稽古や試合、練習会や講習会など、年間を通じて様々な行事が実施される大道場ですが、取材したこの日は、全日本実業柔道連盟の選手たちが集まっての合同練習が行われていました。名だたる企業の名前を背にした屈強な柔道家、大学の柔道部員、海外から参加している柔道家たちなども参加した練習会は、ざっと見ても200人はいるでしょうか?指導員の掛け声と共に一斉に正座して、上座に設置された嘉納治五郎師範のお写真に向かって礼をします。
大道場の上座には、嘉納治五郎師範の写真が飾られていて、一段高くなった空間には嘉納師範が練習を一望できるように椅子が設置されています。柔道の創始者・嘉納治五郎師範に稽古を見て頂いている緊張感が、選手たちの動きを更に高めているように感じます。
先ほどインタビューをさせていただいた、講道館第5代館長の上村 春樹さんも柔道衣に着替えて選手たちの動きを見守ります。
上村館長は、1976年モントリオールオリンピックの柔道無差別金メダリストでもある、世界的に有名なアスリート!腰には紅帯が巻かれています。紅帯は九段、十段だけが締めることを許される帯。オリンピック全日本チームの監督など、選手強化に長く携わられていた上村さんは、真剣な眼差しで練習の様子を見ては気になる選手に技術指導していました。
選手たちが行っていたのは乱取り。試合時間を想定し、ブザーが鳴るたびに自分で選手を見付けては、様々な技を掛け合いながら自分を高めていきます。フランス、スロベニア、トルコなど世界各国のゼッケンを付けた選手たちも、それぞれで相手を見付けては汗だくになって乱取りを続けていました。
とりわけ大きな身体を巧みに使い、寝技に持ち込んでいる柔道家がいます。背中のゼッケンを見ると・・・ 金色に輝いています。えっ!チェコの英雄・Lukas KRPALEK(ルカシュ・クルパレク)選手ではないですか!
クルパレク選手は、東京オリンピック100kg超級で金メダルを獲得。2016年のリオ・デ・ジャネイロ大会では100kg級の金メダリストでもあるんです。2023年5月にドーハで行われた世界選手権では、階級を100kg級に戻して銀メダル。来年のパリオリンピックでも有力な金メダル候補として、チェコ国民の期待を一身に背負っている選手です。
そんな柔道界のレジェンドが、200名近く集まった柔道家たちと乱取りを繰り返す姿に驚いていると、「日本の選手は技術が高く、得意な戦術も様々です。こういった選手たちと練習することで、国際大会でどんな選手と対戦しても対応できるようになるのですね。ですから、クルパレク選手に限らず世界中のナショナルチームの選手たちは、度々講道館に来て日本人選手たちを相手に練習しているのです。」と上村館長が教えてくれました。
最上階の8階には、大道場を一望できる観覧席が四方に設置されていて、この日も国内外を問わず多くの方が見学に訪れています。
先ほど、資料室で話しを聞いたアメリカ人男性ふたりを始め、大道場で練習をしている仲間を応援しに来たフランス人の友人たち、先程まで乱取りをしていたスロバキアから来日した柔道チームの子どもたちも熱心に練習を見守っていました。
帰り際には1階にある売店にも訪れていた見学者の皆さん。
漢字で書かれた柔道のTシャツや、キーホルダーなど、柔道の聖地を訪れた記念にお土産を買い求める人たちで賑わっていました。中には講道館のマークが刺繍された柔道帯などもあります!講道館で買った帯を締め、聖地で学んだことをいつでも思い出しながら母国の練習場で柔道に励まれるのでしょうね。
初心者も参加できる朝稽古
これほどまでに国内外から様々な人々が集まる、柔道の総本山・講道館。初心者の私たちも一度は体験してみたいとは思いますが、いきなり通って学ぶには・・・
そんなニーズに応えるべく、この夏、講道館では新しい取り組みが始まります!
その企画は “朝稽古”。誰でも参加できる短期間の体験は、7月 5日(水)から 7月11日(火)の7日間で行われる第1回と、7月31日(月)から8月 5日(土)の6日間で行われる第2回に分かれて設定されています。
講道館国際柔道センター 7階の大道場で柔道を体験出来る貴重な経験は、何と参加費無料!未経験の方には柔道衣レンタルもしてくれるのです。
午前7時から午前8時30分までと、これから陽が高くなり暑さが増してくる夏のまだ涼しい時間。少し早起きして通勤や通学前に身体を動かすと、夏バテ防止にも効果がありそう。一般の有段者の方々の練習を横目に自分たちもいつか黒帯をという気分も高まるかもしれません。
詳しい案内は、講道館ホームページで紹介していますので、是非クリックしてみて下さい。