小さな巨人も遂に
ラグビー元日本代表のSH(スクラムハーフ)で、ワールドカップ3大会に出場した田中史朗選手が今シーズンかぎりでの現役引退を表明した“涙の会見” が4月24日。
その4日後に行われた、NTTジャパンラグビーリーグワン(以下、リーグワン)ディビジョン2の順位決定戦 第2節。ホームの千葉・柏の葉公園総合競技場に田中選手の最後の花道を応援しようと、集まったファン3,385人の前でNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は勝利を届けられるのか?
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GR東葛は地元勝利に向け選手を鼓舞する盛大なセレモニー-Journal-ONE撮影
田中選手はこの試合、ベンチ外ながらも試合前の練習では元気な姿を見せました。スクラム、タックル練習の場面では誰よりも声を出し、試合前の選手たちを鼓舞する姿に、スタンドのファンから歓声が送られました。
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ラグビーリーグワン 引退表明後初のグラウンドに立つ田中史朗(GR東葛)-Journal-ONE撮影
この日、ホームグラウンドに向かう“泣き虫フミさん”は、時折涙を見せながら会場入りしたとのこと。「なんの涙でしょうね。(ファンの姿を見ても)泣いたらあかん。笑顔を見て喜んでもらいたい」と自らを鼓舞して全力でアップしたことを試合後の会見で教えてくれました。
フミさんを慕う声
アップする田中選手らGR東葛の選手たちをグラウンドレベルの特等席で見つめるファンがいます。ゴールライン後方に設置された広告看板の直ぐ後ろ、本来ならば報道カメラマンたちが陣取る“砂かぶり席”は、今シーズンからGR東葛が設けた特別観覧席。
カメラマン顔負けのカメラで田中選手を追う都内から来た女性ファンは、「残念ですが、今まで本当に頑張ってくれてありがとうございます。ゆっくり休んで欲しいですね」と少し残念そうにその功績を称えていました。
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GR東葛のゴール裏に設置された特別観覧席-Journal-ONE撮影
会見後、日本代表、GR東葛でチームメイトとして戦い続けたレメキ ロマノラヴァ主将も、「フミさんは日本のラグビーの歴史を変えた男です。スーパーラグビーで優勝したし、2015年、2019年のW杯でも日本ラグビーを引っ張ってきた。子供たちへのファンサービスもしっかりするし、チームの若手をご飯につれて行ったりもする。日本ラグビーの本当のレジェンド」と賛辞を惜しまない。
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「田中さんはレジェンド」と称したGR東葛のレメキロマノラヴァ主将-Journal-ONE撮影
リーグ戦を2位で通過。杜の都・仙台で行われたリーグ戦最終節では、1位の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)を相手に僅差で敗れたものの、逆転に次ぐ逆転の熱戦を演じたGR東葛の調子は上向き。リーグ戦での対戦は1勝1敗と実力が拮抗している豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)を相手にGR東葛の選手たちは“メモリアルマッチ”でどんな戦いを見せてくれるのか。
GR東葛の怒濤の攻撃が光る -前半
試合は前半からGR東葛が猛攻を見せました。
前半5分、中央付近から右サイドに展開して攻めるGR東葛にS愛知が必死のディフェンス。サイドラインに押し出したかに見えたボールをGR東葛がしぶとく繋いでトライかと思われたが、TMO(ビデオ判定)で惜しくもラインアウト。
続く前半6分にも、FB(フルバック)レメキ選手の中央突破から敵ゴール前5m付近に迫るGR東葛だったが、惜しくもノット・リリース・ザ・ボールでチャンスを活かせない。
それでも攻め続けるGR東葛は前半11分、自陣15m付近からのアタックからハイパント、スペースへのキックと多彩な攻撃を見せてS愛知を揺さぶると、最後はSHのニック・フィップス(Nick Phipps)選手が中央のスペースに走り込んで先制トライ。Gも決まって7 -0とGR東葛が均衡を破った。
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GR東葛 SHのニック・フィップスが中央のスペースに先制トライ-Journal-ONE撮影
自陣でプレーする時間帯が続いたS愛知は前半14分、すぐさま反撃を開始。敵ゴール前でアタックを重ねてトライを狙うが、GR東葛の必死のディフェンスが得点を許さない。