が全打席出塁となる四球を選ぶと、2死2塁として打席には5番・大工谷選手が入ります。フルカウントまでボールを見続けた大工谷選手は、決め球のチェンジアップを読み切ってレフト前への同点タイムリー!塚本選手の前に出塁し続けた下村選手と、塚本選手の後でランナーをどう還すかにこだわった強化の成果を見せた大工谷選手の攻撃でファンをわかせます。ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕戦の大垣ミナモ戦で全打席出塁しチャンスを作った主将の下村歩美選手-Journal-ONE撮影

ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕戦の大垣ミナモ戦で同点タイムリーヒットを放ったホンダリベルタの大工谷真波選手-Journal-ONE撮影

ここで一気に逆転したいリベルタでしたが、ホームチーム・ミナモはこの場面で昨夜129球完投勝利を挙げたEllen ROBERTS(エレン・ロバーツ)投手をマウンドに送ります。ホームの大歓声を背にしたエレン投手は後続を打ち取り、傾きかけた流れを食い止めました。

延長タイブレークが頭をよぎる6回2死無走者のミナモの攻撃。伊藤 梨里花選手に四球を出した直後にまたも試合が動きます!打席に入った西野 希美選手に投げ込んだフォード投手の外角速球を振り抜いた打球はレフト線ギリギリに落ちるヒット。ボールがフェンスまで転がる間に、一塁走者の伊藤選手が一気にホームに還って勝ち越し!一球の悪夢がリベルタを窮地に追い込みます。女子ソフトボール JDリーグ後半戦開幕| ホンダリベルタの投手陣を牽引するアメリカ代表のJailyn FORD(ジェイリン・フォード)投手-Journal-ONE撮影

1点差で最終回を迎えたリベルタは、ツーアウトとなってからでも諦めません。1番の大川選手が “塚本選手の前にランナーを出す” と強い意志で放った打球は、高いバウンドでショートの頭を襲います。飛びついたショート西野選手の送球と、大川選手渾身のヘッドスライディングは微妙なタイミング!

固唾を飲む大垣市北公園野球場に詰めかけた871人の目線が一気に集まった一塁塁審の判定は・・・「アウト!」

勝利となったミナモの選手たちと、大応援団が突き上げる拳。一塁ベース上で天を仰ぐ大川選手と木谷 謙吾コーチの悔しげな表情。そのどちらも、観ている人の心を熱くする素晴らしいシーンがフィナーレとなりました。

敗れはしたものの、後半戦に向けフォーカスした課題をしっかりと克服したリベルタ。プレーオフ進出に向けて突き進む “ホンダパワー” は見逃せません。ソフトボール・JDリーグ後半戦開幕| 開幕戦の大垣ミナモ戦でホンダリベルタのマスクを被る棚町佳奈選手-Journal-ONE撮影

第10節の試合結果

[大垣ラウンド] ミナモ4-3日立日立10-2太陽誘電ミナモ3-2ホンダ、日立2-1ホンダ、太陽誘電5-0ミナモ

[福島ラウンド] ビックカメラ3-0戸田中央、デンソー4-3NEC、デンソー5-4ビックカメラ、戸田中央7-3NEC

[豊田ラウンド] トヨタ8-2SGH、タカギ9-7東海理化、SGH3-3タカギ、トヨタ5-1東海理化

[諫早ラウンド] 豊田織機9-5伊予銀行、シオノギ7-5日本精工、伊予銀行6-0日本精工、豊田織機12-0シオノギ

[ミナモ編] 女子ソフト・JDリーグ後半戦開幕! はコチラ

[日立編] 女子ソフト・JDリーグ後半戦開幕! はコチラ

アクセス
大垣市北公園野球場
  • 東海道新幹線 名古屋駅-JR東海道本線(約35分)-大垣駅-徒歩10分
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取材・文:
Journal ONE( 編集部 )
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