準決勝でもイタリアのPARLATI Christian(クリスティアン・パルラティ)を反則一本で破り、ジョージアのMAISURADZE Luka(ルカ・マイスラーゼ)選手との決勝へ臨みました。
マイスラーゼ選手は、5月にドーハで開催された世界選手権を制覇した現チャンピオン。同大会で自身初の世界選手権でメダルを獲得した村尾選手がどう挑むのか? パリ五輪の前哨戦として最も注目される対戦のひとつです。
ここまで両選手共に試合時間の早い展開で勝ち進んできました。それ故、会場のファンは序盤に試合が決すると予想して固唾を飲んで見守ります。開始から1分半、試合が中断されることなく組みながら進む攻防は静寂に包まれる中で進んでいきます。大きな東京体育館には2人の足さばきが発する畳の擦れる音だけ。
試合時間の半分を切ったところで待て。マイスラーゼ選手に極端な防御姿勢で指導が出ると、ようやく村尾選手のファンから大きな声援と「ファイト!」という声があがります。払腰、内股と多彩に攻撃を仕掛ける村尾選手に対し、攻撃の機会を逸したマイスラーゼ選手に2回目の指導が出て後がなくなります。
ゴールデンスコアに入り1分45秒に繰り出した村尾選手の大内刈が認められないと、その5秒後に今度は内股で見事に一本勝ち! 激戦を終えた瞬間、しゃがみ込んで大きく息を吐く村尾選手は最後まで相手に礼を尽くす “令和の三四郎” の名に違わぬ素晴らしい戦いで金メダルを獲得しました。
パリ五輪へ視界良好! –男子73Kg
登場と同時にこちらの大きな歓声を浴びていたのは、男子73kg級パリ五輪内定選手の橋本 壮市選手です。2回戦から登場した橋本選手は、初戦でジプチのHOUSSEIN Aden-Alexandre(アデンアルエザンドレ・フセイン)選手、3回戦でモルドバのOSMANOV Adil(アディル・オスマノフ)選手、準々決勝で中立選手団のLAVRENTEV Danil(ダニール・ラヴレンテフ)選手、準決勝でジョージアのTERASHVILI Giorgi(ジョルジ・テラシヴィリ)選手を下して決勝に駒を進めます。
ここまで試合時間の4分を目一杯使って勝ち進んだ橋本選手に立ちはだかるのは、アゼルバイジャンのHEYDAROV Hidayat(ヒダヤト・ヘイダロフ)選手です。この試合、組む前に「シャァ‼」と気合いを入れた橋本選手のこの試合に掛ける気は気が感じられます。
組手を取れない状況にわずか18秒で互いが指導を受け、技の掛け合いが一気に早まります。息をつかせぬ攻防が続き、残り40秒を切って再び互いに指導が出て後がなくなった両選手の技の掛け合いに悲鳴が上がります。ゴールデンスコアに入り21秒、橋本選手が足元をすくわれ、引込返で一回転させられての技あり。橋本選手は銀メダルとなりましたが、世界ランク1位と紙一重の戦いを見せてくれました。
男子81kg級パリ五輪内定選手で、東京2020金メダリストでもある永瀬 貴規選手も2回戦から大きな歓声を背に受けて登場。初戦を順当に勝ち進み、続く3回戦で9月のグランドスラム・バクー2023の金メダリストであるアゼルバイジャンのTCKAEV Zelimaze(ゼリム・テカエフ)選手との対戦に臨みます。
手足の長いテカエフ選手にも積極的に懐に入って落ち着いた攻めを見せる永瀬選手でしたが、2分を過ぎたところで双方に消極的な姿勢で指導。とにかく手数で攻める姿勢を見せて指導を出させたいテカエフ選手に、残り5秒で2回目の指導を受けた永瀬選手は、後のない状況でゴールデンスコアに入りました。
徐々に防戦が目立ち雲行きが怪しくなった永瀬選手は、延長1分30秒を越えたところで首抜きによる指導を受けて反則負け。厳しい3回戦敗退という結果になりました。
講道館が紡ぐ世界との絆 -8年間共に歩んだ教え子の一戦
Journal-ONE編集部が “柔道の聖地” 講道館を取材した際、420畳もある柔道家たちの憧れの場所・大道場には、日本は勿論、海外から来た多くの柔道家たちが寸暇を惜しんで稽古に励んでいました。
その際、大きな身体のブルガリアの柔道家を「小志田先生の息子です。」と紹介されていました。その時は、国際結婚をされた講道館国際部長の小志田 憲一(七段)さんの実子だと思っていたJournal-ONE編集部。しかし、この大会で ”息子” と紹介された意味が分かると共に、柔道の普及に努める講道館が紡ぐ世界との絆の深さを知ることになりました。
100kg級に出場していたブルガリアのDICHEV Daniel(ダニエル・ディチェフ)選手は、8年前に小志田先生に師事。日本大学に留学しながら猛練習を重ね、現在はSBC湘南美容外科柔道部に所属しています。世界選手権出場6回、グランドスラムは今回で23回目の出場となるダニエル選手は33歳を迎える来年のパリ五輪がオリンピック出場の最後のチャンスとなります。