すると2回裏、チャンスを掴んだのはヴェールズでした。先頭の中京大学OGの川口 茉奈選手が四球で歩くと、続く居内 佑加選手もヒットで続き2死満塁と攻めたてます。ここで1番の松瀬 清夏選手がセンター前にタイムリーヒットを放ち先制に成功しました!
急転の天候に試合も動く
9月中旬にもかかわらず、佐賀県白石町は真夏のような暑さです。選手たちももちろんですが、審判の皆さんや大会運営に携わる皆さんも汗だくです。しかし、4回表の中京大学の攻撃中に真夏のような天候が一変! 大粒の雨が降りしきるスコールとなりました。
2死1塁で打席に立つのは、来春トヨタレッドテリアーズへの入団が内定している5番の市川選手。ヴェールズと同じJDリーグ西地区に所属するレッドテリアーズ・市川選手とは今後戦う機会が多くなるため、何としても打たれるわけにはいきません。降りしきる雨が “水を差す” 中、捕手の安川 裕美選手が一生懸命濡れたボールを拭いて手渡ししますが、その効果が全くなくなるほど雨脚が強くなってきました。
「確かに雨は投げにくいのですが、全日本総合って毎年雨が降るんですよ。だから突然の雨でしたが、“お~来た来た”っていう感じでしたよ(笑)。」と話す庄司投手でしたが、濡れたボールの扱いは難しく市川選手にフルカウントから四球を与えてしまいます。
「流石に一時中断でしょ?」と言わんばかりに主審の顔を覗き込む安川選手。主審もバックネットの運営に相談しますが、結果は続行。この判断が試合を動かすことになりました。
ここで打席に入るのは、代打・2年生の竹田 愛佳選手(千葉経大付属高)です。2年生とは思えない雰囲気ある構えの竹田選手は新チームで主力として期待されている選手です。庄司投手の速球を豪快に振り抜いた打球は詰まりながらもセンター前に落ちるタイムリーヒット! 大学女王・中京大学が中盤に同点に追いつきました。
先輩の意地が勝敗を左右する
中京大学に傾きかけた流れを引き戻そうと、得点圏に走者を送るヴェールズ。積極的に選手を代えて勝ち越し点を奪おうとする中京大学。それぞれ1回ずつの攻防は無得点のまま5日裏、終盤戦に入ってきました。
5回裏も2死無走者となったヴェールズですが、ここから得点力の高いクリンアップがJDリーガーの力を見せます。今シーズンここまでリーグ3位タイの12四球を選んでいる辻井選手が四球で出塁すると、チャンスにめっぽう強い4番・本間選手が得意の “状況に応じたバッティング” でセンター前にヒットを放ち、2死ながら1、2塁と勝ち越しのチャンスを作りました。
ここで二瓶監督を中心にマウンドで円陣を組む中京大学。その視線の先で打席に入るのは、中京大学在籍時の2020年にコロナ禍で代替大会となったインカレの優勝メンバー・川口選手です! 試合を決するシーンでの先輩後輩のガチ対決が見られるのも、全日本総合の魅力。カウント3-0と投げにくそうな成瀬投手でしたが、インサイドを強気に攻めて3-2のフルカウントまで持っていきます。いよいよ勝負球!「ライズにてこずっていたので、なんとかそれを打とうと振り切った。」と試合後に話した川口選手が放った打球は、左中間を破る勝ち越しの2点タイムリーツーベース! 2塁ベース場で渾身のガッツポーズを見せました。
「リーグ戦では、この打順の巡り合わせで得点が出来ずに苦しい展開が続いていましたが、ひとつ吹っ切れた感じです。」とこの試合の最大の成果を教えてくれた石村監督。
更には、今年は思うような結果が出ずに苦しいシーズンを送っている6番の居内選手が豪快に振り抜いた打球は、ライトフェンス越えまであと50cmと迫る豪快なタイムリーツーベース! ついにヴェールズの得点パターンが機能して勝ち越しに成功しました。
ご当地選手の活躍に家族も応援
この全日本総合は、毎年 “国民体育大会(来年からは、国民スポーツ大会に改名)” のリハーサル大会として全国を回って開催されます。そのため開催する各県では、その県に所縁のある “ご当地選手” に注目が集まります。
実は佐賀県、女子ソフトボールが盛んな地域。女子ソフトボール界の名門・佐賀女子高からは、東京2020金メダリストの二刀流・藤田 倭投手(ビックカメラ高崎ビークイーン)、同じ東京2020金メダリストでアジア大会決勝で決勝のホームランを放った内藤選手、同じアジア大会日本代表の中溝 優生選手(太陽誘電ソルフィーユ)など、数々のJDリーガーを輩出しているソフトボール王国なのです。
そんな注目のご当地選手たちが大きく紙面を占める大会ポスターですが、ヴェールズの選手も大きく掲載されているのです。その選手は久保 和咲選手。佐賀県伊万里市の出身です。伊万里と言えば “焼物” の伊万里焼が思い浮かびます。江戸時代に鍋島藩の御用窯として発展した大川内山地区は、今でも焼物の町の風情ある雰囲気が観光客に人気のスポットです。