ラグビーの祭典を現地で
“ラグビーワールドカップ2023(ラグビーW杯2023)” がいよいよ開幕しました!日本で開催された2019年の前回大会。日本代表が世界の並みいる強豪国を撃破し、史上初のベスト8を果たしたあの感動が昨日のように思い起こされます。
このラグビーW杯2023に向け、7月8日のAll Blacks XV(フフティーン)戦から8月5日のフィジー戦まで、日本代表は世界の強豪を国内に迎えて5試合の国際試合が行われ、多くの日本人ファンが盛り上がりました。日本代表の活躍はもちろん、ラグビー観戦の楽しさを紹介してきたJournal-ONEですが、今回はラグビーW杯2023の開催地・フランスにおけるその盛り上がりを紹介!
2003年のラグビーW杯オーストラリア大会に始まり、2007年のフランス、2011年のニュージーランド、2015年のイングランド、そして前回の日本と5大会連続で現地観戦をして来た編集部の記者が、その経験をもとにフランスにおけるラグビーW杯観戦の面白さをお伝えしていきます。各国から集まったファン、フランス各地のみなさんの話を聞きながら、世界中のファンが楽しむラグビー熱を感じてもらえれば嬉しいです。
高速鉄道の中でもW杯!
9月8日の夕刻、フランスのマクロン大統領の開会宣言で開幕したラグビーW杯フランス大会。会場のStade de France(スタッド・ドゥ・フランス)に近い首都・パリ市内もラグビーW杯一色です!
今回、私はオランダのロッテルダムから高速鉄道のTHALYS(タリス)を使いパリに入りました。19:00頃にロッテルダムを出発して21:40頃にパリに着く、約2時間半の列車の旅です。この車内でもラグビーW杯一色だったのは、車窓を見ながら談笑できる立ち飲みコーナー “ウェルカムバー” でした。そこでは、ビールを片手にラグビーW杯を楽しむ人たちが! パソコンやスマートフォンで開会式の模様をリアルタイムで視聴して盛り上がっていました。
開会式に続くプールマッチの開幕戦カードは、開催国・フランスとニュージーランドという最高の一戦。自国開催優勝を目指すフランス代表とAll Blacksとして名高いニュージーランド代表は、決勝戦のカードとしても予想されているのですが、それがプールAの開幕戦カードとして組まれているのですから、盛り上がらない訳がありません。
因みにこの一戦のチケットの値段(Category1)は、何と550ユーロ(約87,000円)!プールマッチ人気のカードであるフランスvsイタリア、イングランドvsアルゼンチン、イングランドvs日本が300ユーロ(約47,500円)ですから、別格の一戦であることがおわかりいただけると思います。
後半からパリ市内のパブリックビューイングで観戦できるかな?と思っていたのですが、タリスの大幅な遅延によりParis Gare du Node(パリ北駅)に着いたのは22:50・・・ 急いで駅を出ると、パブリックビューイングに行かなくても、街の至る所でパリ市民がお酒を飲みながらテレビ中継に食い入る姿がありました!この開幕戦を27-13と優勝候補のニュージーランド代表を相手に予選初黒星を付けたフランス代表。勝利に沸くファンたちがいつまでも歓声を上げていました。
パリ市内もW杯一色!
歴史的なフランス代表の勝利から一夜が明け、コンコルド広場のFUNZONEにあるオフィシャルグッズショップにやってきました。朝の11時には既に入場待ちの人でいっぱいの入口!午後2時頃には、その列がさらに長くなっていました。
店内では、日本代表のジャージーを買い求めるフランス人を発見!早速話しを聞くと、彼はフランスで空手をやっている根っからの日本びいきとのこと。2019年のラグビーW杯では、来日して日本代表戦を観戦したと言っていました。地元・パリで日本代表のジャージーを着て応援してくれるフランス人が居るとは!驚きと共に、とても嬉しい気持ちになりました。
コンコルド広場のFUNZONEを遠くから見ると、東京・丸の内の御幸通りで行われた日本代表の壮行会を思い出します。凱旋門から一直線、シャンゼリゼ通りを抜けたところに広がる抜群のロケーションです。
シャンゼリゼ通りにある “アディダス ショップ” を見ると、店内はラグビー一色になっています。アディダスがジャージーを提供しているニュージーランド代表の露出が凄い!フランス代表で契約があるスクラムハーフ(SH)Antoine Dupont(アントワーヌ・デュポン)選手だけが別格の存在感を示していましたが、開催国フランスでライバル国を前面に出してラグビーW杯を盛り上げるお店があるのも、海外ならではの光景ではないでしょうか?
世界旅行ツーリズム協議会(以下、WTTC)の調査で、世界で最も観光力のある都市として1位にランクされたパリ(東京は7位)。言わずもがなですが、世界有数の観光スポットが少し歩いただけでも数多あります。試合観戦の合間に、Palais Garnier(オペラ・ガルニエ、オペラ座)などの風情溢れるパリの風景を楽しむのもラグビーW杯を楽しみのひとつです。
創業100年以上の高級百貨店 Galeries Lafayette Haussmann(ギャラリーラファイエット)では、2024年に開催される2024オリンピック・パラリンピック・パリ大会のグッズも大々的に販売しています。翌年まで続く世界的なスポーツイベントに、パリの街は益々盛り上がっていくのでしょうね。
因みに、今回宿泊したホテルはオペラ座から徒歩3分、コンコルド広場までも徒歩10分くらいと抜群のロケーション。ラグビーW杯期間中で宿泊料金が高騰する中、シングル1拍で185ユーロ(日本円で3万円弱)とまずまずでした。シングルルームなので、屋根裏的なベッドルームでしたが、これも旅の思い出として心に残る部屋でした。
スタジアムへの道のり
今回、現地観戦したのは開幕戦翌日に行われた、オーストラリア代表とジョージア代表の一戦です!会場となったスタッド・ド・フランスへは、RER B線で向かいました。日本の国立競技場と同じく、スタッド・ド・フランスの最寄り駅は4つくらいあります。郊外近郊路線RERの方がメトロよりも早く、RERもD線よりはB線の方が今回のチケット席と近い場所に合ったために選択。観戦の際はシートの位置を確認してから路線を選ぶのがオススメです。
駅を降りてスタジアムまでは歩いて行くのですが、途中に荷物チェックがありました。やはり、2015年に起こったテロ以来こういった安全対策はしっかりと行われているようで、スタジアムに入るときにももちろん荷物チェックがありました。パリ中心部からスタジアムまでは概ね30分くらいを見ておくと良いかと思います。
一緒に歩くファンの中で目立ったのは、やはり仮装をしたオーストラリアのファンたちでした!金のボディスーツに身を包んだり、探検隊に扮したりとラグビーW杯を心から楽しんでいます。目立った仮装が多かったこともあり、見た目ではオーストラリアのファンが少し多いような気がします。やはり、ラグビーW杯優勝2回を誇る人気チームの試合だけあるなぁといった雰囲気です。
そして、ラグビー観戦の楽しみと言えばやはりビールですが、今回のオフィシャルビールは日本のアサヒビールスーパードライ!
スタジアムの外周には出場国のエンブレムが飾られています。我が日本代表のエンブレムは、開催国・フランスや強豪アイルランドと同じ面にありました! こう言った装飾ひとつを見ても、日本が世界に認められる強い国になってきたんだなぁととても嬉しい気持ちになりますね。
いよいよ現地観戦!
観客数の発表は75,770人と、ほぼ満員となった一戦。開始早々からオーストラリア代表のウイング(WTB)Jordan Petaia(ジョーダン・ペタイア)選手のトライで会場が地鳴りのような歓声に包まれます。ジョージア代表も、スタンドオフ(SO)Luka Matkava(ルカ・マトカバ)選手のペナルティゴール(PG)で追いすがると、オーストラリアファンに負けず劣らない歓声が沸き起こります!
「意外とジョージアのファンも多いなぁ。」と感心していると、一緒に観戦していたフランス人の友人が、「フランス人の大半はジョージアを応援しているよ。フランス人は、Small Teamを応援するんだ。」と教えてくれました。試合を盛り上げようとするフランスのラグビーファンの気質は分かりましたが、どうやらジョージアを応援しているのはそれだけが理由ではなさそう。
日本代表戦以外でも楽しさいっぱいのラグビー観戦。日本で活躍している他国代表選手の活躍を観ることも欠かせない楽しみのひとつです。この試合では、オーストラリア代表のウイング(WTB)として出場したのは、Marika KOROIBETE(マリカ・コロインベテ)選手。JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(リーグワン)の埼玉パナソニックワイルドナイツで活躍し、5月に行われた決勝戦では、俊敏な動きと屈強な身体で優勝したクボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田 晴斗選手のトライを防ぐ豪快なタックルを見せて日本でも話題になりました。この試合でトライを挙げることは出来ませんでしたが、強豪・オーストラリア代表で活躍するコロインベテ選手のプレーもこれから注目して欲しいですね。
ビールを片手に、選手たちのワンプレーに一喜一憂する楽しいひととき。1階席から3階席まで繋がった大きなウェーブも度々巻き起こりますので、カップのビールをこぼさないよう注意が必要! サッカーW杯もラグビーW杯も、こういったウェーブが突然起こり、何度何度も続くのです。日本のスポーツ観戦では、アナウンスなどでウェーブを “わざと” 巻き起こすケースがありますが、こう言ったファンからの自発的なウェーブが日本でも普通に起こるようになると、よりスタジアムでの観戦が面白くなると思います。
試合のレギュレーションで変わったのは、“ウォーターブレイク” が新設されたこと。日本の猛暑も凄くて、夏の全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)でも導入されたこの熱中症対策が、ラグビーW杯でも導入されています。
9月に入って、日本の夜は少し暑さが落ち着いてきましたが、日中はまだ35度近い最高気温で推移しています。世界的な温暖化はここフランス・パリでも顕著で、この滞在中は連日35度を超える猛暑でした。市民や観光客はこぞって日陰のあるカフェで休憩したり、道端で販売しているジェラートを食べたりと、前例のない暑さに参っていました。
また、コンバージョンゴール(G)にも制限時間が設けられたようです。トライ後に電光掲示板にタイマーのようなものが現われ、90秒以内に蹴らないといけない仕組みになりました(ペナルティゴールは60秒以内)。メジャーリーグベースボール(MLB)でも、大谷 翔平投手がサイン交換でボークを取られて話題となった “ピッチクロック” に似たルールで試合時間の短縮を狙っているようですね。
ハーフタイムでは、スタジアム内を少し散策。スタジアム内にあるホスピタリティ用のラウンジがあり、試合をゆっくりと観戦したい方にオススメです。こちらは、簡易的に設けられたラウンジでお値段はそれほど高くはありませんが、VIPルームやスタジアム外にも何種類かのラウンジがあります。
試合の方は、21-3で前半を折り返したオーストラリア代表が終始、ジョージア代表を圧倒して35-15で初陣を勝利で飾りました。敗れたジョージア代表も最後にトライ&ゴールを決めるなど、最後まで闘志溢れるプレーを見せてくれたので、会場は最後まで熱気に溢れていました。興奮冷めやらぬファンと共にスタジアムを後に駅まで向かいます。これからコンコルド広場のFUNZONEに移動して、そこで観戦するラグビーファンの様子を紹介したいと思います。
自由な雰囲気のFUNZONEへ
午前中に散策したコンコルド広場に戻ってきました。マルセイユで行われるイングランド代表とアルゼンチン代表の注目のカードが放映されると言うことで、21:00から始まる遅めの試合にも関わらず、イングランドファンを中心に既に多くの人たちで賑わっています。
翌日には、いよいよ日本代表がチリとの初戦を控える中、決勝トーナメント進出への最大の障壁となる同じプールDのイングランド、アルゼンチンの様子は是非見ておきたいところですが、少しお腹も減ったのでフードコーナーで軽く食事をすることにしました。
食事のメニューは極めてシンプル。前菜とメイン料理、デザートのセット価格となっていて、16ユーロ(日本円で2,500円程度)か、20ユーロ(同3,200円程度)と。これまた “W杯あるある価格” です(笑)。バーもビールやワイン、シャンパンがあり、こちらはスタジアムよりも少しだけお安くなっています。
レーザーが照射されている大きなスクリーンの後ろには、ライトアップされたエッフェル塔も! スクリーンの最前列で立ちながら歓声を上げているファンも居れば、後ろの方で椅子に座ったり、寝転んだりして観戦しているファンの姿も。皆さん、思い思いにラグビーW杯を楽しんでいるようです。
試合の方は。前半3分にイングランド代表のフランカー(FL)Tom Curry(トム・カリー)選手が早々に危険なタックルで退場処分となり、アルゼンチン代表が数的有利を活かして試合を優位に進めるかと思われました。
しかし、落ち着いてプレーするイングランド代表は、キックを中心にアルゼンチンの攻撃を徹底的にかわして行きます。この試合は、SOのGeorge FORD(ジョージ・フォード)選手のひとり舞台。9本のキックを全て決め、イングランド代表が得点した27点全てを叩き出す大活躍。
一次帰国の道中で
翌日、日本へ帰る予定でしたが、昼間にパリ市内のスポーツバーで、これから始まる(フランス時間で13:00)日本代表とチリ代表の試合を観戦しようと何軒か覗いたのですが、残念ながらこの試合はどのバーでも、FUNZONEでも放送の予定がありませんでした。ラグビーW杯初出場のチリ代表が対戦相手となると、フランスでは日本の試合は余り注目されないのだと分かり、少し残念に思い、シャルル・ド・ゴール空港に向かいました。
シャルル・ド・ゴール空港では、到着ロビーにラグビーW杯のタペストリーが幾つも掲げられていて、まさに “ラグビー一色” の装いとなっていました。フランス代表以外の様々な強豪国のプレーシーンがタペストリーを飾り、ファンに向けたメッセージもあるなど、世界各国からやってくるラグビー関係者、ファンを歓迎する仕様になっています。
告知! 現地観戦レポート第2弾
今回は短い滞在となりましたが、Journal-ONE編集部の現地観戦レポートは続きます!
決勝トーナメント進出への大一番となるであろう、日本代表とアルゼンチン代表のゲームレポートを中心に、幾つかの試合やパリ以外の開催都市の盛り上がりをお伝えする予定です。
日本でのテレビ観戦に加え、こちらのレポートを読みながらフランスで応援している気分になってラグビーW杯をより楽しんでもらえると嬉しいです。