橋本選手が時計を進めるためにディフェンス2名を相手にボールをキープし続けます。個人技で残り時間を見ながらキーエリアに侵入し、時間をいっぱいに使ってトライ。こういった技術力の高さも日本の大きな武器です。39-28と差を広げて第3ピリオドを追えました。
Game1-第4ピリオド
いよいよ最終ピリオド。日本代表はハイポインターの4選手全員が安定してボール運びを見せて着実に得点に繋げています。この試合、ここまで有利に試合を進められているのもこのハイポインターたちの活躍が大きな原因だと思います。一方、ニュージーランドはハイポインターが疲れてきています。フィジカルを削られているため、単純なディフェンスミスに現われて点差が離れているわけです。
【3・2・2・1ライン】#7 池崎選手(3.0)、#4 羽賀選手(2.0)、#14 中町選手(2.0)、#1若山選手(1.0)
このラインで注目して欲しいのは中町選手です。中町選手はパフォーマンスが高く、ゲームセンスのある良い選手。こういった大舞台には経験豊かな羽賀選手が軸となっていますが、徐々に中町選手も出場機会が増えていくのだと思います。このAOCで優勝するためには、中町選手の力は必須です。この3・2・2・1のバランスライン、日本は余り使わないラインですが、ここで結果が出ると日本代表の戦術がまだ豊富になっていきます。
自陣深い位置でボールを持っても、しっかり敵陣深くまでボールを運ぶことができますし、仮に囲まれたとしても、ハンドリングが上手い選手たちなので、ロングパスも出せるバリエーションある攻撃ができるため、バランスラインと呼んでいます。
【3.5・3・1.5・0.5ライン】#32 橋本選手(3.5)、#13 島川選手(3.0)、#22 乗松選手(1.5)、#2長谷川選手(0.5)
ここで、ローポインター(1.0)の3人、今井選手、若山選手、小川選手の特徴を紹介しましょう。それぞれに良い特徴があるので、こちらも頭に入れておくと “さすが得意のプレー!” と彼らの献身的な動きも楽しんで観てもらえると思います。
今井選手は、インバウンドの距離と正確さに定評がある選手。若山選手は、コート上でのチェアワークがとても早い。そして、小川選手はそのどちらも兼ね備えた選手で、今後のローポインターを背負っていく選手だと思います。後は、場数を踏んで周りの選手たちとの 阿吽の呼吸をどれだけ育んでいけるか。
長谷川選手は、大舞台でビックプレーをしてくれる選手という印象がありますね。大舞台で大仕事をする。オーストラリアのエース・ライリー[Ryley Batt]選手(3.5)をひとりで止めちゃう。こういったビックプレーは味方のモチベーションを上げるのです。味方の士気を上げてくれる貴重な選手です。
【3・3・2・0ライン】#21 池選手(3.0)、#7 池崎選手(3.0)、#14 中町選手(2.0)、#3 倉橋選手(0.5F)
ここで日本代表に珍しいプレーが飛び出します。ラインアウトからキーエリアにラストバスを出すシーン。キーエリア奥側では池崎選手にパスを渡すまいと選手がひしめき合っています。すると、エリア手前でフリーだった倉橋選手にパスが渡ってトライとなりました!
倉橋選手にボールが渡る(トライ)想定はしていないプレーですが、ポジショニングとして空いたスペースに倉橋選手が入り込めていたことが、この珍しいプレーを生みましたね。
常に優勢に試合を進めた日本代表は、初戦を51-40で勝利しました。正に想定通りの試合運びだったと思います。オフェンスもミスを最小限に、しっかりと得点を取れていましたし、ディフェンスも相手陣内でしっかりとディフェンスできていました。キーエリアまでディフェンスをし続けた結果、ニュージーランドのフィジカルを相当奪えたことが良かったですね。
主将・池 透暢選手のコメント
「近いですね・・・ 最近無かったですからね。(笑)」と開口一番に報道陣をなごませたのは、日本代表のキャプテン・池 透暢選手です。報道陣の多さとマイクの近さに圧倒されて思わず発した池選手のこの言葉に、コロナ禍を耐えて戻ってきたこの空間の貴重さに気付かされます。
「序盤から相手のやりたいことをやらせずに、日本のペースで試合をすることができました。メンバーチェンジをたくさんしながら、ターンオーバーを増やせた良い流れもできました。」と初戦を振り返る池選手は、「観客の声援で選手もエネルギッシュに動けた。声が通らないので指示や確認ができないのは修正しないといけませんが、東京2020大会が無観客試合となってしまった残念な思いを、今日ここで再現出来たことを嬉しく思いました。」と、大きな声援を送ったファンへの感謝も口にします。
「先ずはAOCで勝つこと。日本らしいタグビーを最後までやりきる。オーストラリアが予選でどういった作戦で来るのか? 何を隠しているのか?を見極めながら自分たちのペース、コンディションを崩さずに戦いたい。」とオーストラリア戦への抱負も話してくれました。