FGの加点は3点。タッチダウン(TD)の6点に比べると物足りなさを感じるかもしれませんが、フットボールでは3点の差が勝負の分かれ目となることも少なくありません。佐伯選手はさらに第2Qでも40ydのFGを決めるなど、接戦となったこの試合を大いに盛り上げてくれました。
全日本選抜が先制したことで、この試合、どうやらおもしろい展開になりそうです。
対するアイビーリーグ選抜はまずはランプレー主体で攻撃を開始します。こちらは堅実に敵陣に攻め込むゲームプランかと思いきや、2回目の攻撃権でいきなりスペシャルプレー(特別にデザインされた攻撃パターン)を披露しこれを成功させます!
敵陣深くまで一気に攻め込むと、瞬く間にランニングバック(RB)のアレン・スミス(#39 Allen Smith)選手が逆転のタッチダウンを決めました。やられたらすぐにやり返す。そう簡単にモメンタムは渡しません!
第2Q。両チームともエンジンがかかりはじめます。互いの攻撃陣がランとパスを織り交ぜながら敵陣にじりじりと攻め込むのですが、これもまた互いの守備陣がハードヒットでこれを食い止める攻防が続きます。
そんな展開のなか、私たち観衆をアイビーリーグ選抜・クオーターバック(QB)のライアン・グローバー(#1 Ryan Glover)選手のパスが魅了します。そのボールの軌道が実に美しい。そもそも楕円形のボールをスクリュー回転で前方に投げること自体が難しいわけですが、これをいとも簡単、かつ正確にやってのけています。
ロングパスやショートパスを自在に操りスタンドを沸かせるいかにもアメリカの花形QBといった印象です。そのQBに安心してパスを投げさせるため今日も身体を張って奮闘するのがOLです。
アイビーリーグ選抜ではキャプテンの一人を務めるOLのジェイク・ガイドン(#72 Jake Guidone)選手を中心に「気は優しく力持ち」な男たちが、殺気立つ全日本選抜ディフェンス陣に対し懸命なプロテクションを繰り返します。試合中に紹介されることはまずない存在ですが、グローバー選手たちのパフォーマンスを全プレーで支え続けます。こうしてチームの勝利に陰ながら貢献する彼らの活躍に目をむけてみるとフットボールがますますおもしろくなってきますね。ちなみにアメリカでは、自分の娘を結婚させるならオフェンスラインをやるような男がよいとされているとか。
全日本選抜のディフェンスはチームの主将を務めるラインバッカー(LB)の趙 翔来選手(#44 富士通フロンティアーズ)が牽引します。LBは相手のラン攻撃をタックルで仕留め、パス攻撃をカットするディフェンスの要。この日も趙選手が守備体型の真ん中に陣取り、檄を飛ばし、アイビーリーグ選抜の攻撃に一歩も引かずに立ち向かっています。
ライスボウルで観客を魅了した、LBの小西 憂選手(#48 パナソニックインパルス)や、ディフェンスエンド(DE)のジョー・マシス(#0 Joe Mathis)選手もここ一番の激しいコンタクトでエンドゾーンへの侵入を許しません。前半ラストプレーでは、アイビーリーグ選抜が放ったタッチダウン(TD)狙いのロングパスを、DB コックス選手がインターセプトをするなど、お互い意地でもモメンタムを渡さない気迫のぶつかり合いでスコアは膠着。
結局このクォーターでは全日本選抜がKの佐伯選手による2本目のFGで3点を取り返し、アイビーリーグ選抜7-6の1点リードで前半を折り返しました。
運命の後半戦
ハーフタイム。両チームともこの試合のために集められた混成メンバーのため、自チームの決めごとの再確認や、相手チームの情報収集と分析を入念に行ったものとみられます。もちろんこの試合に勝利するためですね。
多少時間を残した状況で、まずはアイビーリーグ選抜の選手たちがフィールドに戻ります。やや遅れて全日本選抜の選手たちが鋭い眼光で再入場。勝負の行方がどちらに転ぶかまるでわからないまま、試合は後半戦へ入りました。
第3Q。後半開始と同時に試合が動きはじめます。最初の攻撃権はアイビーリーグ選抜。ワイドレシーバー(WR)ジャック・ビル(#17 Jack Bill)選手のキックオフリターンによるビッグゲインで勢いをつけるとQBグローバー選手が再びテンポの良いパス攻撃で敵陣深くに攻め込みます。パス、パスと繋いで最後はRBのイザヤ・マルコム(#33 Isaish Malcome)選手がエンドゾーンに持ちこんであっという間にTD!。
マルコム選手は身長165cmと上背は小柄ですが、その肉体は筋骨隆々。ボールを運ぶ彼に全日本選抜が次々とタックルを仕掛けますが、低い姿勢でこれを弾き返して前に前に進んでいきます。RBは倒されるまで走る足を止めないのが鉄則といわれますが、彼はそれを120%実践しています。全日本選抜のディフェンスは彼に大いに手を焼いており、アイビーリーグ選抜は確実に前に進めたい状況では、マルコム選手にボールを持たせていたようです。