W杯効果で盛り上がるスタジアム
ラグビーワールドカップ2023年フランス大会(以下、ラグビーW杯2023)の熱い戦いから1か月余り。日本代表の選手たちが戦う姿に多くの感動をもらった日本のラグビーファンが待ちに待った “NTTジャパンラグビー リーグワン(以下、リーグワン)” の2023∸24シーズンが開幕しました。
ラグビーW杯2023日本代表として世界を相手に戦った選手たちは、所属するリーグワンのチームに合流し、ラグビーW杯2023に負けないゲームを見せようと調整を続けてきました。Journal-ONEではこの記念すべき開幕戦の注目カード、昨年のリーグ王者 “クボタスピアーズ船橋・東京ベイ”と、そのスピアーズにプレーオフ準決勝で惜しくも敗れた“東京サントリーサンゴリアス”が激突した秩父宮ラグビー場での試合をレポート!
この試合の観客数はなんと18,110人! 「スピアーズ主催試合で、最高の観戦者数です。」と、スピアーズ関係者も目を見張ります。前年王者の初戦を一目見ようと、スピアーズのファン(オレンジアーミー)が来場者全員に無料配布された、応援ミニフラッグを手に試合開始の2時間前から、秩父宮ラグビー場エントランス前に集まっていました。
王者の戦いやいかに -スピアーズ
昨年の決勝戦、正確無比なプレースキックで優位に試合を進めたSO(スタンドオフ)バーナード・フォリー選手、2022-23シーズンのインパクトプレーのひとつ、CTB(センター)立川 理道選手からのキックパスを受けて勝利を決定付けるトライを挙げたWTB(ウイング)木田 晴斗選手で優勝を決めた両選手。そして、ケガで決勝戦を欠場したものの奇跡的な回復でラグビーW杯2023日本代表としてプレーしたFL(フランカー)のピーター・ラピース・ラブスカフニ選手といった主力たちが元気にグラウンドに姿を見せています。
ラグビーW杯2023で2大会連続優勝を果たした南アフリカ代表 “スプリングボックス” のFLマルコム・マークス選手が、怪我により今シーズンをすべて欠場することになってしまいましたが、今季スローガンである “IMPACT ACTIONS” を体現したプレーをどこまで魅せてくれるのか期待が高まります。
万全の補強で頂点を -サンゴリアス
一方、昨シーズン3戦全敗とスピアーズを攻略できなかったサンゴリアスですが、今シーズンは積極的な補強に出て捲土重来を狙います。今シーズン新調した2ndジャージーは、白を基調としていますが太陽の反射で日本代表のエンブレムに記された “桜” の色にも見えるデザイン。その新デザインのジャージーを着た新加入選手、チェスリン・コルビ選手に大きな期待がかかります。ラグビーW杯2023で南アフリカ代表を優勝に導いたコルビ選手は、世界最高のWTB。右へ左へと多彩なステップワークとスピードで敵陣深くまで切り込んでいくその姿は、日本でも話題となりました。
電光石火で主導権を握る -前半
キックオフ直後、センターライン付近でのラインアウトからつないだボールを取ったのは昨シーズンのメインポジションであるFBからWTBに回ったラグビーW杯2023日本代表の松島幸太郎選手でした。相手ゴールライン15m付近まで華麗なステップで攻め込むと、ボールを右へ展開しゴールまで一気に迫ります。キャリーバックでしのいだスピアーズでしたが、5mからのスクラムとなったサンゴリアスは、怒濤の波状攻撃で前へ前へと進むと、最後はラグビーW杯2023日本代表、HO(フッカー)堀越 康介選手のトライで先制。CTB森谷 圭介選手がゴールを決めて7-0とサンゴリアスが開始わずか5分で先制します。
すぐに追いつきたいスピアーズも、キックオフ直後からボールを奪うと、ラインアウトからの細かいパスをつなぐ攻撃で相手のペナルティを誘います。ゴールやや左の好位置でキックを選択したスピアーズでしたが、キックの名手SOフォーリー選手が失敗。会場からはどよめきが起こりました。
WTBの根塚 洸雅選手の巧みなステップ、PR(プロップ)オペティ・ヘル選手の縦への突進で突破口を開きかけたスピアーズは、ラインアウトを狙ったキックを蹴りますが、これをサンゴリアスバックスが好捕。少ないディフェンスの間を切り裂いて右へ大きく展開すると、松島選手から右サイドラインを駆け抜けてきたWTB尾崎 晟也選手にパスしてトライ! キックも決まって14-0とリードを広げます。
サンゴリアスの新加入、ラグビーW杯2023準優勝のニュージーランド代表 “All Blacks” の主将でNo8のサム・ケイン選手のディフェンスの速さが光ります。同じく新加入のコルビ選手にボールが渡ると、サンゴリアスファンからラグビーW杯でのプレーを期待する大きな歓声が起こります。世界屈指のWTBであるケイン選手は、FB(フルバック)というポジションながらも、積極的にボールを運ぶ攻撃を見せると、スピアーズディフェンスもパスコースを消してボールを奪いに向かいます。そかし。そのディフェンスの突進に一旦自陣に向かって反転し、回り込んで自らで前に持ち込むコルビ選手。タックルが2枚付いていても構わず前に突進するプレーに観客からは更に大きな歓声が起こります。ワンプレーで観客を魅了してしまうあたりは流石、世界のウイングです。