タックルしたのは、ワイルドナイツのWTB マリカ・コロインベテ(Marika Koroibete)選手です!オーストラリア代表として、“ワールドカップ2023” での活躍が期待されているコロインベテ選手は、先週のプレーオフ準決勝でも、その比類なき瞬発力とスピードでイーグルスを突き放すトライを挙げた選手。オフェンスだけでなく、ディフェンスでも素早い対応でスピアーズの先制トライを防ぎ、会場から大きな拍手が沸き起こります。
膠着状態を破ったのは20分、2度もワールドカップ・オーストラリア代表として出場したSOのバーナード・フォーリー(Bernard Foley)選手です。ノットロールアウェイで得たPGのチャンスに今シーズンの得点王が挑みます。
普段はとても明るいフォーリー選手。この試合前に行われた公開練習後のインタビューでも、記者たちに向かって「皆さんは、オレンジアーミーですか?」と日本語で質問して笑いを誘うなどユーモア溢れる選手です。
何度も何度もキック練習に余念の無かったフォーリー選手は、ワールドクラスのプレッシャーにも負けず、冷静にキックを成功させました。ようやく得点が入り、スピアーズが3-0と先制です!
更に26分、ゴール正面でオフサイドから得たPGのチャンスに登場したのは、またしてもフォーリー選手。今度も確りとキックを成功させ、6-0と点差を広げました。
ラインアウトやパス、スクラムで今まで見られないミスが続くワイルドナイツ。34分にゴール正面で得たPGを松田選手が決めて6-3と反撃に移りたいところでしたが、前半終了間際の38分に、またもや立ちはだかるフォーリー選手のPGにより9-3と点差を戻されて前半を終了します。
一進一退の攻防に会場の興奮はMAXに!-後半戦
後半もキックの応酬。主導権争いの膠着状態が予想された中、口火を切ったのはリードしているスピアーズでした。6分にまたもPGのチャンスを掴むと、フォーリー選手が3連続でキックに成功。12-3と引き離したスピアーズが試合を優位に進めるかに見えました。
流れを変えたいワイルドナイツは、10分に精神的支柱であるHO(フッカー)堀江 翔太選手を投入して反撃の機会を作ります。すると、18分にラインアウトからモールで押し込んだワイルドナイツは、堀江選手が持ち込んでこの試合初めてのトライ! 代わったSOの山沢 拓也選手がPGを決めて、12-10と一気に点差を詰めてきました。
持ち前の動きを取り戻したワイルドナイツは、25分に山沢選手からのロングパスを右サイドライン付近でキャッチしたWTB長田 智希選手が鮮やかに飛び込んで逆転トライ!王者・ワイルドナイツがついに12-15と試合をひっくり返します。
リーグ戦を僅か1敗という強さでここまで勝ち進んできたワイルドナイツの本領発揮に、ワイルドナイツファンから大きな歓声が起こります。
残り時間は終盤の15分となりましたが、得点差は僅かに3点!次に得点を奪ったチームが優勝に近づくというスリリングな展開に、会場のファンたちは好守に死力を尽くす両チームの選手の一挙手一投足に悲鳴、喚起、歓声を送って後押しします。
すると19分にとてつもないプレーが飛び出しました!ハーフウェーライン付近のスクラムから、SHの藤原 忍選手が選択したのはパスではなくハイパント。落下地点に向かってワイルドナイツとスピアーズの選手が激走します。
このボールをワイルドナイツの野口選手が取ったか!?いや、こぼれ球を抑えたのはスピアーズのWTB根塚 洸雅選手!タックルを引きずって5mラインまで一気にゲインしたスピアーズは、再び藤原選手の球出し。これを受けたのはキャプテン・CTBの立川 理道選手。
「(攻撃を選択した意図は)正直、ひらめき。正面に相手ディフェンスが待ち受ける中、横で木田が『俺にくれ』ってオーラを出してくれた。最初にそのオプションなかったので、勝手に出た。」と試合後の会見で話した立川主将が選択したのは、キックパス!
誰もいないサイドライン左側、駆け抜けた木田選手が両手で丁寧にボールを受けると、そのままトライして17-15と再逆転に成功です!
このビッグプレーに、フラン・ルディケ(Frans Ludeke)HCを始めとするスタッフ、ベンチの選手たち、そしてオレンジアーミーも会心の笑顔を見せて喜びます。
しかし、まだ2点差。PGでも逆転となるワイルドナイツは、アタックの連続で攻撃を仕掛けスピアーズにプレッシャーを掛けていきます。ペナルティを犯せないスピアーズディフェンス陣も必死に食い下がりますが、徐々に敵陣に入り込むワイルドナイツにビッグチャンスが生まれます。
細かくパスを繋ぎ、スピアーズのディフェンスを混乱させたところにボールを持ったのはコロインベテ選手!
マークに付く、スピアーズのFBゲラード・ファンデンヒーファー(Gerhard van den Heever)選手を引きつけ、右サイドにノールックパスを出した先には野口選手!一気にサイドラインを突き抜けるかと思われたバスを野口選手が取れずにラインアウト。絶好の逆転のチャンスが潰れます。
残り1分、スクラムからボールを支配するスピアーズは、自慢の重量フォワードでゆっくりと時間を掛けて攻め続けます。モールでのタックルが続く中、ワイルドナイツも必死にジャッカルを試みますが、ここでラストワンプレーのホーン。最後はフォーリー選手がボールをタッチラインの外へ蹴り出し、ノーサイド!クボタスピアーズ船橋・東京ベイが、クラブ創部以来の初優勝を果たしました。