直ぐに追いつきたい打線も、クリンアップが坂本投手を攻略できずに嫌な流れとなったミナモ。しかし、スイッチを入れ直したエレン投手が、サンディーバの上位打線をしっかり抑えて完全に傾きかけたサンディーバへの流れを変えようと力投します。
すると5回裏、ミナモが夏の特訓で得た”打線の繋がり” を機能させ始め、この回からマウンドに上がった、東京2020メキシコ代表の左腕・Tailor MCQILIN(テイラー・マクイリン)投手に襲いかかります。
先頭の長井 美侑選手が、チェンジアップに崩されながらもしっかりとレフトへヒットを放つと、1死2塁と得点のチャンスを作ると、門松監督が執った采配は代打起用!打席に向かったのは、高校生ルーキーの岩月 優衣選手です。
この大事な場面で、公式戦3打席目となる新人に託した門松監督は、「前半戦2打席しか立っていないのに、既にヒットは1本打っている。新人とは思えない思い切り良い打撃と、状態の良い岩月選手に期待しました。」と語っていた采配がズバリ!
門松監督の思惑取り、積極的にバットを振っていく岩月選手。外国人投手の力ある内角速球をものともせずに振り抜きライトポール際へ特大のファールをかっ飛ばす岩月選手に、球場のミナモファンはもちろん、ベンチの盛り上がりも最高潮に達します。
「良いバッターが後ろにいるので思い切っていけた。」と話した岩月選手は、2-2から速球に負けずファールで粘って3-2と打者有利のカウントまで持ち込むと、ライトのフェンス際まで高々とかっ飛ばした打球は、ライトのグラブをかすめるタイムリー3塁打!
ここでたまらず、坂本投手をリエントリーでマウンドへ上げたサンディーバでしたが、1死3塁で打席に入ったのは、キャプテンの須藤選手。スクイズ、エンドランもある同点がかかる重要な場面で、門松監督が出したサインは “打て”。
「スクイズのサインが無いので、犠牲フライを期待されていると打席に入りました。外野まで運べるコースだけを狙っていました。」と試合後に話した須藤選手は、盛り上がる応援団の声援を背に、期待通りの犠牲フライを放って試合を振り出しに戻しました。
2死無走者となり、一旦ゲームの流れが収束するかに見えたミナモ。ここから実戦練習で鍛え上げた打線が更に勢いを増していきます。続く、近本 和加子選手が三遊間抜けるかという打球を放って出塁(記録は遊失策)し、同点で終わらない気迫を見せると、続く3番・内田 小百合選手がセンターの左へライナー性の大きな打球を放ちます。何と、これがフェンスオーバー!
「なかなか上手くいかなくて3勝と悔しいシーズンとなったが、やり返したいと思い後半の開幕に臨んだ。新人の岩月選手が粘って、本当に良い打撃を見せてくれたので勢いに乗れた。」と話した内田選手のツーランホームランにより、この回4点のビッグイニングを作って逆転に成功しました。
終盤の猛攻に耐えたエースの力投
6月の本誌インタビューで、チームを信じて自分の投球に集中することを心がけていると話してくれたエレン投手は、騒然となるスタジアムの雰囲気を意に介せず6回も淡々と強力・サンディーバ打線を三者凡退に切って取ります。
最終回も2死まで冷静な投球を続けたエレン投手でしたが、簡単に終わらないのがサンディーバ打線です。あと一人となった場面で打席に入るのは、日本代表経験豊富な昨シーズンの本塁打王・坂本 結愛選手。5月15日の対デンソーでフーバー投手から右手に死球を受けて骨折した坂本選手はこの試合が3ヶ月半ぶりとなる復帰戦。縫い合わされた右手にはまだプレートが埋め込まれていて万全な状態とは言えない坂本選手が意地を見せます。死球を思い起こさせるようなインサイド中心の攻めで1-2と追い込まれながらも、エレン投手渾身の内角速球を狙い打った打球は、打った瞬間にホームランと分かるレフトポール脇への大飛球!
続く日本代表の唐牛選手も際どい球を見切って3-2からレフト前にヒット。「土壇場でスコアブックに現われないファインプレーをしてくれた。」と門松監督が絶賛した、レフト・伊藤選手の好守備がチームを救います。ツーベースと思われた打球を上手く回り込んで抑えた伊藤選手のプレーに、加漏示選手は2塁を陥れることができず。ピンチを最小限に防ぎます。
2死1塁と反撃の勢いを抑えたエレン投手は、続く3番・山口選手を遊ゴロに打ち取ってゲームセット!ミナモが地元開幕を制しました。