地域に根ざしたスポーツクラブが、地域の人たちと心を通わせることは、チームのファン拡大やそのスポーツの競技人口を増やしていくにとても重要な取り組みです。
しかし、スポーツの発展だけにとどまらず、地域創生にもなる心温まる交流を行っているスポーツクラブがあることを知っていますか?
日の出から間もない11月の半ば、宇和島市吉田町にあるJAえひめ南 立間中央支所に集合したのは・・・ 日本代表選手はもちろん、各国のオリンピアンもプレーする国内リーグ「JD.LEAGUE(Japan Diamond Softball League)」に所属している “IYOBANK VERTZ(伊予銀行ヴェールズ)” の皆さんです!
愛媛県といえば?
誰もが最初に思い浮かぶのが、特産品である「みかん」ではないでしょうか。愛媛県のみかん収穫量は全国第2位の12万7,800トン。全国シェアは17.1%にもなるんです!
私たちの近所でも愛媛県産のみかんや加工品を手にする機会が多いのは、こんなに多くの生産量を誇っているからなんですね。(2021年産 農林水産省資料より)
そんな日本屈指のみかんの産地・愛媛県のみかん栽培の歴史は、江戸時代の終わりころ。
お伊勢参りや四国巡礼で手に入れたみかんの苗木を植えたのが始まりとされている地が、ここ宇和島市吉田町なんだそうです。
「昨年、明るく元気に手伝ってくれた印象が強くて。今日の再会を本当に楽しみにしていました。」と、JAえひめ南 常務理事の渡邉 鉄雄さん。みかん栽培から収穫までをわかりやすくお話しいただいているところへ、続々とみかん農家の皆さんが出迎えに集まってきました!
ヴェールズの遠征バスから降りてきた選手たちを出迎えるみかん農家さんたちも久しぶりの再会にとても嬉しそうです。
チームは2~3名に分かれ、迎えに来たみかん農家さんの車に乗って、それぞれの農園に散っていきます。今回はその中の、地元・愛媛県出身の庄司 奈々投手、兵庫県姫路市出身の安川 裕美捕手、そしてアメリカ シアトル出身のリサ モールデン内野手のチームに密着します!
山を縫うように細い道を車で進むと、「これ以上は普通の自動車では上がれないから、こっちの軽トラに乗って!」と明るく声を掛けてくれたのは、お世話になるみかん農家さん “小清水農園” の小清水 千明さんです。
さすがにこの急斜面の山道を乗用車で登るのは難しい・・ 山を見上げると、濃緑の山肌一面に広がる鮮やかなオレンジ色の水玉模様!これ全てみかんの木とは驚きですが、凄い急斜面で本当に収穫できるのでしょうか? と不安になってしまいます。
「うちの農園は2ヘクタールくらいあって、15~16種類のみかんを育てています。今(11月中旬)は、宮川早生(わせ)と呼ばれる早く収穫できる品種の出荷がピークなんですが、あまりにも収穫する量が多くて・・・ 出荷するまでに熟し切ってしまうので、収穫作業のお手伝いは本当に有り難いんです。」と、収穫するポイントに行く車内で小清水さんが教えてくれました。しかし、こんな急斜面でよく作業できますね?
「急斜面だと土の養分が雨で流れるから、少ない栄養を実に蓄えようとしてみかんが甘くなるんですよ。更に、この山の斜面は日の出から日没までずっと太陽が当たる絶好のロケーションなので、どのみかんの木もよく育つんです。」と軽トラでギリギリの山道を軽快に運転しながら小清水さん。
収穫作業のポイントに付くと、すでに伊予銀行の選手たちは作業中!
話を聞こうにも、急斜面のみかんの木の下や木の中に入り込んで作業する選手たちの顔が見えません。
慣れた手つきでどんどんみかんを収穫していくのは、愛媛県松山市出身のご当地選手・庄司 奈々さん。さすがご当地選手ですね!と聞いてみると・・・
「私は松山市内の出身なんですが、みかんの収穫経験はほとんどないんです。小学校の校外学習でほんの3~4個採ったことがある程度ですから、みんなと変わりませんよ(笑)」と笑顔で話す庄司さん。
「前回、初めてみかんの収穫作業を体験して、愛媛県が誇るみかんの収穫はこんなに手間が掛かって大変なんだということが良く分かりました。」と、きつそうな体勢でも持ち前の体幹の強さを活かしてどんどんみかんを丸かごに入れていきます。
本職のキャッチャーのように深く腰を落とし、地面すれすれに実ったみかんを収穫しているのは安川 裕美さん。
「私は兵庫県姫路市の出身なので、愛媛県はご近所なんですが・・・ こんなに広いみかん畑を見たのは初めてでした。昨年、とても皆さんに優しくてもらって楽しく収穫作業が出来たので、今年も頑張ります!」と、すでに着てきたトレーニングパンツが土だらけになっています。
「私の故郷・シアトルでは、りんごの栽培が盛んなのですが、こんなにフルーツがたくさん実っている光景を見たことがありませんでした! 前回はまだヴェールズに正式加入する前だったので参加することができませんでしたが、今年はエキサイティングな体験をさせてもらって本当に嬉しい。きっと一生の思い出になると思います。」と話すリサ・モールデンさんは、本当に嬉しそうに収穫をしています。