この直後、選手の負傷確認で時計が止まる中、大スクリーンでは選手やベンチを映して観客を楽しませてくれました。その中に映し出されたのは、サンゴリアスのディレクター・オブ・ラグビー(コンサルティング)としてスタンドで試合を観ていたエディジョーンズ(Eddie Jones)さん! この3日後に日本代表の次期ヘッドコーチに再就任することが決まったエディさんでしたが、まだ発表前の会場からは大きな拍手! 日本で開催されたラグビーW杯2019で日本代表を初のベスト8に導いたその手腕に誰もが期待している証拠です。
この後、膠着状態が続いた試合展開は後半25分、スピアーズのFBファンデンフィーファー選手のトライで40-21と動き始めると、直後の30分には地道にアタックを重ねるサンゴリアスと、ディフェンスラインをしっかり保ってディフェンスするスピアーズの選手たちの僅かな隙間をすり抜け、CTB尾崎 泰雅選手がトライ。ゴールも成功して40-21。
それでも諦めないスピアーズは後半32分、サンゴリアスの反則(コラプシング)でゴール手前5mからスクラムを獲得すると、得意の重量フォワードで攻め込む体制となり、最後は途中交代で入ったPRスカルク・エラスマス選手が持ち込んでトライ。47∸26と追いすがります。
しかし、終了間際にサンゴリアスは、度重なるフェーズでアタックを仕掛け、途中交代で入ったLOのサイモニ・ヴニランギ選手がトライ。52-26と大きな点差をつけ、昨年王者を退けて開幕勝利を果たしました。
プラン通りの展開にも油断なし –サンゴリアス
開幕戦勝利を挙げたサンゴリアスの田中監督、「天気は最高、お客様も多く開幕戦に来ていただいた中で良い試合ができて良かった。昨年3回負けたクボタさんに勝ってやっと始まったなと。」と、充実した表情で話はじめます。
「準備したゲームプランを明確に、信じ切って選手がやってきてくれたことに尽きる。」と、選手たちのハードワークを賞賛する田中監督でしたが、「でもまた次の試合があります。リーグワンは毎年レベルが上がりタフな試合が続く。振り返っている余裕はない。」と気持ちを新たにしていました。
堀越キャプテンも、「昨シーズン、3戦全負している話題はしていません。今シーズンは今シーズンとして自信を持てるよう、1週間準備していこうと話しました。」と、快勝に至った万全の準備を振り返ります。「相手選手は、ひとりひとりフィジカルの強い選手なので、そこ(フォワードパック)と互角以上に戦えたのは自信になりました。日本代表の戦術と同様、相手チームのビックパックとスクラムで互角に戦うために距離を詰めて相手の力を7割に抑えることが出来ました。(どこまで詰めても反則にならないかは)レフリーとコンタクトを取りながら距離感を詰めていきました。」と、日本代表としてラグビーW杯2023に出場して得たメソッドをチームに還元したことを教えてくれました。
コルビ選手の加入で松島選手がWTBに回ったことで、より多彩な攻撃が可能となったサンゴリアス。今後のケイン選手、コルビ選手への期待を聞かれた田中監督は、「期待以上のパフォーマンスをしてくれました。チェスリン(・コルビ)はプレシーズンマッチ1試合に出場していたこともあって、チームに早くフィットしたという印象です。サム(・ケイン)に関しては、今週から本格的に練習に合流しているのですが、チームにフィットするという意味では、もちろんもっとできると思います。」と、更なる期待を寄せていました。
大差の敗退にも淡々と –スピアーズ
会見場に現れたフラン・ルディケHC(ヘッドコーチ)は開口一番、「満員の秩父宮という素晴らしいロケーションで開幕戦を迎えることができたことに感謝しています。」と、ラグビーW杯2023開催後に詰めかけたファンに向けてメッセージを送ります。
「サントリー戦に当たってのゲームプランはありましたが、キックでプレッシャー受けて自陣から抜け出すことができませんでした。コルビ選手の動きにとても良かったですね。来週に向けてポイントを整理して修正します。」と、始まったばかりの長いシーズンを見据えて話します。
キャプテンの立川選手も、「早々に攻められて厳しい展開になってしまいました。特に、陣地を取り合う場面でサントリーさんは様々なオプションを持っていました。試合開始から2分で自陣に下げられてしまい、ディフェンスに回ってしまいました。」と、積極的にボールを動かしてきたサンゴリアスの攻撃に機先を制された序盤を振り返ります。
「フォワードを使ってトライするクボタらしい攻撃はできたと思います。ただ、トライを取った後、直ぐにカウンターでトライを取り返される場面が多かった。そこは修正しなければなりません。」と、次戦に向けた課題点を教えてくれました。
得意のフォワード戦に持ち込めず、自らがボールを運ぶプレーで打開を図っていたSHの藤原 忍選手も、「サントリーのプレッシャーが良く、パスを出すコースがない場面がありました。」とサンゴリアスの集散の早さを感じて選択したプレーだったことを教えてくれました。「プレシーズンマッチでも、パスを展開しての攻撃があまり良くなかったので。徐々に修正する必要があります。」と、冷静に試合を振り返りました。