パラリンピアンは元高校球児 -中町 俊耶選手
卓越したボールハンドリングと俊敏なチェアワークで、東京2020の銅メダル獲得に貢献した中町 俊耶選手!パリ・パラリンピック出場を決めたAOCにおいては、連戦続く過酷な日程をものともせずに韓国代表を攻守にわたって完全に制圧しました。
特筆すべきは中町選手のスローイング力。高く浮き上がる軌道や、鋭く相手のチェアの間を抜ける軌道など、スローの種類の豊富さに加えてコントロールの良さはミドルポインターでは随一。
「高校時代に野球で培ったボールを扱う能力や体力、精神力が車いすラグビーにも活きています。」と、その技術の源は高校球児時代にあることを教えてくれた中町選手。中町選手は、埼玉県高校野球の強豪・本庄第一高校野球部で3年間、投手や外野手などで活躍した元・高校球児なんです。
「野球に力を入れている学校ではありましたが、練習時間は決して長くなくメリハリある高校生活を送っていました。こういったスポーツに取り組む姿勢を高校時代に学べたことも、今の競技に役立っていると思います。」と、決して野球だけの高校生活ではなかったと思い返す中町選手。こういったメリハリある高校生活を過ごしてきたからこそ、インタビューにおける豊富な表現力や練習中に見せる仲間をリラックスさせる振る舞いができるのですね。
IWRC2023代表として、渡仏間近な中町選手は、「そこに向けて調子を上げてきているので、体調はとても良いです。AOCでパリ・パラリンピックの出場権を得られたことで、日本代表チーム内には色々とトライする機会が増えています。新ヘッドコーチの岸さん(AXE・岸 光太郎選手)の戦術をチームで共有していく時間もありますし、IWRC2023では新しい代表選手(FUKUOKA DANTELION・草場 龍治選手、安藤 夏輝選手)が代表を経験する機会を得ることもできました。」と、次世代の明るい未来についても話を聞かせてくれました。
シンデレラボーイの尽きない向上心 -橋本 勝也選手
福島県三春町に住む、橋本選手も中町選手と同じく東京2020銅メダリスト!AOCでは獅子奮迅の活躍を見せた橋本選手は、日本代表の優勝に貢献した “次代の日本を背負って立つ選手”。現在は、アスリート選手として日興アセットマネジメントに所属していますが、つい最近までは地元・三春町役場に務めていたという生粋のご当地選手です。
「僕は小学校、中学校と部活動をやってこなかったんです。当時、車いすバスケットボールにも挑戦したのですが、手指の障がいがバスケットボールを扱うには難しくて、ちょっと向いていないなぁと感じていました。そんな中学2年生の時に、庄子さんと三阪さんが車いすラグビーの普及に来てくれて、そこで初めて車いすラグビーを知ったんです。」と、車いすラグビーとの “思わぬ出会い” を振り返ります。
その年は奇しくも、リオデジャネイロ・パラリンピックで車いすラグビー日本代表が銅メダルを獲得。その銅メダリストの1人である庄子さんとお互いの地元である東北の地で出会ったというドラマのような展開なのですが、当時の橋本選手は車いすラグビーの存在を知らなかったとのこと。
「最初は、こんなに激しく危険なスポーツをやるなんて “クレイジー” な人たちだなぁ・・・と思っていたんです。それが、プレーしているうちにどんどん自分がのめり込み、結局私が “クレイジー” になってしまいました(笑)。」と、ストーマーズに加入してその才能を開花させ、僅か数年で世界屈指のハイポインターにまで駆け上がったシンデレラストーリーを教えてくれました。
IWRC2023では、初の副主将に指名された橋本選手。次世代の日本代表を背負っていくことを期待されていることが良く分かりますが、「試合中では先輩にもしっかりと自分の意思を伝えないと、良いプレーができません。特に副主将になってもゲーム中でのパフォーマンスは変わりませんが、コート外などで、自分がどういったリーダー像を造っていくのかを考える良い機会をいただいたと思っています。」と、自分を磨く向上心は尽きることがありません。
“日本車いすラグビー界の顔” としてメディアへの露出が増えている橋本選手ですが、「自分が注目されることで、車いすラグビーを知っていただく機会が増えることは有り難いのですが・・・」と前置きした上で、「僕たちの競技は、“支える人” の力があってこそ成り立つ競技。今日の練習も、準備をしれくれるスタッフの力が無ければ成り立ちません。試合中の激しいコンタクトで転倒しても、スタッフの助けがないと起き上がれません。」と、“支える人” にもスポットが当たることを願います。
「先のAOCでは、本当に多くのボランティアの方々の力があったおかげで試合ができて、優勝することができました。こう言った活動も含めて車いすラグビーの魅力を知っていただきたいのです。」と、試合結果や戦績だけでない。みんなで作る競技の魅力を伝えたいと話してくれました。