カパ・オ・パンゴは、当初、締めくくりの「心臓と肺に生命エネルギーを引き出す」という意味のジェスチャーが、喉を掻き切るようだと間違って解釈され、非難を集めることもあった。そのため、2019年や2023年のワールドカップでは腰に手を置く形になっていたが、最近では元の形を披露している。
この2つのハカの使い分けにルールは1つしかないという。テ・ラウパラハが、ウェリントンの出身であることに敬意を表して、ウェリントンで試合が行われる時は「カ・マテ」が披露される。それ以外はハカをリードする選手たちが決める。
オールブラックス以外にも披露されているハカ
現在は、マオリの血を引くSH(スクラムハーフ)のTJ・ペレナラがハカをリードするのがお馴染みだが、ハカのリーダー(カエア)は必ずしもマオリにルーツを持つ必要はなく、実際、「カパ・オ・パンゴ」を初めてリードしたのは、当時のオールブラックスのキャプテンで、サモアにルーツを持つCTB(センター)タナ・ウマンガだった。
そして、オールブラックス以外のニュージーランドのチームもそれぞれのハカを持つ。女子の代表チーム “ブラック・ファーンズ” もかつては「カ・マテ」を披露していたが、2006年からは15人制も7人制もオリジナルのハカ、”コ・ウヒア・マイ”(kouhiamai/われらを知らしめる)を踊っている。マオリの出身の選手だけで構成されるマオリオールブラックスは2001年から、”ティマタンガ”(Timatanga/はじまり)というハカを披露している。
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独自のハカ「ティマタンガ」を踊るマオリオールブラックス – 斉藤健仁撮影
また、フィジーの “シンビ”(Cibi)、トンガの “シピ・タウ”(SipiTau)、サモアの “シヴァ・タウ”(SivaTau)など、ニュージーランド以外の南半球のラグビーチームの多くも、ハカのような “ウォークライ” と呼ばれるパフォーマンスを試合前に行っている。
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フィジー代表のシンビ – 斉藤健仁撮影
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シビタウと呼ばれるウォークライ(War Cry)を披露するトンガ代表-Journal-ONE撮影
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試合前、シヴァタウを披露するサモア代表 – 斉藤健仁撮影
日本代表戦で披露されるのはどちらのハカか
オールブラックスが “カパ・オ・パンゴ” を披露したチームはブリティッシュ&アイリッシュライオンズを含めて11チームしかなく、日本は過去7回の対戦(0勝7敗)では、まだ一度も目の前で “カパ・オ・パンゴ” は披露されていない。
2019年のワールドカップ準決勝では、当時エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が率いていたイングランド代表選手たちが、オールブラックスのハカに対して、「V」字のフォーメーションで迎えた。
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日本代表戦で行われたハカ – 斉藤健仁撮影
現在は日本代表を率いているジョーンズHCは「2019年の準決勝で、なぜV字にしたかというと、日本のファンのほとんどがオールブラックスファンだろうと思ったから。ハカが盛り上がると、ファンはニュージーランドにいるような気分になり、オールブラックスが望むプレーをするための舞台が整い、彼らは観客を味方につける」と語り、それを防ぐためだと話した。
そして今回の対戦ではハカに対して、「やるべきことは、日本のファンに日本を応援する必要があることを理解してもらうこと。ハカに対してそれをどうするか、今、いくつかのことを考えている」と話している。
8度目の日本代表とのテストマッチで、オールブラックスはカ・マテ、カパ・オ・パンゴ、どちらのハカを披露するのか。そして、ラグビー日本代表は、そのハカをどういった形で迎えるのか。試合内容はもちろんのこと、オールブラックスのハカにも大いに注目して試合を楽しんでほしい!
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