色に例えてチームをひとつに
「僕たちはチームの状態を色で表しているが、自分たちがセーフティな状況にいたり、ゲームを支配するなど、良い状態にいたりすることを“ブルー”と言っている。“ブルー”でいつづけることが今週のテーマだった」と試合後に埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)坂手 淳史主将が試合後に語ったとおり、この日の試合では苦しい場面で埼玉WKの選手たちから何度も“ブルー”という声が聞き取れた。
2年連続でリーグ戦首位を独走。今年は16戦全勝と圧倒的な結果を残した埼玉WKだったが、リーグ戦で勝利した後の会見では「しんどい場面を一人ひとりで解決するのではなく、全員でコネクションを取って問題を解決していかないと」と何度か話していた坂手主将。この大一番を“ブルー”という合い言葉で乗り切ることをテーマにした。
2年連続で “横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)” との対決となった準決勝の第1試合は、リーグワン・ファーストシーズンを終え、ラグビーワールドカップ2023の激闘を経験してそれぞれが成長してきた証が色濃く出た一戦となった。
昨年と違う秩父宮ラグビー場
お気に入りのチームのジャージーを身にまとって聖地・秩父宮ラグビー場に集う。そんな光景が当たり前のようになってきた日本のラグビー観戦だが、この日の秩父宮はどこかが違う。
これまで正面ゲートをくぐった直ぐ右に陣取っていた、工事関係者が使う大きなプレハブが撤去され、ファンが集う広場になっていたのだ。この日は“唐揚げ祭り”と称して多くのキッチンカーが軒を連ね、ビールを片手に好みの店で買った唐揚げを美味しそうに食すファンの笑顔が集まっていた。
そんな広場の一角に、来るパリパラリンピックで金メダルを狙う “車いすラグビー” の体験ブースが!Journal-ONE編集部が取材した国内クラブチーム・TOHOKU STORMERSの三阪 洋行選手と若狭 天太選手が初夏の陽気とは思えない強い日射しの中でPRに汗を流していた。
15,464人のファンが待ちわびるグラウンドでは
一方、フィールドに入ると、その熱気はいつもと変わらず。昨年の同一カードと同じく1万5千人以上のファンを飲み込んだ四方のスタンドからは、晴天の下で着々と準備に入る選手たちへの熱い視線が注がれる。
練習には1月の試合で膝を負傷。戦線を離脱している横浜Eの正SH(スクラムハーフ)ファフ・デクラーク選手も給水係として姿を見せ、練習でも選手をサポートしていた。「あれほどの選手が、チームの力になりたいと思わせるチームは魅力がある。チームへの愛情があると」と、沢木 敬介監督が振り返ったとおり、この日の横浜Eは試合前から“何かやってくれそうな”雰囲気を醸し出していた。
一方の埼玉WKも、この試合で勝っても負けても残り2試合の現役生活となる “ラスボス” 堀江 翔太選手をはじめ。フランスW杯代表が多く集まる常勝軍団は、いつも通りに “ブルー” な状態でアップをこなしている。
リーグワンのチャンピオンズトロフィーが掲げられた花道から選手たちが再びグラウンドに現れると、会場からは大きな歓声。「ワイルドナイツ行け!」「イーグルス頑張れ!」と声援が飛ぶ中、試合開始を告げるホーンが鳴って激闘の火蓋が切って落とされた。