30分には、突進してくるフィジー代表の攻撃に下川選手が渾身のタックルを見せると、堪らずボールを落としたフィジー代表。日本陣内15m付近でのスクラムを獲得します。
「こちらがスリッピーなら、フィジー代表もスリッピーだ。」とばかりに、松島選手がスペースにキックを放つと、FBシレリ・マンガラ(Sireli Maqala)選手が想定通りにボールを落とし、敵ゴール前5m付近からのラインアウトまで攻め込んだ日本代表。これを右に展開した日本代表ですが… この展開したボールをまたもやノックオンで攻撃権を手放してしまいます。
更には相手ボールのスクラムでコラプシング(スクラムを故意に崩すペナルティ)。一気に自陣までまた引き戻されます。
フィジー代表の攻撃は、個人技も然ることながら、バックスのナヤザレヴ選手、チウタ・ワイニゴロ(Jiuta WAINIQOLO)選手、マンガラ選手の3人が一体となって攻めてきます。誰かが倒されても必ず誰かが素早くフォローして攻撃を継続してくる。この運動量と連携の取れたオフェンスにより、フィジー代表のボールが繋がるだけでなく、日本代表ディフェンスの体力と集中力がみるみる削られていきます。
すると35分、自陣ゴール前5mスクラム。「Nippon!Nippon!」と日本コールで後押しする場内の後押し虚しく、またもやスクラムを崩されると飛び込んだSHシミオネ・クルヴォリ(Simione KURUVOLI)選手の飛び込みを止められずにまたもトライ。Gも決まって0-21と一方的な展開で前半が終わりました。
勝ち負けよりも何か成果を-後半
後半、14人での戦いに勝つべく、ストラクチャを作り直してフィジー代表に挑みます。
稲垣選手→クレイグ・ミラー選手[埼玉パナソニックワイルドナイツ]、坂手 淳史選手[埼玉パナソニックワイルドナイツ]→堀江 翔太選手[埼玉パナソニックワイルドナイツ]、ヴァルアサエリ愛選手[埼玉パナソニックワイルドナイツ]→具 智元選手[コベルコ神戸スティーラーズ]、齋藤選手→流 大選手[東京サントリーサンゴリアス]と4名の選手を代え、ハーフライン付近での攻防が始まります。
流選手の速いバス、トリッキーなバスなどで突破口を図りますが、あと一歩のところでボールを離してしまう日本代表。WTBのジョネ・ナイカブラ選手[東芝ブレイブルーパス東京]があわやトライかと思うプレーを見せるなど、1人少ない中でトライを取るため、アタックよりも左右にボールを展開して攻め込む戦略を執る日本代表ですが、フィジー代表の素早い対応になかなか陣地を進めることができない状況が続きます。
2021年8月より世界的試験実施ルールが適用されている、“50:22(フィフティ・トゥエンティトゥー)” というキック戦略を使って大きく相手陣内に攻め込む日本代表。フィフティ・トゥエンティトゥーとは、ボールを保持しているチームが自陣の内側からボールを蹴って相手陣の22mラインより内側で間接的にタッチになった場合、その後のラインアウトはそのチームがボールを投入するというもの。正確無比なキック力を持つ、日本代表にとっては重要となるキック戦略をここで成功させるなど、随所に良いプレーを見せる日本代表。
しかし17分、クルヴォリ選手に代わりSHに入ったフランク・ロマニ(Frank LOMANI)選手にトライを決められてしまいます。これも3人一組となったフィジー代表の攻撃によるもので0-28と引き離されてしまいす。実は、この “4トライ” を奪われると、W杯ではボーナスポイントで勝ち点1が付いてしまいます。リーグ戦突破に1つの勝ち点がとても大事になってきますので、こういった劣勢の試合でも4トライを奪われないようにするディフェンスも大事なのです。
この日、再三試行してきた成果が出たのは28分でした。トリッキーなラインアウトからスイッチバスを細かく繋いで、ディフェンスの穴を見付けた瞬間に突破する作戦。ここまではボールを落としたり、パスが綺麗に繋がらなかったりとした日本でしたが、長田選手が自陣10mから70m近くを独走!ゴールライン寸前で捕まってノックオンとなりましたが、フォローさえしっかりできていればという攻撃を見せる日本代表。
すると31分。敵陣22mラインアウトからモールを組んだ日本代表は、ここで初めて直線的な突破を試みます。これをナイカブラ選手が飛び込んでトライ!李選手もGを決めて7-28とようやくのトライに会場からは万雷の拍手が送られます。
更に34分、敵ゴールライン5mにまで迫ると、パスを展開してゴールを奪いに行く日本代表。しかし、ここでまたもや最後のパスをミスキャッチ。浮いたボールにマンガラ選手がアタックして独走してフィジー代表のトライかと思われましたが、直前のアタックが危険なタックル。イエローカードによる一時的な退場で、14人対14人となって敵ゴールライン15mから再びの日本ボールとなります。モールから出てきた左サイドギリギリのパスにマシレワ選手が飛び込んでトライ!松田選手のキックは失敗しましたが12-28と、何とか成果を出すことができました。