「横浜Eに勢いが付いていたので、とにかく止めることだけを考えた。高いタックルで反則をとられないよう、足元に入って相手の勢いを止めることを優先した」とヴァル選手が振り返ったとおり、密集のすぐ横を突破されてきた横浜Eの動きを止め始めた埼玉WK。
流れを止めた埼玉WKが電光石火の逆転劇
すると15分、敵陣5mからのスクラムでビックプレーが生まれた。中央でボールを受けたヴァル選手が正面に突っ込むと見せてのクイックパス!これを松田選手がトップスピードで受け取ると、中央の横浜Eディフェンスの間を一気に突破してゴールポストすぐ前まで走り込んでいく。
これをフォローしたW杯2023南アフリカ代表のCTB(センター)Damian de Allende(ダミアン・デアレンデ)選手が飛び込む。ボールを保持しているか?ノックオンか?再びビデオ判定で会場がモニタに釘付けになるなか、再び「TRY」の文字がスクリーンに大きく映し出されてると、Gも決めて20-17と埼玉WKが逆転に成功した。
残り25分、どちらがモメンタムを確保するのか?互いに一進一退の攻防が続く。
31分にはペナルティを得た埼玉WKが敵陣5m付近からのラインアウトで追加点を狙いモールで押し込むが、横浜Eも負けていない。ボールを展開しての連続アタックでトライラインに迫り、ヴァル選手、堀江選手とフィジカルの強い選手をどんどん送り込んで突破を試みるが、横浜Eディフェンスがノックオンを獲得。
両チーム補ファンからコール合戦が起こる中、横浜EはNo8のAmanaki Lelei Mafi(アナマキ・レレイ・マフィ)選手、CTBのJesse Kriel(ジェシー ・クリエル)選手、田村選手がスピードで突破を図るも埼玉WKディフェンスがそれを許さない。中央付近でのスクラムをコラプシングで凌ぐと、ホーンが鳴って行き着き暇ない激闘が幕を閉じた。
世界で戦う選手も「ドキドキする展開」だった
20-17という接戦を制した埼玉WKのヴァル選手は、「今日は、(交代前の)見ているときも、ピッチに出ているときもドキドキする試合だった」と振り返る。ワールドカップという大舞台で活躍した選手でさえ、この日のしびれる展開は “ブルー” な状態を維持するに難しい試合だったことを教えてくれた。
「去年は最後の最後で悔しい結果になった。今年はそれを打ち破って笑ってシーズンを終えたいですね」と笑顔で話すヴァル選手は、決勝で最後のスクラムを組む堀江選手についても「(共に戦うのも)あと1試合となって残念ですが、勝って花道を飾りたい」と力強く決意を語った。
この日、家族は奥様のお仕事で観戦に来ることが叶わなかったようで、「決勝は家族も応援に来てくれる。優勝の喜びを分かち合えるように、いまからしっかりとリカバリーに努めます」と話し、スタジアムを後にした。
続く準決勝第2試合は、“東芝ブレイブルーパス東京” が “東京サントリーサンゴリアス” を28-20で破って決勝に進出。国立競技場を舞台に5月26日、いよいよ最後の決戦を迎えるNTT ジャパンラグビー リーグワン 2023-24 プレーオフトーナメントに目が離せない。