「日本選手権本番は、当然この練習のとおりにはいきません。でも、繰り返しの練習を続けることで動きに余裕ができるため、実際の試合でも全体の動きを俯瞰しながらマークすべき選手をしっかりと追って対応できるようになるんですよ。」と、小川 晃生選手が、この練習の重要性を教えてくれます。
試合中、ベンチにいるときはいつも岸さんと戦術について “ひそひそ話” をしている東京2020・銅メダリストの倉橋 香衣(かえ)選手も、「私は、自分の対応できるゾーンで穴を空けないよう、全体を見渡しながらプレーしているんです。“ひそひそ話” は何を話したか記憶にないですけど(笑)、恐らく同じローポインターの選手の動きを見て、プレーの意図やさまざまな可能性を(同じローポインターの)岸さんと話しているんだと思います。」と笑顔でコミュニケーションの大切さを教えてくれました。
チーム躍進のカギはハイポインター
そして、日本選手権優勝にはハイポインターの攻守にわたる活躍は欠かせないところ。
峰島さんと若きエース・青木さんはもちろんですが、パワー全開のプレーが信条のニック選手の活躍こそが鍵を握っているといえるでしょう。
そのニック選手。50歳を超えているとは思えないスピーディーな動きでマッチアップしています。マッチアップの相手は息子のリオさんです!
「リオとプレーすると、いつも熱くなっちゃうんですよ。上手くプレーできないとリオに “何でそんな動きをするの!?” “なんでそれが出来ないの!?” と注意されるから、なにクソってね(笑)」とニックさん。実の息子、しかもカナダナショナルチームの息子と堂々と渡り合うニックさんの姿は本当に躍動しています。親子で真剣にスポーツできるという素晴らしい長所も車いすラグビーは持ち合わせているんだなぁと感心しながら魅入ってしまいますね。
リオさんのお陰で、ニックさんの日本選手権への準備も万端となりました!
午前中のハードワークを終えた中谷コーチ。「午前中の動きは、正月明けとしてはまずまずだったのではないでしょうか。今日、タカさん(乗松 隆由選手)がコンディション不良で休みなので、彼のラインが試せないのは痛いですが・・・午後は更に負荷をかけて、“秘密兵器” も投入して対策を万全にしていきます。」とのこと。
あれ? “秘密兵器” ってリオさんのことでは無かったのかな?と思いつつ、午後の練習まで一休みとなりました。
昼食後に激しさを増す練習!
昼食を挟んだ午後は、更に激しい試合形式の練習が続きます。
中谷コーチ、今度はご自身がハイポインター用のラグ車(車いすラグビー競技用の車いす)に乗りましたね・・・ 何と!コーチ自らが選手として仮想対戦相手に加わっての練習が始まりました。
ラグ車の操作って、本当に難しいんです。私やレポーターのNiinaも実車を体験したのですが、本当にラグ車が言うことを聞いてくれない・・・ 右腕と左腕を別々に素早く動かしながら繊細でスピーディーなチェアワークを行うことは本当に難しいんです。
しかし、中谷コーチはリオさんと同じくらい素早い動きで、どんどんAXEが課題とするポジショニングに突っ込んで行きます。中谷コーチとリオさんの2枚看板が相手になったことで、ユーティリティプレーヤーの羽賀さんや、ローポインターの要・リオ大会銅メダリストの山口 貴久選手へのプレッシャーが一気にキツくなったようです。
「今日は、動きが俊敏なローポインターであるタカがいないので、その役目を僕が担わなければならない。午後は自分の限界に挑戦します。」と言っていた山口さん。ゾーンディフェンスで鉄壁の守りをしながら、スペースに積極的に切り込んでボールを運ぶ動きを繰り返しています。
練習後には、「今日の練習は想定以上にキツかった・・・ でも、日本選手権でこれくらいの動きをすれば、もっとチームの勝利に貢献できると思いますから本番も頑張ります。」と高松合宿で見せた休憩なしの長距離運転に負けないハードワークを誓っていた山口さんでした。
「今日は、心身共に追い込んで良い練習が出来ました。」と羽賀さんも、練習後に手応えを話します。「私たちのようなアスリート雇用選手同士は平日でも連携プレーの確認ができますが、フルタイム勤務の選手とは連携プレーの確認をする最後の機会です。本番前の最後のチーム練習で、これだけ出来たのは良かったです。」と、今日の成果を教えてくれました。
普段は、加圧トレーニングを取り入れた追い込む練習も欠かさない羽賀さんですが、それでも今日の練習は結構キツかったんですね。
遂に第2の秘密兵器が明らかに!
午後の練習が始まってから暫くすると、新しい選手がやって来ました。どこかで観た気がするなぁと遠くから眺めていたら何と!リオ、東京2020の銅メダリスト・池崎 大輔選手です。中谷コーチが言っていた “秘密兵器” とは、池崎さんのことだったんですね!