「僕はAOC以降、体調を崩してしまって・・・ 10月に入ってようやく静養明けで2回しか練習ができませんでした。体力的なキツさは感じましたが、4試合こなした中でかなり感覚を戻すことができました。」と、絶好のポジショニングで世界のハイポインターたちを抑え込む日本代表・東京2020銅メダリストの長谷川 勇基選手も今大会の成果を話します。
新加入の目玉、“ミスター車いすラグビー” とも称される荻野 晃一選手について更に話しが及ぶと、「試合に復帰するのは5、6年ぶりだと思います。かつて日本選手権5連覇を達成したチームでプレーして以来でしたが、代表候補の練習に参加して体力や試合感覚がぐんぐん戻ってきていますね。」と、日本車いすラグビー界を牽引したレジェンドの現役復帰を喜ぶ島川選手。
長谷川選手、池崎選手、島川選手と組んだBRITZの新名物 “日本代表ライン” では、キーエリアの一角に陣取り、ゆっくりと間を詰めたり、スペースを空けたり狭めたりして相手を誘い込んでブロックする技術は流石と言ったところ。日本選手権の観戦でまた新しい見どころが増え、ますますBRITZのプレーが楽しみになってきました。
「どんなに点差が離れても、集中力が切れてしまってはダメ。ですから、ライン毎に課題を持ってそれをしっかりとやりきりました。」と島川選手が話したとおり。実力差のあるチームにも決して手を緩めないBRITZのプレーが観客を魅了します。
池崎選手、島川選手の日本代表ハイポインターラインに加わる山村 泰史選手は、ふたりから幾度となく供給される難しい球出しにも必死に対応。荻野選手と共に期待の新戦力が厳しい場面で想定されるコンビネーションを繰り返し実践していきます。
日本代表のいないラインでの出場が多い荒武 優仁選手も、田村 学選手、菅野 元揮選手との連携を統括する場面が多く見られ、そのラインのブラッシュアップに懸命に取り組みます。
その何れの組み合わせにも入り、攻守にわたる絶妙のポジショニングを見せた長谷川選手も休養明けとは思えない動きを見せてくれました。忍者のように神出鬼没な長谷川選手を探す “トレードマーク” だったカラフルなヘアスタイルが黒髪になっていたことも新鮮でした。「(休養明けでも動きが良いのは、)僕、センスあるんで(笑)。ヘアカラーは大会や合宿など、自分のスイッチを切り替えるときに友だちに染めてもらうんです。黒髪は2年ぶりくらいなので、レアキャラを観られましたね!」と、ユーモアたっぷりの長谷川選手を日本選手権で追いかけるのもBRITZ観戦の楽しみです。
2年目の躍進に高評価! -WAVES
「やろうとしていることが分かるチームになってきましたね。創部初年度の昨年から格段に進歩していました。」(BRITZ・島川選手)
「ハイポインターのフィジカルがとても良くて驚きました。大阪は周囲にチームがないので、実戦経験を積むのが難しい中で頑張っているなぁと。」(BRITZ・長谷川選手)
「2年目とは思えない動きになっていてびっくりしました。僕が2年目の頃はあんなに動けていなかったと思います。これからどんどん成長していくことを予感させる対戦でした。」(Hurricanes・若山選手)
現役の日本代表選手たちが口を揃えて高評価したチームは、大阪を本拠地とする “WAVES” です。昨年度の日本選手権プレーオフで初めて試合を取材したJournal-ONE編集部も、素人ながらに1年前のチームと全く違う動きに驚くほどでした。
「1日に2試合戦っても体力が落ちませんでした。河野選手を起点にした攻撃からもうひとつのバリエーションもできつつあり、少しずつ成長しています。」と話してくれたのは、山本 卓矢選手。東海旅客鉄道(JR東海)の社員だった山本選手は、24歳で自転車事故により頸髄を損傷して四肢麻痺を患い、車いすラグビーと出会って競技活動開始してからまだ2年余り! この秋(11月4-5日)には車いすラグビー連盟が招集する次世代合宿にも参加するほど頭角を現わしてきている選手です。
「近くにクラブチームがないので、どうしても個人練習を行いぶっつけ本番になってしまいます。ですから、今回はチームとして連携の声掛けを絶やさぬようにしようと話し合って臨みました。それはできたかなと思います。」と、急激な進化を見せたWAVESの今大会を振り返ります。
今年度からアスリート雇用となり、プレーに専念している様子が一回り太くなった腕周りにも見える山本選手は、「毎日トレーニングできる環境で、車いすラグビーをする筋力とスタミナが付いてきました。初めて選ばれた次世代合宿が楽しみ。一番へたくそなのはわかっているので、とにかく声を出して周りの上手な選手たちにたくさん質問して学びたいです。同じローポインターの岸ヘッドコーチからもいろいろなことを教わりたいです。」と飽くなきチャレンジへ目を輝かせます。