東地区の首位打者を.409という高打率で獲得した、アジア大会金メダリスト。安打製造機の工藤選手に反撃の口火を切って欲しい! ビークイーン応援団が更に熱い声援を送る中。LA2028ではライバル・アメリカ代表エースとして工藤選手の前に立ちはだかるであろうメーガン投手は、緩急とアウトコースへの絶妙なコントロールを駆使する細心のピッチングを披露します。
しかし、2-2から甘く入ったチェンジアップをしっかりと捉えた工藤選手の打球は、あっという間に右中間を抜けるツーベース! 期待に応えて同点のチャンスを作って、内藤選手に託します。初球、バントの構えで入った内藤選手にスタンドからはどよめきが起こりますが、これで攻め方を迷ったレッドテリアーズバッテリーは四球を与え、無死一、二塁と一気に試合が動く予感。
両チームがタイムを取って円陣を組む中、両軍ベンチでは後藤投手と上野投手がウォーミングアップを始めるなど、一気に試合が慌ただしくなってきました。
タイムが解けて打席に入った藤田選手も初球はバントの構えをしますが、ウエストしてストライク。ここからヒッティングの構えに変えますが、今度はアウトコースにズバッと速球が決まって0-2と藤田選手を追い込んだメーガン投手。1-2としてからの勝負球は、やはりインコースのライズボールでした。何とかバットに当てた藤田選手でしたが、打球は力なくセカンドの前へのハーフライナー。これを掴んだ鎌田選手が素早くファーストに送球すると、離塁していた内藤選手が戻れずにダブルプレー! レッドテリアーズが絶体絶命のピンチを気抜けました。
両チームの千両役者に明暗 -終盤
5回裏、ついにレッドテリアーズが動きます。東京2020でブレイク、今では日本のエースとしてソフトボール界を背負って立つ後藤 希友投手をマウンドに送り出しました! 後藤投手は期待どおりにビークイーン下位打線を3者凡退に抑えてベンチに戻ります。
すると6回表、ビークイーンも世界中で “レジェンド” と称されている上野 由岐子投手をマウンドに送ります。昨日は「何をやっても上手くいかなかった。」と、自身の投球が満足できるものでは無かった上野投手でしたが、僅か1日で見事に調整! こちらも3者凡退でレッドテリアーズの攻撃を退けます。
千両役者が揃った朝霞中央公園野球場。バックの堅い守備を信じて後藤投手が、強力打線の逆転を信じて上野投手が、互いの持ち味を存分に活かしてアウトの山を築いていきます。
いよいよ最終回の攻防、千両役者の演目も大詰を迎えます。幕引きまでにビークイーンが見せ場を作ってのどんでん返しはあるのか? レッドテリアーズが逃げ切り、その瞬間に派手な見得を切るのか? 筋書きのない白熱したドラマに観客の胸も高鳴ります。
7回表のレッドテリアーズは、先制ホームランを放った原田選手との勝負です。日本代表チームメイト同士の対戦は、インコース3連投をいずれもフルスイングする原田選手。互いに日本代表のユニフォームを着て、激闘の東京2020を戦った2人の対決にスタジアムが湧きます。この勝負を、最後もインコース高めで空振りを奪った上野投手は、続く東京2020アメリカ代表のバッバ選手にたいしてもコーナーワークを駆使して見逃しの三振! 千両役者が実力通りの投球を見せてくれます。
2死となって迎えるは、LA2028に期待のかかる新星・下山選手です。“日米対抗ソフトボール2023” では一発を放つことは出来ませんでしたが、世界のレジェンドに対してどういったバッティングを見せるのか? カウント1-1からの3球目、アウトコース低めの難しい速球に負けず、しっかり振り切った下山選手の打球はあっという間に右中間のフェンスを越えるソロホームラン! 打たれた瞬間。上野投手はフィニッシュの体勢からしばらく動くことができません。
2-0と土壇場での追加点をもらった後藤投手が最終回のマウンドに上がります。一発のある藤田選手を一球でセンターフライに仕留めると、続く藤本選手も力ないピッチャーゴロ。後が無いビークイーンは応援団の大きな声援を受け、東京2020金メダリストの我妻選手が打席に入ります。
両軍ベンチ、スタンドから歓声が沸く中、我妻選手が放った打球はレフト前への浅いフライ! レフトのバッバ選手がしっかりとキャッチするのを見た後藤投手は、冷静にその方向を指差してニッコリ。
すると歓喜に走り寄ってきたレッドテリアーズナインに押しつぶされてマウンド間に倒れ込んだ後藤選手。起き上がってレッドテリアーズ応援席から投げ入れられた無数の紙テープを誇らしげに見つめた後藤投手は、1年間応援し続けてくれた応援団、会社の皆さんに深くお辞儀し、何度も手を振っていました。
感動のセレモニーの中で振り返る -トヨタ
5季ぶりの優勝(前身の日本リーグから)を果たしたレッドテリアーズの馬場監督は、「一緒にソフトボールを盛り上げていただき、有り難うございました!」と大観衆の前で第一声をあげました。日本代表選手を多く抱えるチームが、“ソフトボール界のために” という思いも担いながら栄光を掴んだこの第一声に、両チームのスタンド、選手たちから大きな拍手が湧き起こります。