柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、世界中の柔道家たちが憧れる畳で稽古をする初心者の筆者・矢澤昌之(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影
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「今回の朝稽古は、講道館における新しい取り組みなんです。これまで柔道に馴染みのなかった方に、どうやって柔道の楽しさを知っていただくか。私たちもこのチャレンジとてもワクワクしています。」と、有川先生も本当に楽しみにされていたようです。

早速、ウォーミングアップを兼ねて、前転・後転という器械体操を取り入れた準備運動をやってみることになりました。前転・後転は、小学校の最初の体育で習う運動ではないでしょうか?マットの上で喜々として何度も転がっていたことを思い出します。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、初心者稽古の前転が出来ずに苦労する筆者・矢澤昌之(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

「簡単な運動で身体を温めるんだな。」と思いながら前転をしますが、上手く回れません。頭を下げて首から真っ直ぐに畳に着けることが出来ないんです!

最初の一回りで思わず自分に笑ってしまいます。「え?こんな簡単な運動も出来なくなっているの?」と、勢いを少し付けて回ってみますが上手くいきません。。。更に2度回っただけで目がぐるぐる回ります。ふらふらで周りを見ますと、他の3人も苦戦していました。

「私も、今でも前転後転すると目が回りますよ。難しいと思ったら無理をせず、首を左右に逃がしてあげると少し楽に回れるようになりますよ。」と笑顔でポイントを教えていただいたのは、もう1人の藤中 拓馬(五段)先生です。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、初心者指導をする藤中拓馬先生は五段の腕前(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

藤中先生は、以前取材(世界中から人々が集まる “柔道の聖地” ~ 講道館(東京))した際、少年部道場で指導されていました。その時の明るい笑顔に、ちびっ子柔道家たちがとても懐いていたシーンが印象的でした。さすが、ちびっ子に教えているだけあって、とても分かりやすい指導です。

飽きないように工夫されたカリキュラム

朝の7時から始まる朝稽古。冒頭の20分余りを黒帯も初心者も、そして先生方も全員一緒に準備運動やストレッチを行います。「黒帯の方でも久しぶりに稽古すると、怪我をする可能性があります。ですから、ストレッチには時間を掛けなければならないんですよ。」と藤中先生。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、経験者も初心者も全員で入念にストレッチする筆者・矢澤昌之(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

早朝、深く息をしながら身体を伸ばすととても気持ちが良いです。この7日間で最も身体が痛かったのは2日目のこの時間でしたが、ゆっくりと時間を掛けて身体を起こし続けたお陰で、3日目からは徐々に身体の痛みも取れていきました。朝稽古が終わった後でも朝の少しの時間を使ってゆっくりとストレッチすることで、身体を健やかに保てることを知る良い気付きをいただきました。

また、「柔道の基本は受身です。投げられた際の衝撃を和らげる大事な技術なのですが、この練習はとても地味なので、1週間ずっと受身の練習だけでは柔道の面白さが伝わりませんよね。」と話すのは有川先生。私を含めた初心者の皆さんが抱いている柔道の印象は、豪快に投げを打つ柔道家の姿です。ですから、どうしても「痛そうだな。力を使いそうだな。」と考えてしまいますが、有川先生の受身に練習時間を費やすという話しを聞き、「へぇ~そうなんですか!」と感心しています。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、初心者に説明する有川勇貴先生は六段の紅白帯を締める(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

後ろ受身、横受身、前受身、前回り受身と4通りある受身を全て習得するのは難しいですが、日ごとに少しずつ変化するカリキュラムで教えていただきました。これならば、全日参加される方や、間を空けて参加する方も、その日その日で新しいことを学ぶことが出来ます。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、受身の練習で華奢な女性に投げられる筆者・矢澤昌之(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

「衝撃を和らげることも大事ですが、一番大切なことは後頭部を守ることです。」と、受身の本質をわかりやすく教えていただいたのは、向井 幹博(七段)先生です。向井先生は、2016年のオリンピック・リオデジャネイロ大会90kg級で優勝したベイカー 茉秋選手をはじめ、2021年のオリンピック・東京大会100kg級で優勝したウルフ・アロン選手、78kg超級、無差別において世界選手権3大会優勝の朝比奈 沙羅選手などを育てた名指導者! また、指導者に向けた著書も出されているんです!柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、受身の仕組みを丁寧に指導する向井幹博先生(七段)は何人もの五輪メダリストを育てた名指導者(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

向井先生から「ダルマのように丸まってみて下さい。その体勢で相手の方は四方八方から転がしてあげてください。頭を畳に着けることなくゴロゴロと前後左右に揺れることで、受身を取る感覚を掴んでもらえます。」と教わって実践。丸くなっていれば力を入れずとも、頭が畳に着くことなく、勢いを殺すことができるのですね。やってみて初めて受身を取る際の身体の使い方がわかりました。楽しみながら仕組みやコツを学ぶことで、技が自然と身に付いてくるという訳なんですね。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、受身の仕組みを退官する練習でダルマのように転がる筆者・矢澤昌之(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

そして、技術以上に世界中の人々を魅了するのが、精神修養です。これについても、毎日ひとつずつ “柔道の精神” を教えていただけるのです。

例えば、大道場の壁に掲げられている “嘉納治五郎師範遺訓” に書かれている柔道の本義と修行の目的について有川先生が解説される時間もありました。「修行によって “精力善用” の原理を身につけて、知徳を磨いて人格の完成を図り、”自他共栄” を達成するために尽くすことが柔道の本質なんです。」と、外国人の参加者にも分かるように藤中先生も英語で説明されています。

この朝稽古への参加を勧めていただいた仮屋先生もそうですが、藤中先生、有川先生と皆さん英語が堪能なんです。聞くと、青年海外協力隊の一員として柔道の指導をするために仮屋先生はシリアに、藤中先生はインドネシアへの渡航歴があるなど、世界各国へ柔道指導に赴かれる先生が多いのも講道館の特徴の一つ。エジプトから参加していたムスタバさんも、熱心に嘉納師範の教えや技のかけ方を質問。気になっていた疑問が解消して、満足げな笑顔を見せていました。柔道の総本山・講道館が初めて企画した朝稽古、青年海外協力隊員として海外での柔道指導経験がある仮屋力先生は六段は英語が堪能(講道館大道場にて)-Journal-ONE撮影

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