工夫された練習メニューで別の能力も強化
基礎練習で汗だくの選手たちから一転、笑い声や叫び声が聞こえる練習が始まりました。
二人、三人の選手が相手陣内に侵入すると、残りの選手たちが進路を塞ぎます。時間内にゴールラインを越えればオフェンスの勝ち。そうでなければディフェンスの勝ちというルールです。
クラスの違う選手が入れ替わり立ち替わり、相手ゴールラインの侵入を試みる練習は「鬼ごっこアップ」と呼ばれていました。
先ほどの基礎ラン練習と同じくらい、選手たちはコート内を絶え間なく動き回っています。しかし、選手たちには笑顔があふれ、「こっちを抑えろ!」「ウォー!」と楽しそうに10分もの間動き続けていました。
鬼ごっこアップを終えて汗だくの乗松選手は、「遊び感覚で走力やスタミナを鍛えるメリットもありますが、ハイポインターとローポインターの連携を深めることも出来る効率の良い練習なんですよ」と教えてくれました。
課題に向き合うポイント練習も濃密!
「今日は、韓国からも選手が来ているので、日本選手権に備えた実戦練習を多めに入れていきます」と、メニューを教えてくれたのは吉森 隆栄ヘッドコーチです。
ボードを見せながら対戦チームの攻撃パターンを説明した後、自らもラグ車に乗り込みました。相手チームのハイポインターを想定した吉森HCの力強く俊敏なチェアワークを抑えようと、入れ替わりコートに入る選手たちが必死に食らいついていきます。
常に激しいマークを受けながら、選手たちと一緒にラグ車に乗り続けた吉森HC。その無尽蔵なスタミナに驚きますが、何よりも真剣なプレーの中でも笑顔を忘れず元気いっぱいなプレースタイルに魅入ってしまいます。指導する方も、Fukuoka DANDELIONのチームカラーを体現していることに感心しました。
コート半分を使ったゴール前のオフェンス&ディフェンス練習から、5分ごとにラインを決めてミニゲーム。そして、日本選手権の対戦相手を想定したケース練習など濃密な実戦練習の連続です!
少しずつ給水休憩は取るものの、選手たちの集中力とスタミナは途切れることなく、昼過ぎまで熱の入ったプレーをやり尽くしました。
東京2020における日本代表の活躍をきっかけに競技を始めた#15 阿部 輝士(Class2.5)選手。この濃密な実戦練習で、主力選手と互角のマッチアップを展開。昨シーズンにも増して安定したプレーを見せてくれました。
「2019年9月に入院して、ちょうど退院したときに東京2020の試合を見たのです。以前から競技自体は知っていましたが、実際にやってみると車いすラグビーはテレビで視ているだけでは分からなかった魅力がたくさんありました」と、競技に導かれたきっかけを教えてくれた阿部選手。
会社員としてフルタイムで働く阿部さんは、「平日はなかなか時間が取ることが難しいです。自宅で筋トレをするなど、出来る限り鍛えるようにはしているのですが」と、仕事と両立する苦労を話します。「それでも、昨年より今年、今年より来年とパフォーマンスを下げることなく成長していきたいです」と、大粒の汗を拭きながら語る顔は充実感にあふれていました。
韓国から参加するイケメン兄弟
昼休憩の合間、Fukuoka DANDELIONの元気を支える韓国から参加している兄弟選手、#22 朴 承撤選手(PARK SEUNGCHEOL:Class1.0)と#9 朴 雨統選手(PARK UCHEOL:Class2.0)が、二人で楽しそうに話しています。