真の日本一を決めるノックアウトラウンド
1949年に創設された大会であり、日本のソフトボールの中で最も歴史と伝統があり、権威のある大会 “全日本総合女子ソフトボール選手権”。登録するカテゴリー問わず、各都道府県・地区予選を勝ち抜いたチームが参加して日本一の座を争う仕組みは、女子サッカーの “皇后杯” に似ています。
大学、実業団、クラブなど、登録するカテゴリーが違っていても、各都道府県予選・地区予選を勝ち抜きさえすれば、どんなチームでも日本一になる道が用意されているのです。
主催する (公財)日本ソフトボール協会のホームページには、大会当初の写真や今回で75回を数える大会の変遷が書かれています。
NPB(プロ野球)の人気球団である読売ジャイアンツが、1965年から1973年にかけて9年連続でプロ野球日本シリーズを制覇した “V9(ブイナイン)” という、日本野球界で最も有名な出来事がありました。ソフトボール界でもこのV9と同じく、1965年(第17回大会)から1974年(第26回大会)にかけ、ジャイアンツを上回る「不滅」の大記録を達成したチームがあったことも記されています。
そのチームは、高島屋大阪(大阪)。日本が飛躍的に経済成長を遂げた “高度成長期” で生活が豊かになった日本の人たちが家族連れでデパートでの買い物を楽しんだ時代に、店頭で働く女性たちが、長嶋 茂雄選手や王 貞治選手たちが成しえなかった10連覇を達成したことを知ると、その歴史と伝統が良く分かりますよね。
女子ソフトボールのトップアスリートが大集結
大会前日の開会式は日本一を決める戦いの火蓋が切って落とされるに相応しく、国内のトップリーグ・JDリーグの16チームと、全国から勝ち上がってきた実業団や大学などの16チーム、計32チームの選手、関係者1,000名近くが一堂に会し佐賀県白石町の有明スカイパークふれあい郷で行われました。色とりどりのユニフォームに身を包み、笑顔が溢れる選手、緊張感を隠せない選手、色々な顔立ちで会場に入ってきます。
荘厳な雰囲気なのだろうと予想して会場で選手たちを待ち受けていましたが、全くそのような雰囲気ではなく、チーム関係なく様々な選手たちが笑顔で交流をしています。8月24日(木)から28日(月)に行われた、インカレ(全日本大学女子ソフトボール選手権大会)で10年ぶり2回目の優勝を果たした、愛知県の中京大学・部長兼監督の二瓶 雄樹さんに、多くのJDリーグの選手たちが群がって優勝を喜び合っています。
集まったのは中京大学OGの皆さん。昨年の全日本総合女子ソフトボール選手権の覇者・トヨタ レッドテリアーズの片岡 僚子選手、馬場 幸子監督を始め、日立サンディーバの杉本 梨緒選手、SGホールディングス ギャラクシースターズの丹羽 萌投手、伊予銀行ヴェールズの川口 茉菜選手、大垣ミナモの舟橋 花保選手といった各チームの主力が集結し、楽しそうに写真を撮りあっています。
「総合の開会式は、いつもこんな感じです。大学の先輩、後輩たちと久しぶりに会って親交を深める機会でもあるのです。」と、馬場監督が教えてくれたとおり、中京大学OG軍団以外にも、様々なところで選手たちが交流を深め合う微笑ましい光景が見られました。
自有館多目的ホールで行われた式典では、地元佐賀県代表・ひらまつ病院SAGA ALL STARSの松尾 奈月主将が選手宣誓。「同じ夢を追いかけた仲間たちと、違うユニフォームを着て再びソフトボールが出来ることを嬉しく思います。」と仲間たちとの再会を喜ぶと共に、小学校の先生として日頃耳にしている「野球とソフトボールの違いが分からない子ども達に、この大会を通じてソフトボールの魅力を分かってもらえるよう、どんな結果になろうとも全力で笑顔でプレーする。」と力強く宣言。この大会を切っ掛けに、地域にソフトボールを根付かせたいと願う熱い思いに会場からは大きな拍手が沸き起こっていました。
会場は佐賀県の南部
第75回全日本総合女子選手権が開催されたのは、九州は佐賀県の南部。佐賀県内地域区分では杵藤(きとう)という地区にあたる太良町と白石町が会場となりました。
佐賀県南部は、全国で人気の観光スポットが数多くある地域としても知られており、会場の太良町にある “たら竹崎温泉” の周辺では有明海に生息するワタリガニの一種 “竹崎カニ” を使った料理を出すお店が国道沿いに数々あるのです。今の時期がまさに旬!冬に向かっては牡蛎も美味しい季節になるのだとか。
また、太良町と白石町の間にある鹿島市には、日本三大稲荷で有名な “祐徳稲荷神社” もあり、毎年300万人もの参詣者が訪れます。山肌を沿うようにそびえ立つ拝殿の壮観な様に圧倒されますが、一番のオススメは “奥の院” から臨む有明海の絶景!千本鳥居をくぐりながら急傾斜の山道を歩いて登った疲れも吹き飛ぶ景色です。
また、毎年秋には佐賀市の嘉瀬川河川敷を主会場に、佐賀平野中西部の広い範囲で開催される “佐賀インターナショナルバルーンフェスタ” も魅力的なイベント。100機を超える気球が飛び交う様はもちろん、夜間係留でランタンのようにライトアップされた大きな気球を間近でみることもできます。ソフトボールの大会にこのバルーンフェスタの時期がずれていても大丈夫!佐賀市内には、“佐賀バルーンミュージアム” という施設があり、映像や資料でバルーンフェスタの一端を感じることが出来るからなのです。
今回レポートする全日本総合女子選手権、10月に開催される国民体育大会(2024年からは国民スポーツ大会に名称を変更)、JDリーグなど、日本各地で行われる女子ソフトボールの各試合を観戦しに、旅行がてら各地を訪れてみるのも楽しいですね。
国内最大の総合スポーツ大会への期待も込めて
2023年9月16日(土)から18日(月)にわたって開催された今大会。会場は来年開催される ”第78回国民スポーツ大会(以下、SAGA2024国スポ)“ のソフトボール競技リハーサル大会として運営されています。漁船が停泊するのどかな入り江に隣接された太良町のソフトボール会場では、本番のSAGA2024国スポに向けて準備されたお揃いのユニフォームを着用し、スタッフの皆さんが笑顔でおもてなしをしています。
競技会場班、練習会場班といった選手たちを支えるスタッフの皆さんや、グラウンド脇のテントでは氷水で冷やした地元特産の嬉野茶や、お水を無料で配布するおもてなし班のスタッフの皆さん、会場回りのお手洗いの小まめな清掃や備品の補充をする衛生班環境美化係のスタッフの皆さんなど、多くの地域の皆さんが運営に携わっていました。
スポーツを “する人” だけでなく、”見る人” “支える人” が協力し、このような大きな大会が毎年盛大に開催されているのです。今年の10月に開催される特別国民体育大会 “かごしま国体” を最後に、国民体育大会から国民スポーツ大会に名称は変わりますが、皆さんの素敵な笑顔で、スポーツの振興だけでなく地域の活性化にも繋がる国内最大の総合スポーツ大会の実施意義がここにあることが良く分かります。
今回の全日本総合女子選手権を観戦できなかった方も、この記事を読んでいただき、来年のSAGA2024国スポに足を運び、佐賀県の観光地や名産品を楽しみながら、スポーツ観戦をしていただければ嬉しいです!
様々な思いを抱いて頂点へ
大学、実業団、クラブなど、様々なカテゴリーから代表権を勝ち取り集結した32チーム。この大会に臨む思いも様々です。
Journal-ONEでは、全日本総合選手権をより楽しく観戦していただくため、幾つかのチームにスポットを当てて試合をレポートしていきます。最高の舞台であるインカレを終え、最後に待っていた大きな挑戦の機会に臨む大学ソフトボール部のチームや、佳境となるリーグ戦を一時中断し、トップリーグとしての意地と誇りを胸に日本一を目指すJDリーグのチーム。実際に試合に臨む選手たちはもちろん、采配を振るう監督や、チームを応援する人たちといった様々な視点から、一発勝負の大一番の面白さをお伝えして行きます。