様々な角度から、スローの速度を変え、何度も何度もビデオを見直すレフェリーたち。
ビジョンに映し出されたその様子を、13,065人の観客と共に固唾を飲んで見守りますが決定的なボールの着地シーンが映し出されません。
ボールがオンフィールドする瞬間、画面がカメラマンと選手に遮られ、決定的な瞬間が見えない状態です。判断の難しい映像が繰り返し映し出される時間は5分余り。とても長く感じる時間でした。
レフリーがゴールラインの着地地点に向かいます。両手を広げるジェスチャーは “ノートライ”! この瞬間にノーザイドの笛が鳴り、スピアーズが決勝にコマを進めることになりました。
精根尽き果てた両チームが試合を振り返る
場内騒然、選手たちも精根尽き果てた試合後、予定時間から遅れて入ってきたのは敗れたサンゴリアスです。
何とか話しを始めた田中監督も、「終わったばかりで振り返るのが本当に難しい試合。」と劇的なゲームを思い返して言葉が詰まります。堀越共同キャプテンも目を真っ赤にしながら「スピアーズにおめでとうと言いたい。僕たちはスタイルを貫き通した。そこはやりきれた。」と声を絞り出すように話します。
TMOの多さについて問われた田中監督は、「昨日(埼玉パナソニックワイルドナイツと横浜キヤノンイーグルスの準決勝)も非常に多かった。セミファイナルはレフリーもプレシャーが掛かるし、正確な判定が求められるから慎重になるのは分かる。」と理解を示した上で、「TMOが多いという意見はあるが、そういう制度がある以上、チーム側はどうこう言えない。」と複雑な表情で答えるに留まりました。
「3位決定戦が金曜日なので、モチベーションをどう持っていくか。とにかく今日の試合から身体をリカバリーして、頭をクリアにして備えたい。」と田中監督が次の試合への策を話せば、堀越キャプテンも「(中4日という)経験したことのないショートブレイクだが、目的を確りと決めてリカバリーしていきたい。」と話しました。
続けてスピアーズのフラン・ルディケHC、立川 理道キャプテンも、激闘に精魂共に尽き果てた表情で会見場に現れました。
「サンゴリアスは14人という数的不利な状況の中で、努力し戦術を変えて健闘した。それに対して最後までハードワークをし、選手同士しっかり信頼して戦ってくれた。」と、選手たちを労うルディケHC。
「(試合後の)みんなの表情は、まだまだこれじゃダメだという雰囲気だった。サンゴリアスは14人になってからも素晴らしいラグビーをしていた。それに対してうちはやりたいラグビーができず、タフな試合になった。しっかりと勝ち切れたのは、自信になった。初の決勝進出という新たな歴史を刻めたことは良かった。」と、思い通りの展開で勝てなかった悔しさを語る立川キャプテン。
決勝に向けては、「初の決勝進出は単純にハッピーなこと。もう1回コンディションを整えて臨む。早い球出しのサンゴリアスに対してポゼッションコントロールやタックルが出来るようになってきたことが成長だ。」(ルディケHC)、「ワイルドナイツはどの局面でも隙が無く、大舞台の経験も豊富だが、自分たちのやるべきことにフォーカスして確り調整していきたい。」(立川キャプテン)と語りました。
途中出場ながらも何度も試合を決定づけるゲームコントロールをした流選手は、「(最後のノートライ判定について)僕の真横でグラウンディングしていた。レフェリーからもアシスタントレフェリーからも見えないし、カメラにも映ってない。レフェリー陣の判断は全てなので何も言うことはない。現状のルール、システムとレフェリーの判断が正しいと思う。」と最後のプレーを悔やみつつも、「14人の中では最高のゲームだった。全て出し切ってそれで負けたので仕方ない。W杯2023の代表に選ばれるよう、パフォーマンスを研ぎ澄ませて3位を勝ち取りたい。」とやり切った表情で話していました。
ファンと共に熱狂した準決勝の2試合に続き、NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23シーズンは最終戦を迎えます。
5月19日(金)には、同じ秩父宮ラグビー場でイーグルスとサンゴリアスが3位決定戦に臨みます。翌5月20日(土)には、舞台を国立競技場に移して3連覇を狙うワイルドナイツと初の栄冠にチャレンジするスピアーズが激突する決勝戦が行われます。
ラグビーワールドカップ2023へ繋がる真剣勝負は、準決勝に続いて私たちに興奮と感動を与えてくれるに違いありません。既に売り切れの座席はありますが、チケット情報をチェックしてクライマックスをその目に焼き付けては如何でしょうか。