Journal-ONE 山下泰裕 JOC会長 厚地純夫編集長インタビュー
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-東京2020でも若いアスリートの活躍が目立ち、また若い人に支持される競技も行われ、パリでは更に競技が多様化されていきます。-

正に、若いファンに人気のアーバンスポーツは新競技も行われます(ダンススポーツ・ブレイキン)。

IOCの動きを見ると、「若い人たちがスポーツに参画する機会を提供していきたい」、「若い人たちが常に実践する、或いは何らかの形で参加する、そういうスポーツ界で無ければいけない」と言う考えを持っているようです。

夏季オリンピックは正式競技が28ありますが、ここも当然時代によって入れ替わりがあります。若者の感性は大事にしたい。これは我々の方が学ぶことが多い気がしますね。

-閣議決定においては、所謂「骨太の方針」で、多極化、地域活性化の文脈の中にスポーツの振興が盛り込まれました。-

本来、JOCを始めとするNOCの使命の一つには、オリンピック競技大会やアジア競技大会に代表選手団を派遣することです。そこに向けた4カ年、8カ年計画の中でTEAM JAPANに相応しいアスリートを育てることです。

国が豊かであるということは、地方が豊かである、元気があるということです。これは重要な視点です。

地方創生というのはやはり、国を挙げて取り組んでいかねばならない問題です。これに対し、スポーツで我々に何が出来るかと言うことは、今から考えていくという現状ですね。

そして、未来へ

-それと時を同じく、将来を見据えた活動指針として「JOC Vision 2064」を掲げられました。-

コロナ禍において、日本ではスポーツは不要不急だと言われましたが、欧米では全く反応は逆でした。

コロナ禍において、自分の心身の健康は自分で守るしか無い。コロナ禍で様々なことが制限される中で、自分の心身を守るためにスポーツというのは極めて大きな役割を果たすという考えです。

コロナ禍で感染リスクには対応しながら、自らスポーツをすることで心身の健康を維持するという風潮ですね。

こう言った考え方に導くことの出来なかった我々の力の無さ、努力不足を感じた次第です。

そう言った反省も活かし、昨年「JOC Vision 2064」では3つの柱を掲げました。

「オリンピズムが浸透している社会の実現」では、オリンピズムの精神をもっともっと浸透していくことで、スポーツの価値とか意義とかを社会に理解して頂くことを目指す。

勝ったとか負けたとかだけではない、スポーツを通して豊かに生きる喜びが浸透している社会をつくると言う活動です。

「憧れられるアスリートの育成」では、憧れられるアスリート、トップアスリートの振る舞いは子供達にとても大きな影響を与えます。

ですから競技力だけで無い、人間力も育むことが日本社会において非常に大きな役割を果たすと考えて柱の一つに据えています。

そして3つ目の「スポーツで社会課題の解決に貢献」。

スポーツで地域活性化、地域創生は、正にこの3番目に当たると思います。

今までJOCも他の関係団体も(地域活性化、地域創生は)自分の仕事では無いと考えがちでした。

今でもこの話をすると、「会長そこまで手を入れるんですか?」とか、「本来のNOCの役割から離れていきませんか?」とかね。(笑)

私は世界で勝つことがどれだけ大変で素晴らしいことか分かっています。

これを達成するために、私たちは決して手は抜かないけれども、スポーツがより良い社会作りの実現に対して我々が出来るところは汗をかいていかなければスポーツ界は発展していかない。

ですから、これは今後勉強をしながらスポーツ界がどういった形で参画していけるか、その道の専門家の話を聞きながらNOCとしてどういった形で関われるかを検討していく段階だと思います。

コロナ禍の影響があったり、SNSが発達したりと、様々な要因もあって人と人との繋がりが希薄になっていますよね。特に若い人たちのコミュニケーション能力を育む社会を創ることは、我々大人の責務だと思っています。

スポーツには人と人を繋ぐ力があります。

例えば、世代を超えた地域の総合型スポーツクラブなどで、子供から大人、更にはお年寄り、障がい者等が一緒に活動できるようになれば、そこで様々なコミュニケーションが生まれ、結果スポーツが地域に貢献出来るのかなぁとか。

また、地域ならではのユニークなイベントが色々あります。

こう言った特性と同様、スポーツのイベントも地域に併せて形を変えて地方のイベント一緒にやっていく地方創生とか。

まだまだ勉強段階における想像上の話しなので、ピントがずれているかもしれませんけども。

-私たちJournal-ONEも、メディアとしてスポーツと地域をつなぐ活動を行っています。-

JOC関係者の中には、「それはJOCではなく、スポーツ庁の役目だ。日本スポーツ振興センター(JSC)や日本スポーツ協会(JSPO)の役目だ。」と言う意見もあります。

しかし、我々は「JOC Vision 2064」でそれを掲げていますし、この原案を作ったのはJOCの若い職員、これからのJOCを担う人たちなのです。当然、ここから逃げるわけにはいきません。

今の若いJOC職員が、自分が退職する特にJOCがどうありたいか、1964年の東京オリンピックから丁度100年後となる2064年を想像して、もの凄く議論して作ったものなのです。

東京2020を見た若い世代が社会の中心を担っていくような未来に、JOCがどうありたいかと言う姿を目指して、若い人たちが真剣に作ったもの。

会長の私なんかが言ったことをそのまま落とし込んだお飾りのような指針では無く、若い職員が想いをぶつけて作った。「そうなりたい。」「そうするんだ。」という決意が血肉になっている指針なのです。

ー社会課題は様々ありますが、それをスポーツと結びつけて解決したいという高くて強い想いが強烈に感じられる。しかもそれを若い人達が主導しているとお伺いし、本当に心強く思いますー

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