アメリカ代表は、4回表にマウンドを降りたケイグル選手が後藤投手の足元を抜く中前打で初めてランナーを出し、続く5回には先頭の#17 Tailor PLEASANTS (テイラー・プレザンス)選手がチーム2本目のヒットで出塁すると、#22 Alex HONNOLD(アレックス・ホナルド)選手が三振に取られたところで宇津木 麗華ヘッドコーチがマウンドに向かいます。
後藤投手を労うマウンドでの円陣に向かい、ひとりの選手がマウンドに向かってくると、横浜スタジアムはこの日一番の歓声に包まれました!
「ピッチャー、上野 由岐子。」と追いかけるようにアナウンスが球場に響くと、どよめきと共にその歓声は更に大きくなります。そうです!日本が誇るソフトボール界のレジェンド・上野 由岐子投手の登板です!7連続を含む8奪三振を奪い好投し、ベンチに戻る後藤投手にも大きな歓声が向けられました。
上野投手は、カーニー選手を三振に打ち取り、打席にはハンセン選手を迎えます。ハンセン選手のパワーが勝つか?上野投手の球威が勝るか?ハンセン選手が放った打球は右方向に強いライナーに!ライト頭上を越えるか!?
この打球に一直線で背走したライトの中川選手がナイスキャッチ!バックもレジェンドを盛り立てて得点を許しません。両国の豪華投手リレーで試合は完全な投手戦になってきました。
両チーム円陣を組む5回裏の攻防
5回裏には手に汗握る攻防が繰り広げられます。日本代表の先頭打者・我妻選手が2打席絵連続となるヒットをライトに放つと、第1戦で好走塁を見せた#4 須藤 志歩選手(豊田自動織機シャイニングベガ)に代わります。この後、失策でチャンスを広げて無死一、三塁として、打席には小技もできて長打も打てる、万能プレーヤーの原田選手を迎えます。
アメリカ代表の選手たちがマウンドに集まると、日本代表の選手たちもベンチ前に集まり、ヘッドコーチ、ランナーコーチと共に作戦を確認します。
強行か?スクイズか? フルカウントからナイシャ投手が投じた外角への投球を見送る原田選手の判定はストライク!先ずは、ナイシャ投手がワンアウトを奪います。
続く2番・唐牛 彩名選手(日立サンディーバ)は、スクイズも考えられる場面です。ここで日本代表のサインはランエンドヒット! しかし、ナイシャ投手の重いライズボールに、唐牛選手は力無い投飛に打ち取られてツーアウト。
内藤選手の一打に期待が掛かります。初球、2球目と果敢にバットを振る内藤選手!打球はバックネットへのファールです。タイミングが合っているかに見えた内藤選手でしたが、ナイシャ投手の速球に押されてまたもや投ゴロ。最大のピンチを切り抜け、ベンチ前でアメリカ代表のテンションが最高潮に達しました。
レジェンド・貫禄の投球にアメリカ代表も脱帽
「ピンチの後にはチャンス有り。」と言われるゲームの流れを期待するアメリカ代表でしたが、やはりレジェンド・上野投手の投球には為す術がありませんした。東京2020で金メダルを獲得してから1年、脚の痛みを中心とした様々な故障を直すために登板の無かった上野投手は以前のインタビューで、「この1年、しっかりリカバリーしてきた甲斐があって余裕ある投球ができています。」と話していた通り、奪三振4を含む打者8人をパーフェクトに抑えるリリーフを見せた上野投手を、10,522人の観客が大きな拍手で讃えていました。
「とてもエキサイティングな試合ができて満足しています。」と話すのは、アメリカ代表のJohn Rittman(ジョン・リットマン)ヘッドコーチ。勝敗も大事ですが、経験を積むことが何より大事というリットマンHCは、「日本は初めてですが、皆さんとても親切にしてくれて滞在をとても楽しんでいます。」と自らもとても良い経験になったと振り返ってくれました。
Road to 2028
全日程を終了した日本代表とアメリカ代表の各選手たちが、マウンド前に集まって記念撮影に臨みます。選手たちの前に鮮やかなイエローのソフトボールで浮かび上がった文字は “LA2028”。
そうです!東京2020以降、競技種目から除外されてしまった野球・ソフトボールの復活をアピールする大会でもある日米対抗ソフトボール。ここに集まった選手、関係者はもちろん、各国の代表選手たちやそれを目指して日々プレーをする全ての選手、関係者の悲願でもある、オリンピック・ロサンゼルス大会への想いをファンと共に共有するスポーツイベントでもあるのです。
代表のユニフォームに袖を通す責任と栄光、それを次世代に繋げ、全世界が注目するオリンピックという大舞台でプレーを見てもらう。そこで、ソフトボールの魅力を更に多くの人々に知ってもらい、競技人気を盛り上げていく。そういった願いが込められたこの大会。