更に、男子60kg級の永山選手が3回戦を勝ち上がり、女子63kg級の髙木選手も試合に臨もうとする中で、ウルフ選手の試合時間は延長時間2分40秒を超える大熱戦となります。これだけ周りで試合が進む中で戦い続けるウルフ選手の体力と精神力が、いかに並大抵のものではないかということが良く分かります。
「ウルフ行け‼」と歓声が飛ぶ中、攻め続けていたと思われたウルフ選手に消極的な姿勢の指導が出て延長3分5秒で反則負け。この壮絶な戦いを終え、余力までを出し尽くしたウルフ選手は続く敗者復活戦でオランダのコレル選手に一本を喫し、パリ五輪出場への道はとても厳しくなってしまいました。
ウルフ選手の試合中、女子63kgでは準々決勝。真っ先に勝ち上がった髙木選手に続き、山口選手もゴールデンスコア4分を超える戦いを制して準決勝へ駒を進めます。そして、いよいよ日本選手同士の対決! 代表候補最右翼の2人、髙市選手と堀川選手が激突する戦いに会場の視線が一気に集まりました。ゴールデンスコアに入っても互いに決め手を打てない緊張感溢れる一戦は、髙市選手が反則勝ちで辛くも準決勝へのキップを手にしました。
男子60kg級に会場騒然 -準々決勝・準決勝
準々決勝の最初に登場した髙藤選手は、開始20秒で相手に投げられて技あり。先制を許す苦しい展開となります。イタリアのCARLINO Andrea(アンドレア・カリーノ)選手は、すばしっこく技をかけては逃げる柔道を展開。試合時間残り50秒、遂に髙藤選手が仕掛け技ありを返したかに見えましたが無効! 会場からは悲鳴が起こります。
絶体絶命となった残り10秒、ついに相手が出した右足に髙藤選手が鋭く反応すると、カリーノ選手が一回転! 一本で大逆転か!? と思われたが技ありに変更されます。再び会場が騒然とする中でゴールデンスコアに入ることになりました。二度の不利な判定に会場の喧噪が頂点に達する中でも、髙藤選手は全く表情を変えることなく淡々と相手と組み合います。この辺の精神力がオリンピック金メダリストなのでしょうか。
すると延長35秒、髙藤選手はカリーノ選手が仕掛けた大外刈をかわすと、そのまま身体を預ける浮落で芸術的な一本!大逆転の瞬間に小さく拳を握りしめた髙藤選手が大歓声を上げて興奮する大観衆の前で準決勝進出を決めました。
続く準々決勝の試合は、中村選手とアゼルバイジャンのAGHAYEV Balabay(バラバイ・アガエフ)選手の対戦。互いに消極的な姿勢で指導2つとなりますが、で残り1分16秒で中村選手がアガエフ選手の隙をとらえて背負投で一本!髙藤選手との日本選手同士の対戦が決まりました。
もう一つの準々決勝は永山選手とジョージアのCHKHVIMIANI Lukhumi(ルフム・チフヴィミアニ)選手との対戦。試合時間1分32秒を残してチフヴィミアニ選手に指導がひとつと膠着した展開が続きます。試合時間1分を切ったところで徐々にチフヴィミアニ選手が疲れを見せる中、ゴールデンスコアに突入しての31秒、ついに2枚目の指導が出て後がない状況へと攻め込んだ永山選手。ここから怒濤の投技3本を打った永山選手に対し、一度も攻められなかったチフヴィミアニ選手が反則負け。永山選手が準決勝に進出しました。
準決勝に日本選手が3人。パリ五輪の出場権はたったの1つ。国士館大の仲間から応援歌で声援を受けた中村選手は、東京2020金メダリストにもひるむこと無く果敢に投げを打って攻め込んでいきます! 髙藤選手の体が宙に浮き、会場から「わぁ!」と声が上がりますがそれを耐えた髙藤選手。今度は1分50秒に髙藤選手が内股すかしで技あり! 中盤で髙藤選手がリードします。
残り1分を切り、互いの技を仕掛け合う中で双方の応援団から「よいしょ!」「よいしょ!」と大きな声がかかります。残り1秒、髙藤選手が消極的な姿勢で指導を受けますがここで試合終了。髙藤選手が先に決勝へと進みました。
続く準決勝第2試合は、永山選手と中立選手団のBLIEV Ayub(アユブ・ブリエフ)選手です。頭ひとつ高いブリエフ選手にも果敢に攻める永山選手は2分、内股で技ありを奪い試合を優勢に進めます! 残り15秒で偽装的な攻撃で指導を受けますが、このまま逃げ切った永山選手が決勝に進出。ついに、髙藤選手と永山選手が決勝でパリ五輪代表の座を決することとなりました。
髙藤選手に敗れはしましたが、中村選手は3位決定戦を崩袈裟固で一本勝ちして銅メダルを獲得。60kg級の層の厚さを見せ付ける大会となりました。
63kgもクライマックスへ -準決勝
準決勝第1試合は日本人対決となりました。講道館杯優勝の山口選手に全日本ジュニア柔道体重別選手権大会優勝の大学2年生、若い髙木選手が挑みます。山口選手が技ありで前半を優位に進めますが、スタンドからは「焦らない、まだまだ!」と髙木選手への声援が起こります。