パリパラ・イヤーで激変したチーム運営
2024年パリパラリンピック(以下、パリパラ)で悲願の金メダル獲得を目指す日本代表。2023年7月から日本代表を率いる岸 光太郎ヘッドコーチが代表を務めていたのが、埼玉県を本拠地とするクラブチーム “AXE(アックス)” です。
現役選手としてクラブチームの代表を務めつつ、2022年の秋に開催された “2022 車いすラグビー SHIBUYA CUP” では、日本代表のコーチとして初招集された岸選手。試合後のインタビューでは、「まだまだ現役としてこだわりたい。」と話していましたが、状況は大きく変わり、今では日本代表のヘッドコーチとして金メダル獲得の使命を担う立場になりました。
今年の日本選手権では、5位決定戦に臨むAXE。チームの代表を2016年リオデジャネイロパラリンピック(以下、リオパラ)銅メダリストの山口 貴久選手(Class1.0)に託し、東京2020銅メダリストで日本代表の副キャプテンを務める羽賀 理之選手(Class2.0)がヘッドコーチ、倉橋 香衣選手(Class0.5F)がアシスタントコーチに就任するなど新チームで臨みます。
密着取材でお世話になった岸選手のユニフォーム姿を見るのは昨年の日本選手権以来となるJournal-ONE編集部。日本代表の重圧からしばし解放され、気の合う仲間たちと一緒にプレーヤーとして参加している岸選手の笑顔に感慨深くシャッターを切りました。
苦しいチーム事情でも明るくプレー
昨年の日本選手権では、ポイントゲッターの山口 徹朗選手(Class3.5)の欠場で苦しい戦いを強いられた “RIZE CHIBA”。東京2020銅メダリストの今井 友明選手(Class1.0)を中心に、出場選手たちがそれぞれ献身的なプレーを続けることを目標に楽しく全力でプレーしていました。
今年もこの順位決定戦で山口選手の姿が見えず、2年連続で苦しい戦いを余儀なくされたRIZE CHIBAですが、予選・福岡大会で精神的支柱として活躍したキャプテンの日向 顕寛選手(Class1.5)も競技用車いす(ラグ車)に乗らずにベンチで声を出しています。
更に、男性にも負けないチェアワークでハイポインターの選手と互角に渡り合う月村 珠美選手(Class1.5F)の姿も無いRIZE CHIBAは、ライン(合計点8点以内でコート上の4選手を編成するフォーメーション)を組むにも厳しいメンバーで臨みました。
アジリティで主導権を握る -第1Q
AXEのラインナップは、峰島 靖選手(Class3.5)、貝谷 紗璃菜選手(3.0F)、乗松 隆由選手(Class1.5)、小川 晃生選手(Class0.5)のスタメン。対するRIZE CHIBAは、和知 拓海選手(Class2.5)、吉村 潤二選手(Class2.0)、今井 友明選手(Class1.0)、大峯 充生選手(Class1.0)と、アジリティで上回るAXEが試合早々で主導権を握りました。
峰島選手にボールを集めたAXEが、確実に得点を重ねていきます、マンツーマン・ディフェンスで広く網をかけるRIZEでしたが、“2023ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ(以下、AOC)” でJournal-ONEにレポートを寄稿してくれた、乗松選手のローポインターとは思えないアジリティと巧みなチェアワークも光り点差が付き始めます。
後半、AXEは峰島選手に替えてコバック・ニコラス・ポール選手(3.0+)を投入し、攻撃の手を緩めませんが、RIZEも今井選手と大峯選手でボールを繋ぎ、吉村選手がトライするなどのコンビネーションプレーで追いすがります。
ハイポインターを中心に得点を重ねたAXEが、11-4とリードして第1Qを終了しました。
若武者が躍動!! -第2Q
続く第2Qに最も目を惹いたのは、AXEの若武者でした。島崎 瑛漣(あれん)選手(Class2.0)は14歳の中学2年生! 同じチームでメカニックとしてチームを支える、島崎 洸史さんの息子さんなのです。
高校3年生の青木 颯志選手(3.0)との若きAXEのコンビは、パリパラ・イヤーで盛り上がる日本車いすラグビー界の未來にも期待を持たせるラインです。無尽蔵のスタミナでコートを行き来する2人の若武者ですが、ベテラン勢も負けていません!
「若い力に引っ張られるように、なにクソという気持ちでプレーしました。」と試合後に話した、新・代表を務める山口選手、橋本 惇吾選手(1.0)のローポインターコンビも走る走る!
一方のRIZEも、第1Qから連続出場となった和知選手、吉村選手、今井選手に鈴木 康平選手(Class0.5)を加え、コンビネーションでAXEに対峙します。和知選手と吉村選手が青木選手を抑えてターンオーバーするシーンなど、随所に組織力の高さを見せて食い下がり点差を縮めてきました!