仲良くなったアルゼンチンサポーターの二人は、もともとアルゼンチンの敵対するチーム同士でプレーしていたのですが、競技ラグビーを引退してからこうやって仲良くなったとのこと。「今日は友達だけど、日曜は敵だね! 日曜の日本戦にも行くのでナントでまた再会しよう。」とアルゼンチンの国旗を前に記念撮影をしました。アルゼンチン戦も観戦チケットが早々に売り切れになるほどの人気で、日本戦のチケットだけを何とかして手に入れたとサッカーだけでないアルゼンチンのスポーツ事情を教えてくれました。
ファンゾーンの中央、国旗を持ちながら応援歌なのか国歌なのかを高々と歌い、盛り上がっているのは女子3人組のウルグアイサポーターです。決して強豪とは言えないウルグアイからもこうしてフランスまで応援に訪れ、自分たちの楽しみ方でW杯を満喫しています。リーグワンや、日本代表強化試合でこういったシーンを見かけることが増えてきた日本も、徐々に世界標準のファンに近づいてきたのかなと。W杯後、日本での更なる盛り上がりを期待したいですね。
こちらは、予選プールBのライバルである世界ランキング1位のアイルランドと同2位の南アフリカのサポーターです。「この前の試合では負けてしまったけど、決勝でまた会おう!」と話していたスプリングボクスの相棒を抱えた南アフリカサポーターが乾杯の音頭を取ると、アイルランド発祥のキリスト教カトリックの祭礼日の一つで、アイルランドにキリスト教を広めた、聖パトリックの功績を讃えるセントパトリックスデー(St. Patrick’s Day)で仮装される緑色の妖精・レプラコーンの帽子を被った女性サポーターも笑顔でビールを掲げて乾杯!
ファンゾーンからは、リヨンの象徴でフルヴィエールの丘にある世界遺産 “ノートルダム大聖堂” も見ることができ、石畳の街並みが美しいリヨン旧市街や、クロワルースの丘など、ラグビー観戦の前後も見逃すことのできない観光スポットがたくさんありました。
いよいよリヨンでのラグビー観戦へ
会場となった、フランスのプロサッカーのオリンピック・リヨンの本拠地であるグルーパマ・スタディオム(OL Stadium/ Groupama Stadium)へは、トラムと徒歩で1時間弱。リヨン中心部の駅とスタジアムを直通で結ぶこのトラムも一部はW杯の装飾となっていました。
この道中でも、試合放映のあるレストランやオフィシャルショップなど、W杯の匂いがそこここで見られます。至るところでボランティアの案内役が出迎えてくれたり、無料のフェイスペインティングには長蛇の列ができるほどの大人気でした。
「自動車で2,000キロ以上を旅してリヨンまでやってきたんだよ。」とビールを片手に驚きの情報を教えてくれたのは、ルーマニアから来たというサポーター4人組です。「開幕戦を観るためにパリまで来て、一度ルーマニアに帰り、また昨日からリヨンに来たんだ。」とのこと。来週以降は、「もうお金も足りないから家で観るよ。だってタダだから(笑)。」とジョークを飛ばすルーマニアサポーターは、手に持ったビールを指差して「ちなみに(大会のオフィシャル)ビールは日本のものなんだってね?」と聞いてきました。今回販売権を日本のアサヒスーパードライが獲得したことを得意気に説明(笑)すると、「味も軽くて良いね。」と褒められました。ルーマニア人には、ガツンとくる喉越しのスーパードライでもライトな味わいなんですね。
スタジアムの外周が目に入ってくると、サッカーファンでもある私の血がたぎってきます! サッカーチーム・オリンピック·リヨンの本拠地で、2016年の欧州選手権でも会場になったグルーパマ・スタジアムの壁一面には、2000年代にリヨンを欧州の舞台で躍進させたフランス人監督、リバプールの監督経験もあるジェラール・ウリエ(Gerard Houllier)の肖像があり、自国の功績者を讃えています。
スタジアムの中に入ると、その内装もリヨン・カラーです。ちょうどフランス国旗と同じトリコロール・カラーなので、フランス代表を応援しているスタジアムのようでした。
今回観戦したニュージーランド代表とウルグアイ代表を観戦した場所は、ベンチ裏すぐでベンチ外の選手が座る席とも近い! 試合前、ハーフタイム、試合後と多くの選手たちがサインや記念撮影に快く応じています。あっという間に、私のオールブラックスのジャージーはサインでいっぱいになってしまいました。因みに、この席のチケット代は176ユーロ(約28,000円)でしたが、これほど間近でオールブラックスを観ることができたので、お得だったと思います。
試合観戦では、試合直前に行くのではなく練習からの観戦がオススメです。試合前には、リッチー・モウンガ(Richie Mounga)選手やボーデン・バレット(Beauden Barrett)選手、ジョーディー・バレット(Jordie Barrett)選手が色々な場所からキック練習を行っています。同じタイミングで違う場所から一緒に蹴る姿は試合では絶対に観られない貴重な光景です。メンバー外の選手が練習相手になったり、アップ後の用具を自分たちで片付ける意識の高さもオールブラックスの強さの秘訣。この試合のメンバー外でWater役をしていたのは、正SH(スクラムハーフ)のアーロン・スミス(Aaron Smith)選手でしたが、水を運ぶのと同時に外から見た感じのアドバイスをするなど、選手たちと良く会話をしています。こういった献身的な行動を観ることができたのも良い取材となりました。