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東京2020レガシーを引き継いで

-国としての法整備、執行機関の創設があり、選手の強化体制が整備された。コロナ禍で国際大会を開催するという経験も含め、多くのレガシーが出来ました。-

コロナ禍の中で大過なく東京2020を開催し、それが次の中国の冬季五輪開催に繋がり、様々な大会も開催されるようになりました。

でも、東京2020は無観客。日本の中で大きく盛り上がるまでには至らなかった。

ですので、盛り上がりのレガシーを作るのに少し苦労しています。

もし、東京2020が普通に開催されていたら、皆さんの関心ももっと高かっただろうし、そうすれば「またやろうよ」と言うことになるかもしれない。オリンピックで少しは利益が出たかもしれない。

韓国はソウルオリンピック(1988年)の利益で、トレーニングセンターを作ってスポーツ振興をやっていた。

東京2020も東京都にお返しして残った剰余金で、スポーツ振興のための施設整備に当たられたのですが・・・。全く剰余金なんか無いので、そういう意味でオリンピックの後の盛り上がりを作るのに苦労しています。

-それでも、レガシーの一つである「選手の強化」についての予算は現状を維持できた。-

東京2020開催前、山下会長(日本オリンピック委員会会長)に、金メダルを30個取ってくれと言いました。(笑)

この数字には根拠があって、ロンドンオリンピックでイギリスは金メダル29個なんですね。

日本の5割強の人口であるイギリスが29個の金メダルなのですから、日本は50個、せいぜい40個は取れる計算なんです。

科学的なトレーニングでかなり合理的な選手強化が出来るようになりましたので、こちらの数値からも精緻なメダル獲得予想が出来るようになりました。大会前の予想では少なくともオリンピックで20~22個、パラリンピックでも15個取れるだろうと言っていましたので。

これも「スポーツ基本法」「スポーツ庁」があって出来ることなんです。

-その中で、日本スポーツ政策推進機構(NSPC)が果たす役割として、何が重要だとお考えですか。-

企業がオリンピック・パラリンピックに参加するのは、企業の社会的責任は勿論ですが、企業の一体感醸成に寄与していることもあると思います。

東京2020では、本当に多くの企業が選手を支援してくれて、58個のメダル、多くの入賞者が様々な企業から出たというのは素晴らしいことです。

スポーツ庁には、世界陸上、アジア大会、札幌招致と足を止めず、スポーツが持つ力を理解してくれた機運を逃すなと言っています。太平洋諸国14の国と地域へのスポーツ支援も継続するなど、外交的側面も続けていくことが必要ですしね。

バリアフリーについても、選手だけで無く市民も使えるものとして整備されました。スポーツに取り組むことも競争ばかりでなく、健康のため健康社会のために歩こうとか。

ようやく、政界や行政も理解を示してくれている。段取りを立てて積み重ねた成果です。

NSPCの役割ですが、先ず第一は政治・経済界・スポーツ界の横の連携を強めることです。

スポーツ界は閉鎖的なんですね。競技団体は自分たちだけが競技をしていれば良いと言う縦社会になっていました。

スポーツには大きな力がある。だからこそ政治や経済と連携しなければならない。それを実現するためにこの組織を作ったのです。

更に、スポーツ界の中も閉鎖的です。日本スポーツ協会(JSPO)、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラスポーツ協会(JPSA)の人事交流と言った横連携もありません。

たとえば、旅行業界では旅行に関係する団体が集まり、旅行業界としての政策要望を持って来ますね。でもスポーツ界は全くない。スポーツを政策と考えていない。競技をする団体だからスポーツ政策は関係ないと思っているんですね。

スポーツの横軸・プラットホームを作ろう。スポーツ界の経団連、全体のスポーツ政策を取りまとめて自分たちの考えを政界や財界に示していくことが一番の役割です。

-「スポーツ界のプラットホーム」非常にわかりやすいフレーズですね。機構(コミッション)という言葉も、プラットホームを想起しやすい。-

日本スポーツ会議所の方がもっとわかりやすいですけどね(笑)

今までは、スポーツを政策だと思っていなかった。「体育」の脇に「楽しみ・遊びのスポーツ」があったが、本来は逆ですよね。

「楽しいスポーツ」を用いて「体育」をするのが本質。それを「スポーツ基本法」で大転換させたんです。プロ野球と相撲も、自分たちをプロスポーツだと思っていない。興行だと。

そういった意味では、Jリーグがプロスポーツの意識を変えましたね。最近ではバスケットもそうですね。

そして、未来へ

-閣議決定においては、所謂「骨太の方針」で、多極化、地域活性化の文脈の中にスポーツの振興が盛り込まれました。ラグビーワールドカップ2019や東京2020の経験を活かしての期待が持たれます。-

例えば、経済産業省とスポーツ庁が共同で推進する「スタジアム・アリーナ改革」。

まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナのモデル施設として、2025年までに20拠点を選定する予定です。

また、「スポーツウェルネス」と言って、肉体的に健康で、精神面でも前向きな長寿社会をスポーツを通じて作っていこうという考えもあります。

このように、ハードからソフトまで色々と出来るのがスポーツですが、1964年の東京オッリンピックを契機に創設されたスポーツ少年団のような、目に見えるのものは難しいとは思います。

ユニバーサルデザイン、健常者・障がい者・高齢者が一つの施設で活動できると言うハードの整備もありますが、心の中のバリアフリーをしていこうというソフト面の取り組みなどは大切です。

地域の一体感を作ったり、地域をみんなで支えあうというのがレガシーです。ハードがないので分かり難いかもしれません。ですから、スポーツを用いた地域作りという言葉にすると、わかりやすいレガシーの表現になります。

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