一方。今回の走行体験で使う機材は、アダプタータイプという、ほぼ全ての車いすに取り付け可能な機種。見た目も最新鋭のマシンみたいでカッコいい。参加したお子さんたちも、ロボットの操縦席のようなシートに座ると、自然と笑顔が溢れてきます。
お子さんに限らず、大きな大人も笑顔いっぱいで走行体験の準備をしていますが、どこかで見たようなお顔が・・・ 何と! 東京2020車いすラグビー銅メダリストの、今井 友明選手(CHIBA RIZE)、中町 俊耶選手(TOHOKU STORMERS)ではないですか。
三阪さん、羽賀さんに誘われたお二人も、楽しそうにハンドサイクルをセッティングしてもらっています。嬉しそうな今井選手の車いすを調整しているのは、今回ハンドサイクルの機材を提供した同じ千葉県松戸市にある会社 “株式会社テレウス” の三山 慧さんです。日常生活で使う車いすはもちろん、競技用の車いすや各種パーツなど幅広い商品ラインナップを持つテレウスは、その調整技術も一流。
「(このタイプは)1台50万円ほどするので、先ずは体験してみてその魅力を肌で感じて欲しいです。」と話す三山さんは、2008年のパラリンピック・北京大会から東京2020まで、メカニックとして車いすラグビー日本代表チームに帯同してきたそのテクニックで、手際良く12台のセッティングをしています。
去る10月18日から22日にかけては、パリパラ2024の開催地であるフランス・パリで開催された “2023 International Wheelchair Rugby Cup(以下、IWRC2023)” でも見事に銅メダルを獲得した日本代表チームのメンバーでもある中町選手は、帰国間もないにも関わらずこのイベントに参加してくれたのです。
「フランスに向かう機内で風邪を引いてしまって、大会では殆ど役に立ちませんでした(笑)。」と話す中町選手は、「帰国後も体調が回復せず、先週くらいまで休んでいましたが、もう大丈夫です。」と嬉しそうにハンドルを握ったものの、「これ、凄く力が要るなぁ! うわぁキツい!」と、トップアスリートらしからぬ発言で周りに笑いを提供しています。
「海外では、このハンドサイクルを筋力トレーニングの一貫として取り入れている選手もいるくらいです。これだけ気持ちの良い天気だと、外の景色を見ながらサイクリングもしてみたいですね!」と、今井選手も笑顔でバンクに出ていきました。
多彩な参加者の笑顔がひとつに!
ひときわ明るい笑顔でハンドサイクルに挑戦している女性は、渋谷 真子さん。山形県は鶴岡市から参加したYouTuberです。「私の住んでいるところはとっても田舎。ですから、猟師をするために猟銃を所持できる許可証も持っているんです。」と、お洒落な外見からは想像も付かない自己紹介をしてくれた渋谷さん。
仕事中に茅葺屋根から落下し、脊髄損傷で車いすの生活になったことも教えてくれた渋谷さんは、「障がいにおいて中々話題にできないことも含めて、YouTubeを介して色々な情報を発信しています。今後の誰かの役に立てば良いなと思って(笑)。」と明るく話しながら、参加した小学生たちと一緒にバンクを駈けていきます。
「彼女が発信する情報に偶然触れるや否や、本当に前向きで明るい渋谷さんのファンになってしまいました。渋谷さんは本当に人を惹きつける魅力ある人なんです。」と話す一緒にイベントに来た女性は、松戸市の隣の市川市から来た “渋谷さんのファン” とのこと。
「今回、松戸市のイベントに参加すると情報発信されていたので連絡を取ったら “一緒に行きましょう!” と声をかけてもらい、一緒に参加することになったんです。」と、珍しい参加理由も教えてくれました。
誰にでも笑顔で積極的に話しかける渋谷さんの姿を見ると、そういったストーリィも “あり” かと納得。自分の乗るハンドサイクを見下ろすように360°カメラを設置し、撮影しながらリレーを楽しむ渋谷さん。この映像と渋谷さんの明るいナレーションで、今回の素敵な皆さんの笑顔がYouTubeを通じて多くの人たちに届くことが楽しみです。
お母さんの伴走で楽しそうにハンドサイクルを扱うのは、さいたま市から参加した橋本さんご一家の娘さんです。「来年小学生になる娘ですが、こういったイベントに参加するのは初めてなんです。」と話すお母さんですが、ハンドサイクルを力強く進めていく娘さんの姿は、決して初心者には見えません。
今時の女の子たちの流行、“スカイブルーのランドセル” を買い込み、小学校への入学を心待ちにしている橋本さん。ハンドサイクルの操作に驚異の適性を見せ、参加者たちからのお褒めの言葉を受けて本当に嬉しそうにバンクを走って行きます。
それを見た羽賀さんが近寄ってきて手渡したのは・・・ 何と! IWRC2023で獲得したばかりの銅メダルです!! 無造作に車いすのポケットから出した、サプライズな演出に一同驚愕。「こんな貴重なメダルを触らせていただき、素晴らしいイベントの思い出になりました。」と、ご家族も興奮。来夏のパリパラ2024では、羽賀選手の活躍を皆さんで応援してくれることでしょう。かわいい羽賀ファンが、またひとり増えましたね。