女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した愛媛県西予市の管家一夫市長-Journal-ONE撮影
jone_logo
取材・文:
Journal ONE(編集部)
この記事は約6分で読めます。

国際大会だけでないスポーツのレガシー

日本を舞台にした国際スポーツ大会、”ラグビーワールドカップ2019” “東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京2020大会)” は日本のスポーツ発展だけでなく、私たちに様々なレガシーをもたらしました。
新型コロナウィルス感染症の影響から立ち直り、このレガシーを活用して社会課題の解決やよりよい未来づくりをしようと、多くのスポーツ競技が取り組みを行っています。

また、これらの国際大会に加え、国内での大きなスポーツ大会である  “国民体育大会(以下、国体)“ の開催で得たレガシーを活かし、地域の課題解決に取り組む人たちもいるのです。
様々な競技で大きな国際大会が続き、世界中でスポーツへの注目が高まる2023年。Journal-ONEでは、毎年日本国民の多くが参加する国体のレガシーで様々な地域の課題を解決しようとしている愛媛県西予市の事例に着目しました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した愛媛県西予市の皆さん-Journal-ONE撮影

“2017愛顔つなぐ えひめ国体” のレガシー

「平成29年(2017年)に開催された “えひめ国体” 成年女子ソフトボールの部で、地元・愛媛県選抜選手が優勝を飾ったのが、ここ西予市なんですよ。」と、優しい笑顔で教えてくれたのは管家 一夫西予市長です。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した愛媛県西予市の管家一夫市長-Journal-ONE撮影
「日本の女子ソフトボールは、オリンピックで金メダルを獲得するようなハイレベルのスポーツです。そんなトップ選手たちが集まった国体で、愛媛県選抜選手が活躍して優勝する姿をここ宇和球場で見せていただいた。」と、その時の様子を思い返しながら話す管家市長。
「優勝チームには伊予銀行の選手が多数出場していました。今日、再びその勇姿をここ宇和球場で多くの西予市民に見てもらう機会をいただき嬉しい限りです。愛媛県で頑張っている選手の姿、プロスポーツの素晴らしさを身近に感じてもらいたいですね。」と、女子ソフトボール世界最高峰リーグ “JD.LEAGUE(以下、JDリーグ)” の公式戦に向けた設営に余念の無い、地元ソフトボール関係者の皆さんを温かく見守っています。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した愛媛県西予市の管家一夫市長-Journal-ONE撮影

「JDリーグの前身、日本リーグの時からの悲願。地元・西予市にリーグ戦を誘致することができて、本当に嬉しいです。」と熱く話すのは、西予市ソフトボール協会の理事長・廣瀬 吉孝さんです。「えひめ国体で整備した施設を活かし、世界のトップ選手たちの素晴らしいプレーを地元の子どもたちに見せてあげたい。夢のオリンピックで活躍した選手たち、地元・愛媛県の伊予銀行VERTZ(以下、ヴェールズ)の選手たちを近くで見られるという夢が実現して本当に嬉しいです。」と話す廣瀬さん。聞けば、少年野球やソフトボールに励む子どもたちが多くいたこの地域も、少子化でメンバー集めにも苦労しているとのこと。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した西予市ソフトボール協会の理事長・廣瀬 吉孝さん-Journal-ONE撮影

「2017年の国体、2022年のJR 卯之町駅(うのまち)の新駅舎供用開始と、町興しを進めてきたがこれで終わってはいけない。日本リーグから誘致を続けて実現したJDリーグのリーグ戦を国体のレガシーとして継続していくことが大事なのです。」と、⻄予市ソフトボール協会会⻑の兵頭 竜さんの声にも力が入ります。
「国体開催後、一度はリーグ戦の誘致に成功したのですが、平成30年(2018年)7月豪雨災害による河川の越水で甚大な浸水被害が発生して中止。そこから立ち直り、再度誘致をしたもののコロナ禍。3度目の正直となった今回の開催に、地元の期待は大きいのです。」と話す兵頭さんの自宅も、平成30年7月豪雨で甚大な被害を受けたとのこと。困難を克服し、未来につなぐ今回のJDリーグ公式戦の開催がどれだけ市民に夢と希望を与えるか計り知れません。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した⻄予市ソフトボール協会会⻑の兵藤 竜さん-Journal-ONE撮影

地元企業がつないだ絆 “四国を元気に!プロジェクト”

「今年の2月、伊予銀行とJR四国の取り組み “四国を元気に!プロジェクト” で、ヴェールズの庄司 奈々投手と辻井 美波選手が西予市を訪れてくれました。西予市の中学校で唯一ソフトボール部がある宇和中学の部員たちと交流を行っていただき刺激をもらいました。」と、管家市長が話した絆は、卯之町駅の活性化をはじめ、人気観光列車 “伊予灘ものがたり” などの観光誘客で四国を元気にするJR四国と、ソフトボールで四国を元気にする伊予銀行のコラボ企画。四国を応援! VERTZの庄司奈々選手、辻井美波選手が西予市でソフトボール交流会!-Journal-ONE撮影

本間 紀帆選手、吉金 亜希子選手と2班に分かれて、西予市、松山市、宇和島市、砥部町の観光スポットや特産品を紹介する応援ツアーをした中で、庄司投手と辻井選手が宇和中学ソフトボール部と練習を通じて交したのです!今度は、宇和中学をはじめとする西予市の皆さんが、ヴェールズの試合を応援するという絆が生まれたのですね。

「公式戦の後も、ソフトボール・クリニックで交流したいとヴェールズさんから言われています。世界最強リーグで活躍する選手との交流が続いていることを嬉しく思います。この交流が続いて、西予市の子どもたちが大きくなり、ヴェールズで活躍してもらうことを夢見ています。」と、楽しそうに話す管家市長。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した愛媛県西予市の管家一夫市長-Journal-ONE撮影

「(四国を元気に!プロジェクトでは、)ソフトボールだけでなく、平成30年7月豪雨で甚大な被害を受けた、野村町にも足を運んでいただき、復興の進んでいく様子も見てもらいました。観光スポットや、特産品なども今後は紹介して欲しいです。日本で唯一 “卯(うさぎ)” の名が付く卯之町駅。卯の年である今年に相応しい、物語の始まりですね。」と、兵頭さんも深まりつつあるソフトボールでの絆に期待を寄せていました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した⻄予市ソフトボール協会会⻑の兵藤 竜さん-Journal-ONE撮影

また、新設された木の温もりいっぱいの卯之町駅で使われている西予市産の木材の一部には、東京2020の選手村で使用された西予市産の木材がレガシーとして活用されているんです!スポーツと観光、地域の暮らしが融合する卯之町駅近くの西予市宇和球場でJDリーグの公式戦が開催されるのもご縁を感じるストーリィですね。四国を応援! VERTZの庄司奈々選手、辻井美波選手がJR四国の観光列車 伊予灘ものがたりで女子旅!-Journal-ONE撮影

地域活性化にスポーツを!

JDリーグ公式戦の誘致、地元企業のJR四国と伊予銀行との絆といったエポックメイキングな施策による地域活性化を含め、少子高齢化における課題解決にもスポーツを活用していこうとしている西予市。

「宇和中学を除く市内4つの中学校では、生徒数が年々減少しており、募集を停止した部活動や、廃部となった部活動があります。中学校によっては、部活動の選択肢がほぼ無い学校もあるくらいです。」と少子化によって子どもたちのスポーツをする権利が危ぶまれている現状を管家市長が話します。

「スポーツ庁が掲げている休日の部活動の地域連携・地域移行への対応を速やかに行うべく、市では “部活動地域移行推進協議会” を設立し、将来を見据えた西予市の部活動の在り方、“西予市スタイル” を協議してもらっています。合同チームで参加せざるを得ない、他校への移動に保護者が数十分掛けて送迎をしなければ成り立たないなど、解決すべき課題が多い中でも、西予市の子どもたちがスポーツのできる環境を整えていきます。」と決意を語る管家市長。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した愛媛県西予市の管家一夫市長-Journal-ONE撮影

兵頭会長も、「今回のJDリーグ公式戦誘致や運営は、市と市民団体が一緒になって取り組んでいます。様々な課題解決についても、行政と市民が手を取り合って、協力して町を盛り上げていきたいです。」と、ソフトボールから始まる市民一体となって町の未来を創っていくと話してくれました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズホームゲームを誘致した⻄予市ソフトボール協会会⻑の兵藤 竜さん-Journal-ONE撮影

JDリーグの前期最終節が開催された球場の周りでは、西予市観光物産協会がテントを出して特産品をPRしています。「県外から来た多くの観客の皆さんや、選手たちが西予市産のみかんジュースなどをたくさん買ってくれました。少しでも西予の良いところを知ってくれたなら嬉しいです。」と事務局長の正司 哲朗さんが話します。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 西予市特産品を紹介するブース-Journal-ONE撮影

「市内の米農家が集まって、米麹を使った食べ物をPRしています。」と、大きなブロック肉を焼きながら話してくれたのは、地元で米農家を営む中野 聡さん。「米を作るだけでなく、米麹を使った甘酒(米乳-マイニュウ)や、調味料として漬け込んだ肉を食べて貰うことで、西予の米を色々な人にPRしたいです。」と、インスタ映えするブロック肉を丁寧に切って出してくれた米麹ステーキは、ほのかな米の香りと甘みが肉汁に絡み合う絶品の仕上がり!こちらも予想以上の売れ行きで、用意していた肉はあっという間に完売してしまいました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 西予市特産品を紹介するブース-Journal-ONE撮影

部活動に頑張る選手たちの笑顔

JDリーグ・西予ラウンドが始まる前日、向かったのは会場となる宇和球場の近くにある西予市立宇和中学校。お昼休みを割いて集まってきてくれたのは、女子ソフトボール部の選手たち15名です。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズと交流を深めた西予市立宇和中学校-Journal-ONE撮影

今年の2月、伊予銀行とJR四国の取り組み “四国を元気に!プロジェクト” で、ヴェールズの庄司投手と辻井選手と一緒にソフトボールを通じて交流を深めた1、2年生が、新年度に入り新たに部員を迎えて活動をしています。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズと交流を深めた西予市立宇和中学校ソフトボール部の皆さん-Journal-ONE撮影

主将の神山さんは、「庄司選手と辻井選手の教え方がとても上手で本当に勉強になりました。愛媛アストライアーの選手たちと一緒にクリニックを受けたことも刺激になりました。」と振り返ってくれました。投手の山口さんと細谷さんも「庄司さんにピッチングを教わったのですが、コントロールの付け方を教えてもらってからはストライクが入るようになりました。」と、トップ選手のコーチングが効果覿面だったことを教えてくれました。

捕手として庄司選手のボールを受けた三好さんも、「投げ方がとても綺麗で、球も速くて本当に凄かったです。」とトップリーグの選手のパフォーマンスに目を見張っていました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 伊予銀行ヴェールズと交流を深めた西予市立宇和中学校ソフトボール部の皆さん-Journal-ONE撮影

今年度入った部員を含め、中学に入ってからソフトボールを始めた方ばかり。

硬式野球との “二刀流” に挑戦している菊池さんは、「野球とソフトボールはそれぞれで学ぶことが多いです。(宇和中の)先輩やチームメイトに恵まれて楽しいです。」と、部活動がコミュニケーション能力を育くみ、豊かな心と他人に対する思いやりを生むことを改めて実感しました。

宇和中学校でインタビューしたことを庄司選手に伝えると、「ソフトボールは楽しくプレーして欲しい。楽しくプレーできるために、少しでも上手になれるコツを掴んで貰えていたら嬉しいですね。」と笑顔で再会を待ち望んでいました。辻井選手も、「お役に立てたならば嬉しいです。(1年生にはまだ会っていないので)呼んでいただけたら、是非またクリニックで交流したいです。」と笑顔で話してくれました。女子ソフトボール JDリーグ交流戦 最終戦 西予市立宇和中学ソフトボール部の皆さんにコメントする伊予銀行ヴェールズの庄司奈々投手-Journal-ONE撮影

ヴェールズの選手たちが見せる素敵な笑顔と、運営に携わる皆さんの素敵な笑顔。そして、笑顔で観戦する観客の皆さんと、選手たちの卓越されたプレーに目を輝かせる子どもたち。

スポーツを “するひと” “みるひと” “ささえるひと” が一緒になって創り上げる幸せの時間が、西予市はもちろん日本各地の様々な課題解決に一役買ってくれることは間違いありません。

JDリーグ前半戦最終節の第9節は、東西地区対抗交流戦シリーズの最終章!

東西強豪チームが激突した、愛媛県西予市営宇和球場でのゲームレポートも是非、読んで下さいね。

アクセス
西予市営宇和球場
  • JR卯之町駅 - 徒歩15分

 

おすすめ記事