DPの守備者(FP/Flex Player)である伊東投手がマウンドに上がる前に、「DPがFPを兼ねてピッチャーに入ります。」とコールされることで、伊東投手は1球も投げること無く藤田投手がマウンドに上がれるソフトボール独自の戦略が採れる制度なのです。
事実上の先発となった藤田 “投手”。今シーズンはここまで全て中継ぎで5試合に登板、自責点1、奪三振8と好調ながらも投球回数は僅かに9イニング。1試合最長で2イニングまでのショートリリーフが続いています。
スタミナが心配される藤田投手でしたが、レジェンド二刀流はお構いなし!先制タイムリーにソロホームランと乗りに乗った藤田投手は今季最長の4イニングを無失点に抑え、流れを完全にビークイーンのものにしてマウンドを勝股投手に譲りました。
この日、ビークイーンは上野投手、我妻捕手、内藤選手という金メダリストの主力が帯同せず、若手の力でレッドテリアーズに挑んでいました。交流戦最中のインタビューで「上手な世代交代が課題」と話していた上野投手が話していた通り、強豪・レッドテリアーズに敢えて若いメンバーで挑むことで、チーム力の底上げを狙っているようですね。
東軍屈指の好投手に襲いかかる
5回から藤田投手の後を継いだ勝股投手も、日本女子ソフトボール界期待の投手です。
ここまで8試合に登板して勝ちっぱなしの7勝!39回を投げて自責点6、奪三振53の防御率1.08と抜群の安定感を見せています。
終盤に差し掛かり、東軍の首位を走るビークイーンを相手に0-4の劣勢となっていたレッドテリアーズでしたが、「特に焦ってはいませんでした。後半で追いつける自信はありました。」と鎌田 優希主将が試合後に話していたように、レッドテリアーズベンチに焦りの色はありません。
すると、勝股投手の代り端に襲いかかるレッドテリアーズ打線。
先ずはここまで西軍トップの6本塁打を放っている、下山 絵理選手のパワーが炸裂します! 「この回、逆転するぞ!」と応援団の声援を背に受け、強烈な打球を右中間に放って2塁打とすると、続くDPの藤家 菜々子選手も三遊間を豪快に破るヒットでチャンスを広げます。
打順は先頭に戻り、西軍・首位打者の石川選手が打席に入ります。安打製造機・石川選手がレフトへ技ありのタイムリーヒットを放って2点を返すと、今シーズンからレッドテリアーズに移籍した金メダリスト・原田選手も左中間を深々と破るタイムリーチーベースで3点目!
続く、アメリカ代表銀メダリストのニクルス選手もレフト前ヒットで続くと、原田選手は一気に3塁ベースを蹴って本塁にヘッドスライディング!地面を叩いて喜びを爆発させた原田選手が、同点のホームを踏みました。
このクロスプレーでしっかりと2塁を陥れていたニクルス選手は、更に捕手の落球の隙をついて3塁に進みます。結果、この好走塁が続く5番・切石選手のレフト前ヒットを逆転のタイムリーにすることとなり、この回一挙に5点を奪って大逆転に成功しました。
千両役者の登板に東軍屈指の打線が対峙
5-4と逆転に成功したレッドテリアーズは、6回からマウンドに後藤 希友投手を送ります。
東京2020大会での活躍で、その名を全国に轟かせた後藤投手。“世界を代表する投手” として、今シーズン12勝無敗、防御率0.19と驚異の成績で他の追随を許しません。
逆転を許したとは言え、日本代表を揃えたビークイーン打線も “世界を代表する打者揃い” です。僅か2イニングではありましたが、最強の盾矛対決に、観戦に訪れた500名近くのファンは固唾を呑んで一球一球の対決を見守ります。
特に最終回、ビークイーン中軸打線 vs 後藤投手の対戦は、その空気感にスタジアム全体が圧倒されました。
先ずは、3番・工藤選手との対戦。0-2と後藤投手が有利なカウントに追い込みますが、工藤選手も負けてはいません。インサイドへの厳しいボールに対し、巧みなバットコントロールを見せた工藤選手の打球はライト線を破るツーベースヒット!無死2塁と同点のチャンスを作ります。
ここで打席に入るのは、“二刀流” 藤田選手。マウンドと打席を結んだ空間だけが、一流アスリートが放つ特別な雰囲気を出しています。0-2と追い込んで内外角に揺さぶりを掛ける後藤投手に藤田選手も迷わずバットを出してカット!お互いに顔を見合わせてニヤリとするシーンに、緊張の中にも勝負を楽しむ姿が見て取れます。
カットすること4本、結着は藤田選手がショートフライを打ち上げて後藤投手に軍配!応援団の声援がどこか遠くに聞こえるような、名勝負にスタンドからは大きな拍手が沸き起こります。
続く炭谷選手も、次世代のJAPANを背負って立つスラッガー。パワー溢れる炭谷選手の放った打球はライト後方を襲う大飛球!一瞬、スローモーションになったようなフィールドでは、名手・原田選手が必死の背走を見せてナイスキャッチ!このプレーにもスタンドからは大きな拍手が沸き起こりました。