動きの激しい試合にもかかわらず、ここまで両チーム交代なしというプライドをかけた優勝決定戦は、前半を終わって27-20とBLITZが更に差を広げて前半戦を終了しました。
両チームの知将が繰り出す次の一手 -第3Q
ストーマーズが橋本選手の個人技と、中町選手の正確無比なロングパスで追いすがれば、BLITZも池崎選手と島川選手の圧倒的なコンビプレーで引き離す! 両チームの持ち味を存分に発揮して始まった後半戦は、選手交代のタイミングが試合の流れを変えそうな雰囲気です。
2004年のアテネパラリンピック、2008年の北京パラリンピック、更に2012年のロンドンパラリンピックと選手として3大会連続出場を果たし、引退後はアシスタントコーチとしてリオパラ銅メダル獲得に貢献したストーマーズの三阪選手兼ヘッドコーチは、ベンチで静かに “その時” を思案しています。
一方のBLITZも、三阪選手と同じく選手として3大会連続のパラリンピック出場を果たし、リオパラでは監督として銅メダル獲得の責を果たした “ミスター車いすラグビー” の荻野選手兼ヘッドコーチが同じく両選手たちの動きを注意深く見守っています。
すると、橋本選手が小川選手と長谷川選手のブロックでパスコースをふさがれると、池崎選手が襲いかかってボールを取り合う激しいプレーが起こりました! このプレーで橋本選手がペナルティの一時退場となり、BLITZに試合の流れがグッと傾いてきました。
ストーマーズは、庄子選手と横森選手に代り、“東北ライン” の熊崎 敬選手(Class2.0+)と岩淵 鋼選手(Class1.5+)を投入すれば、BLITZも池崎選手と長谷川選手に代えて、田村 学選手(Class2.5+)と菅野 元揮選手(2.0)を投入してラインをリフレッシュ!
残り4秒で島川選手がペナルティの一時退場となり、数的有利にたったストーマーズでしたが、これまで大きな得点源となっていた中町選手のパスを交代した菅野選手が渾身のブロック! 42-32とこの試合最大となる10点差をBLITZが保ち、最後の8分を残すのみとなりました。
総力戦で一歩も退かない両チーム -第4Q
第3Q終了時と同じメンバーで始まった最終ピリオド。
BLITZは島川選手がボールを運んでディフェンスを引きつけ、スペースに飛び込む田村選手、菅野選手にボールをパスして得点を重ねれば、ストーマーズも橋本選手の独走や、中町選手を起点に熊崎選手がトライを挙げるなど両チーム一歩も退かない戦いを見せて会場を沸かせます。
点差を詰めたいストーマーズが遂にターンオーバーを奪うと、モメンタムを渡すまいとBLITZも荒武 優仁選手(Class2.5)と池崎選手を投入。すると今度は、池崎選手がロングパスに素早く反応してターンオーバーを奪うと、ストーマーズは三阪選手が自らコートに入ります。前半戦と打って変わり、目まぐるしく選手を入れ替えた総力戦を演じる両チームの選手たちに、会場からは「頑張れ!」「集中!」と大きな声援が送られました。
三阪選手がコートに入ったストーマーズは、立て続けにターンオーバーを奪い、点差を8点に詰めて更に激しいプレッシャーでBLITZに襲いかかります。
いよいよ残り時間は3分! ここで両チームはスターティングラインに戻って最後の力を振り絞って戦います。
両チーム、総力戦で一歩も退かない素晴らしい戦いを見せてくれた決勝戦、55-46でBLITZが逃げ切り、見事! 8年ぶりのクラブチーム日本一に輝きました。
全チームが笑顔の表彰式
全ての試合が終わり表彰式に臨んだ、選手・スタッフの皆さんには、全てを出し切った充実感に充ちた笑顔が溢れます。
各順位を称える表彰で最後にコールされたBLITZの選手たちには、最も大きな拍手が送られると、小川選手が優勝カップを高々と掲げてそれに応えていました。
そして、今大会のMVPにTOHOKU STORMERS・橋本 勝也選手の名が呼ばれると、少し驚いた表情で表彰に臨む橋本選手。2年連続でチームを準優勝に導いた圧倒的なアジリティとパワーは、パリパラリンピックでの金メダル獲得に期待の高まる活躍でありました。
また、今大会のClass別のベストプレーヤーも発表され、7クラスのベストプレーヤーを5チームの選手で分け合いました。この結果からも、今大会がいかに各チームの実力が拮抗していたかが分かると思います。
「圧倒的に強いチームがあっても良い。打倒BLITZを目標に日本の車いすラグビーのレベルが上がり、盛り上がれば。」と島川選手がコメントした通り、いよいよ今年の8月に迫ったパリパラリンピックでの金メダル獲得はもちろん、その先を担う選手たちの成長が楽しみな今年の日本選手権となりました。
<ベストプレーヤー>
Class0.5:長谷川 勇基選手(BLITZ)